抄録
【はじめに、目的】 神奈川県教育委員会では、多様な教育的ニーズに対応するため2008年6月より、理学療法士(以下PT)、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士を自立活動教諭として正規採用した。2011年4月現在県内15校に27名が配置され、その中のPT5名が各々知肢併置校に配属されている。業務内容は主に校内、校外における児童・生徒の実態把握や、教科・領域(自立活動)に関するアドバイス、ケース会の開催や教員、保護者からの相談対応、研修会講師などである。本発表では2011年度に実施した研修会の担当内容を紹介するとともに、特別支援学校におけるPTの役割について考察を加え報告する。【方法】 PTが講師として実施した研修会を1.回数、2.テーマ、3.参加人数でまとめ、PT全員で実施した研修「呼吸と姿勢」については、事前打ち合わせ、アンケートによる振り返りと担当教員とともに研修方法、内容について反省会を実施した。【倫理的配慮、説明と同意】 本発表にあたり、学校長ならびに学内委員会で発表主旨、内容について承諾を得た。【結果】 実施回数が合計31回。テーマは、福祉用具、プール指導、車椅子操作と介助方法、腰痛予防と移乗動作、呼吸と姿勢、ストレッチ、体の動かし方、ポジショニング、発達、身体機能評価、自立活動、特性に応じた関わり、事例検討等。参加総人数は約800名であった。神奈川県の医療ケア等担当教員養成基礎研修講座「呼吸と姿勢」に関しては、PT全員で行った。アンケート結果(回収率95%)、”講師の説明がわかりやすった”という質問事項に対して、とてもそう思う88%、少しそう思う12%の結果を得た。【考察】 全国的に外部専門家を活用しているところが多い中、あえて校内専門家として特別支援学校にPT等を導入したことは大きな役割を担っている。一方では、各職種の専門性やどのような仕事をしてくれるのか、どのような役割を担うのか等教育現場ではまだ知られていなかったり、現場での教員とのコンセンサスがとられていない現状もある。こうした課題に対しては、校内、校外の教員を対象にした学習会のプレゼンテーターや研修会の講師として、テーマに即した内容やPTの役割をアピールすることで対応している。12年間の子どもの教育活動や生活を支える支援として、PTの考え方や支援方法を現場の教員に直接伝えられることは、児童・生徒の主体的な学習を支援することにつながっている。またPTの経験や知識が違う中で、講座によっては、内容、方法などをPT全員で検討できたことは、教員支援の共通目的をはかる上で有意義であった。研修会の形式としても、一方通行にならない少人数の実施で、教員自身の気づきを大切にすることが望ましいだろう。学校の中で働くPTの課題は、教員の困り感に寄り添いながら、耳を傾けること。教員の専門性を理解すること。学校で必要としていることを、医療・福祉側に伝えきれない現状や、リハビリテーションが教育に押し付けていることを教員が行う意味や危険性はないか、個別教育計画の作成にどのように関わるかなど多い。【理学療法学研究としての意義】 2007年特別支援教育のための教育法の改正や2009年特別支援学校の学習指導要領の改訂により、重度・重複化、多様化に対応することが明記され、教育現場においても専門家としてPTが関与することが多くなっている。神奈川県では専門職と教員との協働という新たな展開が始まり、療育に関わるPTが特別支援学校の中に配置された意義は大きいと考える。またこども達の医療的背景をふまえ、教育の中で出来ることを明確にし、日常の場面や研修の機会を通し、個別教育計画にPTの考え方が反映できるよう努力を重ねていきたい。