抄録
【はじめに、目的】 理学療法教育には臨床実習が必須である。臨床実習指導者(以下SV)の条件は、臨床経験を3年以上有するものと定められている。しかし、養成校の急増により、学生を受け入れる施設では臨床経験が3年未満であっても、症例担当(以下CV)として指導にあたる理学療法士は少なくない。しかし、現状はSVの条件を満たす者であっても、学生への指導方法を教授される機会がほとんどない。当校は、平成14年より実習指導で悩むSVもしくはCVに向けて、講演とワークショップによる臨床実習指導者研修会を継続して開催している。今回、我々は臨床実習指導者研修会受講者が参加後に行動変容を示したかを調査し、今後の研修継続にむけての課題を明確にすることを目的としてアンケート調査を実施した。【方法】 対象は平成14年より実施している臨床実習指導者研修会に参加した理学療法士及び作業療法士304名のうち、勤務先が確認できた225名とした。調査方法は、郵送調査法とした。質問内容は、1.勤務先に関すること(勤務者数、学生受入数など)、2.参加者の学生指導に関すること(指導経験の有無、学生指導時の悩みなど)、3.研修会参加後の状況(行動変容の有無、変容が認められた場合はその詳細)、4.研修会に関する感想及び印象に残ったこと、指導未経験者には今後の行動目標を尋ねた。回答方法は選択回答もしくは自由回答とした。選択回答は、二項選択もしくは多項選択で単一回答とした。集計方法は単純集計とし、自由回答に関しては、KJ法を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 アンケートの依頼文には、個人が特定されないこと及び目的を示し、返送により同意を得られたものとした。【結果】 回答は95名より得られた(回収率42.2%)。うち、理学療法士は91名であった。勤務先に関しては、勤務者数は最多100名、最少2名で、平均24.4名であった。施設における勤務者数に対するSVの条件を満たす者の割合は平均で40.1%であった。また、施設あたりの学生受け入れ数の平均は12.9名であり、SVは年間1~2名以上の学生を指導していることがわかった。回答者のうち、学生を指導した経験がある者は84名で、学生指導にあたった経験年数の質問に対する回答は1年目23名、2年目18名、3年目28名と72.6%が3年未満で学生指導を開始したことがわかった。指導における悩みとして最も多く回答があった項目は、「問題はわかるが、導く方策を見出せない」で43名(51.2%)であった。研修会参加後に行動変容を認めたのは70名で73.7%であった。行動変容により、以前より具体的に説明するようになった、良い部分を見出す努力をするようになったという質問項目に対し、肯定的に回答した割合は98.5%と高かった。研修会参加は悩みの解決の糸口になったかの問いに対しては、「そう思う」32%、「ややそう思う」54.2%との回答が得られた。自由回答の研修会で印象に残っていることに対して、35名(36.8%)はワークショップでのグループディスカッションを挙げた。研修中に解決方法を得られたと記述したものは12名(12.6%)であった。残念ながら、満足を得られない内容の回答が数件寄せられた。【考察】 今回の結果から、施設により勤務するセラピスト数に対するSVの条件を満たす者の割合は、平均で半数以下であることがわかった。このことは、受け入れ学生数が多い施設の場合には、一部のセラピストに学生指導の業務が加わることを示している。しかし、その業務負担を軽減するため、もしくは自己研鑽のためにと、3年未満であってもCVとして学生指導に携わっているのではないかと思われる。3年未満は、自分自身がセラピストとして確立した考えを持てない時期で、自分自身が実施する理学療法業務に自信がない可能性がある。それらのことが、指導の悩みで多く回答を得た「問題はわかるが導く方策を見いだせない」ということにも繋がったと思われる。これまで、「自ら気づく」ということを目的として、ワークショップを行ってきた。参加者各自が日頃、学生指導で抱える問題点を抽出、整理、分析したうえで、明日から使える指導方法を提案するという流れで進めてきた。グループによっては、明日から使える指導方法に関する話し合いにかける時間が少なかったことが、解決の糸口にはなったが、具体的な解決方法を得られたという記述が少なかった理由かもしれない。今後は、タスクフォースにあたる者が時間配分などに、より介入すべきであると思われる。【理学療法学研究としての意義】 臨床実習での学生指導は、自らが経験してきた指導を継承することに頼らざるを得ず、指導方法に悩んでいる指導者が多いことが明確になった。学生指導方法を教授する機会がより多く必要であることも明確になった。