理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
臨床実習における新しい学生評価表作成の試み
─アンケートと統計的手法を用いた項目決定方法─
大寺 健一郎東 明福元 賢吾佐藤 英樹岩下 正明関 一彦道本 順子木村 潤一長野 文子都甲 宗典山名 隆芳脇坂 信一郎
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p. Ge0070

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抄録
【目的】 当学院の長期実習において、実習指導者(以下、SV)の主観として抱く実習の合否と、当学院が評価結果を基に点数化し最終的に行う実習の合否判定に齟齬がある問題が表面化した。これはSVの主観的評価のイメージが、学生評価表の項目にそぐわない結果ではないかと推察される。そこで臨床実習における学生評価の方法を見直し、アンケートを基に統計的手法を用いて新しい学生評価表を作成したので、その過程と内容を報告する。【方法】 当学院では平成22年12月より「臨床実習の在り方に関する検討会」を発足し、作業チームを結成して新しい学生評価表の作成を行なった。学生評価表見直しの手順としては、1)平成22年度に試行的に導入している評価実習の学生評価表の項目に対する重要度アンケートを、当学院の評価実習を受け入れている施設(以下、実習施設)のSVと、当学院と関連施設の理学療法士に実施する。2)作業チームでブレーンストーミングを行って新しい項目のリストを作り、その項目に対する重要度アンケートを当学院と関連施設の理学療法士に実施する。3)各アンケートの結果を基に適合性の検定を用い重要度の低い項目を削除する。4)残った項目に対して因子分析を行って項目を要約し、認知領域・情意領・精神運動領域に振り分けて学生評価表として体裁を整える、という流れであった。アンケートは5件法で行い、対象者は実習施設のSVが37名、当学院および関連施設の理学療法士48名の合計85名であった。集計および適合性の検定はMicrosoft Excel 2007を用い有意水準5%で行った。因子分析はフリーソフト”R”(version 2.11.1)を用いバリマックス回転で因子負荷量0.5以上として項目を要約した。【倫理的配慮、説明と同意】 実習施設のSVには、評価実習の実習地訪問時に当学院の教員が、アンケートの主旨と内容・回収方法を公文書を持参して直接説明し同意を得た。関連施設の理学療法士には、所属長に許可を得た上で、各理学療法士にアンケートの主旨と内容・回収方法を文書にして配布することで説明し同意を得た。学生には、今後実習評価の見直しを行うために実習施設にアンケートを行うこと、今回の実習の評定には不利益にならないことを説明し同意を得た。【結果】 要約前の評価項目は、評価実習の評価表55項目と新しい項目70項目の計125項目であった。この内適合性の検定において削除された項目が評価実習の評価表で15項目、新しい項目で12項目であった。因子分析で要約された項目は、評価実習の評価表は7項目、新しい項目は33項目で、最終的に残った項目は評価実習の学生評価表の16項目、新しい項目22項目、合計38項目となり、これを最終的な学生評価表の評価項目とした。領域別では認知領域が4項目、情意領域が16項目、精神運動領域が18項目となった。【考察】 適合性の検定において評価実習の評価表の項目では、認知領域で解剖学・生理学・運動学などの基本的知識や評価学の理解度が重要視されていた。情意領域では患者や利用者およびスタッフとのコミュニケーションや信頼関係の構築に関する項目、精神運動領域では提出物の期限順守や報告に関する項目が重要視されていた。これは臨床現場で最低限必要とされる能力であり、SVが学生の基本的な能力に評価の目を向けていることが推察される。また新しい項目ではリスク管理や学習意欲、指導に対する受け入れや修正能力等を重要視していた。これはSVが学生の臨床能力として、主にリスクを回避する能力と実習の中で自ら学び自己修正していく能力をみていることが推察される。最終的に因子分析で要約した項目では、前述の項目群に加えて、評価が概ね一人で行え、その結果から問題点を抽出し、統合と解釈を行い、その結果に基づいてSVのアドバイスをもらいながら治療し、レポートを作成するという項目が残った。結果として基本的能力の項目と、一連の実習過程をSVの助言を受けながら進めていく能力を評価する項目が中心の構成となった。一方で治療効果の確認やそれに伴うプログラムの変更などの項目は削除された。総じて日本理学療法士協会が「臨床実習教育の手引き」第5版で明示している「養成施設卒業時の到達目標のミニマムは、基本的理学療法をある程度助言・指導のもとに行えるレベル」をクリアしており、臨床実習の学生評価表としては妥当な項目群であると考える。【理学療法学研究としての意義】 臨床実習における学生評価表の評価項目をSVが重要視する項目で構成することで、SVの主観的な評価と合否の結果の齟齬は小さくなると考えられ、臨床実習教育の目標にも資すると思われる。その結果学生の不利益を防止することはもちろん、適正な臨床実習の評価項目を提示することができる。今後はこの新しい学生評価表を導入した結果を精査し、妥当性の検証と課題の明確化を図っていく。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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