理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
QC手法を用いたリハビリテーション業務管理の取り組み
増井 正清
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p. Ge0079

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抄録

【はじめに、目的】 リハビリテーション(以下リハ)部門の管理手法については様々な報告があるが、QC(Quality Control:品質管理)手法を用いた業務管理はあまり報告されていない。そこで、主に製造業等の業務を管理・改善する際に用いられるQC手法は、リハ業務管理に活用できるのかを検討し、若干の知見を得たので報告する。DPC(包括医療制度)で算定している医療機関でもリハは出来高制なので、いかに無駄を省きリハ実施単位数を増やせるかが収益向上につながる。そこで、今回はQC手法を用いて無駄の原因を洗い出し対策を講じ、業務管理を行った。【方法】 当院リハ室職員における業務内訳は、治療時間、会議、カルテ記載、移動時間等である。なお電子カルテ入力の効率化については前年度に取り組み、すでに改善されている。会議やカンファレンスについては他部門との調整が必要なので、リハ室だけで取り組めるのは移動時間削減のみである。そこでQC手法のひとつである特性要因図により、業務において移動の無駄が生じる要因の解析を行った。そしてパレート図により問題の重要さを順位付け、それぞれに対策を立案し実施した。なお、現状の把握には、今回独自に作成した移動時間調査表を用い、業務におけるすべての移動時間をストップウォッチで測定し移動時間、移動場所、コメントなどを詳細に記録した。対象は当院リハ室職員12名(理学療法士7名、作業療法士3名、言語聴覚士2名)とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者に本研究の趣旨を説明し同意を得て、各データの個人識別ができないよう移動時間調査表は無記名で実施した。【結果】 当院では、リハ患者送迎はすべてリハ室職員が行っている。リハ業務における移動時間は、『次の患者がいる病棟への移動時間』、『病室とリハビリ室間の送迎時間』、『車椅子や歩行器などを取りに行き準備する時間』、『嚥下練習用の紙コップなどを、配置してあるナースステーションまで取りに行き病室へ運ぶ時間』などであった。対策は『同じ病棟、近い病棟の患者を続けて治療する』『病棟ADLを重視し、病棟リハ実施割合を高める』『嚥下練習用の紙コップなどをすべてのナースステーションに配置する』であった。なお、リハ実施場所の変更に当たっては病棟ADLを重視して取り組むことを説明し、患者の同意を得て行った。対策実施後は、移動時間は約50分から約37分と約26%削減でき、病棟リハ実施割合は約59%から約72%となった。その結果、移動時間は13分間短縮でき、治療時間にまわせたので1日の実施単位数が職員1人当たり約0.6単位増加した。【考察】 問題をQC的に解決する手順には『問題解決型』と『課題達成型』がある。今回は『問題解決型』の手順で取り組んだ。まず『テーマの選定』により移動時間の無駄を取り上げ、移動時間調査表とパレート図により『現状の把握』を行い『活動計画』を立てた。そして特性要因図で、なぜ移動時間が多くなるのかを『解析』し『対策』を立案・実施した。対策実施後に『効果の確認』を行い、標準化により『歯止め』をかけ『反省・残った問題』をまとめ、『今後の計画』を作成した。このようにQC手法を活用することにより、リハ業務管理においても無駄が省け効率化を図れた。今回は対策を講じることで、1日の実施単位数が1人当たり約0.6単位増加した。なお、この対策を継続することで当院のスタッフ数なら年間約300万円の増収が見込まれる。また、波及効果として、病棟リハが増えることで医師や看護師がリハ状況を把握しやすくなり情報交換の機会も増えた。今後は収益だけでなくムダ・ムラ・ムリを減らし効率の良い、安定したリハビリテーションサービスが提供できるよう更なる検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】 業務が効果的かつ能率的に遂行できることを確保するための研究は、今後の理学療法の安定的発展に重要である。よって、リハ業務における無駄の要因を検討し、管理した今回の研究は意義あるものと考える。

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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