理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-01
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一般口述発表
大腿骨近位部骨折における地域連携パス運用の効果
地域連携パス運用病院との比較
津野 良一福島 美鈴谷岡 博人浜窪 隆三宮 真紀有田 久
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抄録
【はじめ】在院日数の短縮、チーム医療の促進、情報収集時間の短縮等を目的として地域連携パスを運用する病院が増加傾向にある.一方、県内においては地域連携パスを運用している病院は約39%程度にとどまっているとする調査報告が見られる.県内に2施設ある県立総合病院では、大腿骨近位部骨折の地域連携パスが一方ではすでに運用されており(A病院)、他方では運用に向けて検討中である(B病院).そこで今回、この2総合病院間と転院先の回復期病院のバーセル・インデックス(以下BI)と歩行様式の結果を比較することで地域連携運用パスの有効性を理学療法の面から検討することを目的に調査を行った.【方法】平成22年1月~平成24年9月までに2総合病院に救急搬送され、手術が施行された大腿骨近位部骨折症例、A病院64名(男性16名、女性48名)、診断、頸部骨折20名、転子部骨折44名、平均年齢85.6±5.8歳、B病院86名(男性18名、女性68名)、診断、頸部骨折35名、頸基部骨折2名、転子部骨折49名、平均年齢84.9±7歳、を対象とした.A病院からは、連携パスデータベースより診断、術式、性別、年齢、在院日数、退院時と回復期病院退院時のBI、歩行様式を抽出した.B病院からは、診療録より診断、術式、性別、在院日数をリハビリテーション科データベースより退院時のBI、歩行様式を抽出し、転院先の回復期病院より退院時のBI、歩行様式の情報提供を受けた.そして、これらの情報を比較検討した.統計処理は、R-2.8.1を使用し、ピアソンのχ二乗検定、WelchT検定を用いて行った.【倫理的配慮、説明と同意】今回の調査は、当院倫理委員会申請書にて提出し委員会にて許可を得た.また、対象とする個人の人権擁護と倫理配慮よりデータは、対象者が特定出来ないように記号化し、調査が終了後保存している電子メディアをフォーマットし完全に消去した.【結果】両病院間の症例において、男女差、年齢に有意差はなかった.在院日数は、A病院は、13.5±4.1日、転院した回復期病院、53.2±33.6日、B病院35.9±11.1日、転院した回復期病院73.4±24.7日、で連携パス運用により有意に減少していた.(p<0.01)BIの平均得点の比較では、A病院49.2±31.4、B病院平均59.1±18.3でB病院が高かった.(p<0.01)各項目で比較してみると、食事、着替え、排便、排尿に差が見られ(p<0.01)、入浴、階段、移乗、整容、トイレ、歩行には差が無かった.回復期病院のBIの比較では、A病院から転院した回復期病院では70.4±31、B病院から転院した回復期病院では、75.5±22で有意差を認めなかった.しかし、各項目の比較では、階段昇降、着替え、排便でB病院から転院した回復期病院で高かった.(p<0.05)移動様式の比較では、歩行器、老人車、一本杖の割合がB病院で高かった.(p<0.01)それぞれの回復期病院での退院時の移動様式には、有意差は認められなかった.【考察】今回の調査結果より、在院日数は地域連携パスを運用するA病院で約22日、転院先の回復期病院で約20日の有意な短縮を認め、在院日数の短縮化に効果が認められた.要因として、連携病院との交流の促進、回復期病院への転院調整期間、退院時計画期間の短縮が考えられた.A、B病院退院時に差が見られた移動様式は、それぞれの回復期病院退院時には差が無くなり在院日数短縮において地域連携パスの有効性が認められた.しかし、回復期病院を退院する時点では、BI3項目でB病院から転院した回復期病院で高い結果となっていた,原因として、在院日数短縮による理学療法期間の減少が考えられ、この差が退院後、維持期の病院での外来通院や介護療養型施設内等での運動練習で補っていけるかどうかが問題と思われる.今回は、理学療法の方法や質的な内容、理学療法時間については調査を行わなかったがこれらの検討も今後必要と思われる.差の認められるBIの項目が、階段昇降、着替え、排便の基本的機能であるため、ADLを同レベルまで引き上げた上での在院日数の短縮が課題であり、自宅への退院か施設入所かの判断においても差が出てくる可能性が考えられ、今後の検討課題と思われた.【理学療法学研究としての意義】地域連携パスの運用は、在院日数短縮や地域連携の促進において、ますます重要性を増すと思われる.しかし、最終的なADLや歩行様式の帰結に差があるようであれば理学療法の方法、質、練習時間等の面での検討が必要と思われる.以上の面より、今回の比較調査は意義があると思われる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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