抄録
【はじめに、目的】 サッカーは世界で最も人気があるスポーツと位置づけられ、競技団体としては世界最大である。近年、スポーツにおける傷害予防を目的とした予防プログラムの必要性が提唱されており、2011年国際サッカー連盟医学評価研究センター(以下、F-MARC)はサッカー選手を対象とした傷害予防プログラム「The 11+」を作成した。しかし、先行研究は社会人・大学生などのカテゴリーが多く、基準としてのU-15年代の客観的データは少ない。 今回、男子中学サッカー選手を対象に傷害予防プログラム「The 11+」を実施して傷害発生率及びパフォーマンスの変化を調査した結果、若干の知見を得たので報告する。【対象】 2011年~2012年に鹿児島県内トップレベルの某クラブチームに所属する選手43名とし、全て中学2年生で競技レベルが同一の2群に分類した。1.コントロール群(以下、C群):2011年19名(年齢:13.5±0.5歳・身長:156.1±8.0cm・体重:42.7±8.1kg)2.The11+群(以下、11+群):2012年 24名(年齢:13.5±0.5歳・身長:156.7±7.9cm・体重:44.4±6.6kg)【方法】 「The 11+」施行期間は6カ月間とし、頻度は2回/週とした。練習・試合時間を調査し傷害発生率として選手1人の1000曝露時間当たりの発生率を算出した。[傷害発生率=発生件数/曝露時間(練習+試合時間)×1.000] 次にパフォーマンス調査として4月と9月に1)ステップ50 2)10m×5走 3)30m走 4)立ち幅跳び(両足)5)立ち幅跳び(左足) 6)立ち幅跳び(右足) 7)20mシャトルランの7項目のフィジカルテストを実施した。1.C群と11+群の2群間で傷害発生率を比較2.11+群において「The 11+」施行前(4月)と施行後(9月)に1)~7)の項目を比較【倫理的配慮、説明と同意】 測定実施に際し、研究の趣旨をクラブ代表者及び保護者へ説明し、同意が得られた選手を研究対象とした。また、本研究にあたり当院の教育作業委員会及び倫理委員会の承諾を得て研究を実施した。【結果】1.C群(2.79)と比較して11+群(1.90)の方が有意に傷害発生率は減少(p<0.05)2.1)~3)については有意差を認めなかったものの、4)~7)の項目については有意に増加(p<0.05)4)前183.6±18.9 ・後192.3±10.9(cm) 5)前156.4±16.9 ・後164.9±16.0(cm) 6)前151.8±17.0 ・後163.5±16.0(cm) 7)前92.6±16.9 ・後101.5±14.6(本)【考察】 「The 11+」の目的は総合的な傷害発生予防に主眼が置かれ、特に14歳以上のサッカー選手に対するプログラムである。今回の調査よりF-MARCの提示する先行研究と同様の傷害発生率の減少という結果を得た。また、パフォ-マンスにおいてはスプリント能力・俊敏性という運動能力への影響が少なかった。要因として14歳前後はポストゴールデンエイジの「クラムジー」の時期で筋・骨格・神経系のバランスが不均衡になり一時的に運動能力が低下するためだと考えられる。しかし、パワー系の項目が有意に増加する結果については福林の「The 11+で下肢筋量が有意に増加した」との報告から「The 11+」はランニング系と筋力・プライオメトリクス・バランス系のトレーニング時間は同様であるが、筋に対する影響力が高いものと推察される。今後、各カテゴリー別のデータ蓄積が急務となり、それに伴い効果判定及び分析が必要であると考える。