抄録
【目的】我々は育成年代のサッカー部のサポート活動を行っているが、その主要な目的のひとつにスポーツ傷害予防がある。成長期特有の傷害としては、腰椎分離症やオスグッド病などがあり、さらにサッカーに好発する傷害ではgroin painやfootballer’s ankle、アキレス腱断裂などに注意が必要とされている。現場レベルで活動する中で、プレーを継続する選手でも何かしらの症状を抱えているケースを度々経験する。重症化する前に早期対応を行うため、このような潜在的な症状を把握する手段としてメディカルチェック(以下、MC)の重要性が提唱されている。大場らは現場で実施できるMC項目として、体格、柔軟性、局所の圧痛を検査する必要性をあげている。先行研究にて、下肢柔軟性の低下(以下、タイトネス)がスポーツ傷害の発生に関連していることは多く報告されているが、中学生競技者に対するMCにおいて圧痛に関する報告は少ないのが現状である。そこで今回、中学校サッカー部員のMCにおいて、圧痛の有無について調査し、その現状について検討したので報告する。【方法】対象:宮崎県中学校サッカー部員52名(1年生23名、2年生15名、3年生14名)、平均身長/平均体重では、1年生154.2±6.1cm/45.4±5.7kg、2年生164.3±7.9cm/57.5±7.1kg、3年生168.2±5.0/50.7±7.2であった。MCは全員同日同会場にて測定した。圧痛は、成長期特有やサッカー特有のスポーツ傷害の好発部位について検査し、腰部、股関節、脛骨粗面、アキレス腱、足部の全9部位について検査し、集計を行なった。1)全体の圧痛発生率 2)各圧痛の発生率 3)圧痛有訴者の平均圧痛部位数について集計し、その現状について検討する。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、監督、選手、学校に十分な説明と同意を得て行った。【結果】1)圧痛の発生率(全部員における何かしら圧痛を有している者の割合)55.8%(29人/52人)の内、疼痛自覚有訴者は10.3%(3人/29人)であった。2)各圧痛部位の発生率、A:腰部の圧痛を有する者の割合:19.2%(10人/52人)。B:股関節の圧痛を有する者の割合:7.7%(4人/52人)。C:脛骨粗面の圧痛を有する者の割合:9.6%(5人/52人)。D:アキレス腱の圧痛を有する者の割合:13.5%(7人/52人)。E:足部の圧痛を有する者の割合:5.8%(3人/52人)3)圧痛有訴者の平均圧痛部位数:1.3部位(37部位/29人)であった。【考察】MCにおいて中学生サッカー部員が有する圧痛について調査した。チームの約半数の部員がプレーを継続しながらも何かしらの圧痛を有している現状が明らかとなる一方、自覚症状がない者が多い傾向にあることが覗えた。各部位の発生率をみると、腰部19.2%、アキレス腱13.5%が上位2項目であり、成長期やサッカー特有の好発部位と符合する結果となった。本調査で明らかとなった圧痛の特性と成長期の筋バランスの不均衡やタイトネスとの関連性を考える必要がある。また成長期において、自覚症状を訴える者は少なく、気付かないまま痛みを抱えながらプレーすることでパフォーマンスの低下につながり、より重度な傷害を招くリスクをはらんでいる。傷害の重症化や成長期特有の傷害予防、早期発見につなげるために、MCにおいて圧痛所見を確認することが有効な一つの手段と考える。【理学療法学研究としての意義】圧痛の検査をすることで、早期発見と傷害予防から、成長期のタイトネスや関節弛緩性、競技特性などへつなげていく必要がある。