理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-02
会議情報

一般口述発表
年代別にみた足部形態と足趾筋力の特徴
障害予防に向けて
土居 健次朗遠藤 辰明河原 常郎大森 茂樹倉林 準門馬 博八並 光信
著者情報
キーワード: 足部形態, 荷重, 年代別
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】足部形態は活動様式や履物,荷重量など様々な要因によって変化が生じる.また,足部形態の違いは歩行などの動作に影響を与え,さまざまな障害を惹起する要因となり得た.第46回本学会で榎本らは外反母趾角度と変形性膝関節症の重症度との関係を示した.第47回本学会で我々は足アーチ構造が歩行立脚期の踵骨動態とCOP軌跡に影響を及ぼすことを示した.また,若年患者は運動靴での活動量が多く,シンスプリントなどのオーバーユース障害が多かった.中年患者は革靴での活動量が多く,足底筋膜炎やアキレス腱周囲炎が多かった.高齢患者は活動量が急激に減少し下肢変性疾患が多かった.本研究の目的は年代別にみた足部形態と足機能の特徴を明らかにすることとした.【方法】対象は足部に変性疾患を有しない男女58名116足(男性28名,女性30名,43.9±22.6歳)とし,下記の通り活動様式の特徴に差の生じる年代で群を分けた.若年群(Y群):13歳以上24歳未満の男性10名,女性9名,15.9±2.4歳.中年群(M群):24歳以上60歳未満の男性11名,女性10名,42.5±11.6歳.高齢群(O群):60歳以上79歳未満の男性7名,女性11名,70.6±5.6歳.計測機器は非接触三次元足形計測装置INFOOT USB Standard type(以下INFOOT,型番IFU‐S‐01,I-Ware Laboratory社製),OGGIKEN製ゴニオメータ,電子スケールSF‐400A(ソフトサービス社製)を用いた.計測項目は1)足部形態:INFOOTを用い座位非荷重下と両側立位荷重下において下記寸法を算出した.足長(mm),足囲(mm),足幅(mm),インステップ囲長(mm),足囲最高点(mm),インステップ囲最高点(mm),第一趾側角度(度),第五趾側角度(度),舟状骨点(mm),アーチ高率(%)(舟状骨点/足長×100),横アーチ高率(%)(足囲最高点/足幅×100),Load Constant(以下、LC)((非荷重位の各寸法‐荷重位の各寸法)/非荷重位の各寸法/体重×100)2)母趾屈曲筋力(kg):端座位にて股関節90°,足関節軽度底屈位となりスケールを第一中足指節関節以遠に設置し母趾屈曲のみで床を押す力とした.3)第2-5趾屈曲筋力(kg):2)同様の肢位にてスケールを第二―五中足指節関節以遠に設置しスケールが第二―第五趾屈曲のみで床を押す力とした.解析方法は上記計測項目の各群間での差の有無を一元配置分散分析にて検証し,多重比較はBonferroni法を用いた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】所属施設における倫理委員会の許可を得た.対象には,ヘルシンキ宣言をもとに保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを説明した.同意が得られた者のみを対象に計測を行った.【結果】非荷重位では足長でY群(243.76±13.46mm)とM群(237.33±17.75mm)に,横アーチ高率でY群(41.17±3.41%)とO群(39.25±4.00%),M群(41.57±3.51%)とO群に有意差を認めた.荷重位では足長でY群(246.84±13.72mm)とO群(233.41±11.89mm)に,足囲最高点でM群(39.50±3.64mm)とO群(37.4±2.69mm)に,横アーチ高率でM群(39.72±3.63%)とO群(37.21±2.58%)に有意差を認めた.LCでは足囲最高点でY群(0.09±0.07)とM群(0.04±0.01)に,インステップ最高点でY群(0.11±0.05)とM群(0.07±0.05)に,Y群とO群(0.07±0.06)に,舟状骨高でY群(0.2±0.17)とO群(0.11±0.16)に,アーチ高率でY群(0.23±0.18)とO群(0.13±0.16)に有意差を認めた.また,母趾筋力ではY群(3.25±1.77kg)とO群(2.37±0.94kg)に有意差を認めた.【考察】LCはY群とO群の比較でインステップ最高点と舟状骨高とアーチ高率に差を認めた.同様にY群とO群の比較で母趾屈曲筋力に差を認めた.第47回本学会で我々は歩行時底屈モーメントが舟状骨点の変位が大きい程大きくなることを示した.母趾屈曲筋力は蹴り出し時に重要であるため類似した結果であった.足部のLCは足部の緩衝作用を反映していると考えられた.これは,加齢に伴う下肢変性疾患との関係が示唆された.若年では荷重による舟状骨変位量が大きかったため,シンスプリントなどの発生機序との関連が示唆された.また,横アーチ高率は非荷重位と荷重位ともにO群で有意に低値を示した.横アーチの指標は足幅や足囲を用いることが多い.本研究で用いた横アーチ高率は新たな横アーチの評価指標となり得ることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】今回,足部形態と足機能の特徴が年代によって違いが生じることが示唆された.今後,各年代に特異的な障害と足部形態との関わりを明らかにすることで,その障害に対する足部へのアプローチや,それらの障害予防に向けた靴やインソール開発の具体化が可能となると考えた.

著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top