理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-07
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ポスター発表
脳性まひ児・者の杖歩行導入時期に関するTimed Up & Go testの参考値設定について
前田 伸也本松 茜劉 斯允桶谷 寛吉田 勇一
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キーワード: TUG, 脳性まひ, 杖歩行
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抄録
【はじめに、目的】脳性まひ(CP)児・者の杖歩行導入は、客観的指標が少なく、ほとんどはセラピスト個人の判断に委ねられているのが現状である。日常での杖歩行導入に対する客観的指標を作成する目的で、高齢者に用いられている評価法であるTimed Up & Go test(以下TUG)を、Gross Motor Function Classification System(以下GMFCS) レベル3で杖歩行可能な脳性まひ(以下CP)児・者にて評価した。また杖歩行自立群(以下自立群)と杖歩行非自立群(以下非自立群)とのデータから、TUGの群間比較を行い、日常での杖歩行導入時期に関するTUG参考値(以下参考値)を設定したので報告する。【方法】対象は脳性まひ児・者のうちGMFCS レベル3で、日常または理学療法時に、独力で杖歩行を実施している9名とした。そのうち、日常でも杖歩行を実施している者を自立群、主に理学療法時に杖歩行を実施している者を非自立群とした。自立群は男性3名、女性2名、平均年齢20歳5ヶ月、非自立群は男性3名、女性1名、平均年齢30歳11ヶ月であった。TUGは股・膝関節90°屈曲位となる椅子座位を開始肢位とした。計測はWilliamsら(2005)の方法に準じ、離殿時をスタート、着座をゴールとした。また無理のない、最適歩行にて実施し、2回の計測のうち最速値をTUG値とした。TUG値は自立群、非自立群の平均値を算出して、群間比較を行った。統計処理ソフトはSPSS、対応のないt検定にて有意水準を5%未満とした。参考値の設定は、自立群と非自立群の中央値を算出し、その間の値を参考値として設定した。【倫理的配慮、説明と同意】研究の主旨や意義、ならびに個人情報への配慮を文書にて説明し、保護者及び本人に同意を得た。【結果】自立群のTUGは20.9秒、非自立群のTUGは80.9秒で、自立群のTUGが有意に速かった(p=0.048)。次に自立群のTUG中央値は21.0秒、非自立群のTUG中央値は、65.7秒であった。よって参考値をTUG21秒~66秒と設定した。【考察】移動を行う上で、スピードは安定性と共に重要な因子である。TUGは立ち上がり、歩行、方向転換、着座の4つ要素から構成され、日常生活動作との関連が深い評価法である。また最大の特徴は複雑な機器を必要とせず、簡便で臨床的実用性が高いところである(對馬ら2007)。我々は第46、47回理学療法学術大会にて、TUGはGross Motor Function Measureとの関連が高く、GMFCSレベル2、3の方に対して有用であると述べた。また歩行可能なCP児・者に簡易に歩行能力を把握できるところが利点である。今回、自立群、非自立群におけるTUGの平均値を算出し、群間比較を行った。またそれぞれの中央値を基に参考値を設定した。結果、自立群のTUGが非自立群のTUGに比べ、有意に速かった。これは自立群の歩行スピード、起立や着座、方向転換の動作が非自立群に比べ速いためであり、これらは日常での杖歩行自立を確立させる因子であると考えられる。よってTUGの改善が、日常での杖歩行自立の目安として有用であると考えられる。また参考値を設定することで、今後、日常での杖歩行自立に対する一指標になると考える。つまり、TUGが参考値で最も遅い66秒を上回ることができれば、日常での杖歩行導入を検討する段階と判断する。現在は、脳卒中片麻痺患者の屋内、屋外実用歩行レベルに関するカットオフ値は提示されているものの(須藤ら2001)、CP児・者におけるTUGの実用杖歩行レベルのカットオフ値は提示されていない。今後症例数を増やし、TUGと杖歩行自立度の関連を引き続き調査する必要があると考える。これにより、参考値が更に限局されることで、日常での杖歩行導入に関する客観的指標になりうると考える。【理学療法学研究としての意義】高齢者に用いられているTUGを、杖歩行可能なCP児・者に用いることで、簡易に歩行能力を把握できた。TUGの改善が、歩行自立度の向上に関連があると考えた。TUGの計測は、歩行自立度を評価するのに有用であった。TUG参考値を設定することで、日常での杖歩行導入時期に関する客観的指標になりうると考えた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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