理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-04
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ポスター発表
虚血再灌流後の抗酸化物質投与と運動負荷が骨格筋に与える影響 ラットによる実験的研究
梅井 凡子小野 武也大塚 彰沖 貞明大田尾 浩積山 和加子田坂 厚志石倉 英樹相原 一貴佐藤 勇太
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抄録

【はじめに、目的】虚血再灌流後の骨格筋は浮腫により運動障害を引き起こす。運動障害の原因は浮腫に付随する炎症反応と疼痛であると推察される。先行研究により抗酸化物質により炎症反応が軽減することを確認した。しかし,その際の行動観察が不十分であったため,今回,虚血再灌流後にラット後肢への重量配分を測定することで鎮痛評価を行った。本研究においては抗酸化物質投与と運動負荷が,虚血再灌流後の骨格筋に与える影響を検証することを目的とした。【方法】対象は8 週齢のWistar系雌性ラット20 個体である。これらを5 個体ずつ無作為に「再灌流のみ群」「運動群」「アスコルビン酸群」「トコフェロール群」の4 群に振り分けた。すべての群は麻酔下にて右後肢に対し駆血を行った。駆血圧は300 mmHgで駆血時間は90 分間である。「アスコルビン酸群」「トコフェロール群」は12 時間毎にそれぞれを投与した。運動負荷はトレッドミルにて再灌流開始24 時間後より4 日間行った。運動負荷は1 日2 回とし,運動時間は20 分間とした。トレッドミルの速度は10 m/secより開始し20 m/secまで増加させた。また,すべての運動負荷時には歩行状態を観察するとともに 鎮痛評価は右後肢の重量配分を測定した。すべての群は実験終了時に対象肢からヒラメ筋を摘出した。摘出したヒラメ筋は,液体窒素で急速冷凍させ凍結ヒラメ筋標本を作製した。凍結ヒラメ筋標本はクリオスタットを使用して,10 μm厚のヒラメ筋筋組織横断切片を作製し,H&E染色を施した。顕微鏡デジタルカメラを使用して標本毎に組織学的検索を行った。重量配分の統計処理は実験開始前と比較し,対応のあるt検定を行った。危険率5%未満をもって有意差を判定した。【倫理的配慮、説明と同意】本実験は,動物実験モデルであるために演者所属の動物実験倫理委員会の承認を受けて行った。【結果】重量配分は実験開始前「再灌流のみ群」48.3%,「運動群」51.6%,「アスコルビン酸群」47.0%,「トコフェロール群」48.2%であった。虚血再灌流翌日には「再灌流のみ群」33.6%,「運動群」32.0%,「アスコルビン酸群」28.9%,「トコフェロール群」41.3%と変化し,実験最終日には「再灌流のみ群」25.8%,「運動群」35.0%,「アスコルビン酸群」33.1%,「トコフェロール群」36.2%であった。「トコフェロール群」以外の3 群において実験開始前に比較して虚血再灌流翌日,実験最終日ともに重量配分は有意差に減少していた。運動負荷時の歩行状態は,運動1 日目では「運動群」は5 個体,「アスコルビン酸群」「トコフェロール群」はともに3 個体で右下肢が十分背屈できずに足関節底屈位のまま歩行をしていた。運動2 日目は「運動群」は3 個体,「アスコルビン酸群」2 個体,「トコフェロール群」3 個体で右下肢が十分背屈できず,「運動群」2 個体,「アスコルビン酸群」2 個体,「トコフェロール群」1個体に擦過傷による出血を認めた。運動3日目は「運動群」は1個体,「アスコルビン酸群」2個体,「トコフェロール群」2 個体で右下肢が十分背屈できず,「運動群」2 個体,「トコフェロール群」3 個体に擦過傷を認めた。「アスコルビン酸群」2 個体は途中休憩を入れていた。運動4 日目は「運動群」,「アスコルビン酸群」,「トコフェロール群」それぞれ1 個体で右下肢の背屈が弱く,途中休憩を入れていた。筋線維の組織学的検索において「再灌流のみ群」は正常に比較し細胞間が広く,細胞自体も丸みを帯びていた。「運動群」「アスコルビン酸群」は「再灌流のみ」に比較して細胞間は狭い。核の膨化を認めるとともに中心核が存在した。「トコフェロール群」多数の炎症細胞の増加と壊死した筋線維の痕跡を認めた。【考察】虚血再灌流障害により発生する浮腫及び炎症反応により虚血肢への重量配分が減少する。しかし,「トコフェロール群」においては虚血再灌流翌日の重量配分の減少が抑制された。トコフェロールには血流改善,細胞膜保護作用があるため虚血再灌流後に発生する浮腫を減少させ,浮腫に伴う疼痛を減少させることが出来たものと考える。また,運動負荷により重量配分は増加していた。このことは運動負荷により浮腫が改善したものであると推察される。筋線維の組織学的検索においても「再灌流のみ群」に比較してその他の群では細胞間が狭かった。虚血再灌流後の浮腫の抑制には抗酸化物質の投与および運動負荷が有効であると示唆された。【理学療法学研究としての意義】虚血再灌流後の浮腫の抑制に抗酸化物質投与と運動負荷が効果的であり,早期から運動療法を施行する裏付けとなると考える。

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© 2013 日本理学療法士協会
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