理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-16
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ポスター発表
がん患者の健康関連QOLに身体能力が及ぼす影響
水澤 一樹澤栗 三宜深海 直子
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キーワード: がん, 身体能力, 健康関連QOL
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抄録
【はじめに】がん患者に対するリハビリテーション(がんリハ)の目的は他疾患と同じく,Performance Status(PS)・基本動作能力・日常生活活動(ADL)・生活の質(QOL)の維持・改善とされるが,他疾患よりもQOLに重点が置かれている点は特徴的である.なおPS・基本動作能力・ADLなどの身体能力は臨床アウトカムであり医療従事者側からの客観的評価だが,QOLは患者立脚型アウトカムであり患者側からの主観的評価となるため,両者は本質的に異なる.しかし身体能力と身体的側面のQOLは整合性があるため(水澤ら,2012),QOLを身体能力から説明できる可能性がある.そこで本研究では,がん患者のPS・基本動作能力・ADLといった身体能力がQOLに及ぼす影響について横断的に検討することとした.【方法】対象はがん患者20名(男性8名,女性12名)とし,年齢は62.9±13.1歳であった.がんリハのステージは予防的0名,回復的9名,維持的9名,緩和的2名であった.がんの種類は癌腫9名,肉腫9名,造血器由来が2名であった.PSはEastern Cooperative Oncology Groupの定義,基本動作能力はFunctional Movement Scale(FMS),ADLはFunctional Independence Measureの運動項目(mFIM),QOLはSF-36によって評価した.なおSF-36からは身体的側面(PCS)・精神的側面(MCS)・役割/社会的側面(RCS)の3サマリースコアを算出した.統計解析としては,まず身体能力とQOLの相関係数を求めた.さらにQOLに及ぼす身体能力の影響を検討するため,QOLを従属変数,身体能力と対象の基本情報を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)も行った.【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した.なお本研究は観察研究であり, いずれの使用データも日常の臨床において必要な項目である.しかし対象者には書面・口頭にて十分な説明を行い,書面にて同意を得た.【結果】身体能力とQOL間では,PSはPCSとのみ有意な相関(r=-.78)を認めたが,FMSとmFIMはすべてのQOL項目と有意な相関(r=.50~.71)を認めた.重回帰分析の結果,PCSに影響する因子としてPS(p<.01)が選択されたが,MCS・RCSでは有意なモデルが作成されなかった.さらに階層的重回帰分析を行うと,PSに影響する因子としてはmFIM(p<.01)と年齢(p<.01)が選択され,mFIMに影響する因子としてはFMS(p<.01)が選択された.【考察】QOLを上位,身体能力を下位として概念的に整理すると,PCS>PS>mFIM>FMSという階層構造が考えられた.ただし今回は横断研究であるため,階層構造の妥当性を断言することはできない.そのため身体能力とQOLの縦断的調査が今後の課題として挙げられる.またSF-36は包括的尺度であるため,がんに対する疾患特異的尺度による検討も必要であろう.さらに精神的側面・役割/社会的側面のQOLに影響を与える要因も検討しなければならない.【理学療法学研究としての意義】がん患者20名を対象として,身体能力がQOLに及ぼす影響を検討した.身体的側面のQOLと身体能力の間には階層構造が考えられ,がん患者に対する治療アプローチの参考となり得る.
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© 2013 日本理学療法士協会
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