理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-16
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ポスター発表
進行がん患者の緩和的リハビリテーションにおける理学療法士の役割
吉田 裕一郎田村 幸嗣河野 芳廣森山 裕一(MD)
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抄録
【はじめに、目的】 がん患者に対する理学療法の役割は、Diezの分類で示されているように予防的、回復的、維持的、緩和的と多岐にわたる。当院においても、手術目的の患者に対しては周術期呼吸リハビリテーションを実施しているが、その一方で周術期を乗り越えた後の再発患者や病状の進行した患者に対しては、緩和的アプローチとしての理学療法も求められている。そのような中で緩和的リハビリテーションにおいてはその性質上、理学療法の治療効果を確認することが難しく、理学療法の介入意義も不明瞭になることがある。そこで、当院における緩和的リハビリテーションの現状を調査し、そこから緩和的リハビリテーションにおける理学療法士の役割を明確にしていくことを目的に検討した。【方法】 2010年4月1日~2012年3月31日の過去2年間において、当院呼吸器外科・化学療法科医師により理学療法処方された患者138名より、手術療法を施行された周術期患者106名を除外した32名を対象とした。カルテ記録からの後方視的調査にて、調査項目は年齢、原発部位、入院理由、入院期間、理学療法開始時の移動能力・performance status(以下、PS)、理学療法上での阻害因子、転帰とした。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の報告はヘルシンキ宣言に沿って個人情報保護に配慮しながら記録調査を実施し、また当院倫理委員会の承認を受けている。【結果】 平均年齢70.4±10.1歳、原発部位は肺16名、胃7名、大腸4名、膵臓3名、その他2名。入院理由は化学療法を主とした治療目的が18名(56%)、症状緩和目的が9名(28%)、肺炎等による呼吸不全が5名(16%)、平均入院期間は44.8±26.7日。理学療法開始時の移動能力は自立歩行8名(25%)、介助歩行7名(22%)、車椅子介助10名(31%)、ベッド上7名(22%)・PS1:1名(3%)、PS2:7名(22%)、PS3:13名(41%)、PS4:11名(34%)。理学療法上での主要な阻害因子は、低体力(倦怠感、易疲労性)14名(44%)、がん性疼痛9名(28%)、呼吸困難感6名(19%)、その他3名(9%)。転帰は自宅退院12名(38%)、施設退院2名(6%)、転院2名(6%)、死亡16名(50%)であった。【考察】 入院理由では半数の患者が治療目的となっており、理学療法の目標としても当初は自宅退院等を設定している。しかし、理学療法開始時ですでに約7割の患者がPS3~4と病状が進行した状態にあり、さらに低体力やがん性疼痛といった、対応に難渋する阻害因子によって積極的な介入を図ることも難しい状況がみられ、最終的に半数の患者が死亡に至っていた。その中で最期の時まで理学療法士が介入できた患者もいた。回復的、維持的リハビリテーションの時期であれば、残存機能の回復や廃用の予防といった明確な目標が設定できるため、患者と共通認識を持って理学療法を進めていける。しかし緩和期においては、全人的苦痛と言われるように患者は多くの苦痛を抱えているため、明確な要求(demands)を訴える余裕すらない患者・家族も少なくない。また様々な阻害因子やリスクにより、さらにその状況は複雑化していく。そのような中で、的確な評価により患者の抱える機能障害・能力障害を見出し、それらの改善を図るという専門性から、残された生活の質(QOL)の向上に繋げていくことが理学療法士の役割であり、緩和期に携わる理学療法士の責務ではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】 がん患者の増加、高齢化に伴い、一般病院でも緩和的リハビリテーションを実施していく機会は今後さらに増えていくと考えられる。がん患者の最期の時まで、理学療法士の持つ専門性が患者の希望を支える一つとなっていけるよう、緩和期における理学療法報告を積み上げていくことが必要である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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