理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-12
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ポスター発表
セラピスト教育を担う教員のストレス感が勤労意欲に及ぼす影響
木村 直子岩月 宏泰
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キーワード: 教員, ストレス感, 勤労意欲
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抄録
【はじめに、目的】理学療法士,作業療法士,言語聴覚士等(以下、セラピスト)の養成校は、専門学校から四年制大学まで多岐に渡って増加している。これらセラピスト教育に従事する教員は学内での授業の受け持ちだけでなく,専門のフィールドを開発し,実践教育及び研究活動を行うことが求められている。勤務する職場環境は所属する養成校によって異なるが,教員の多くは過密スケジュールの中で多くの業務を遂行することを求められるストレスフルな状態であると考えられる。今回,セラピスト教育を担う教員を対象に職場におけるストレス要因と労働意欲の関係を明らかにすることを目的に,彼らに質問紙調査を実施し検討した。【方法】調査は、セラピストを養成する5 校に勤務する教員で本調査の趣旨を理解した者を対象とし,無記名自記式質問紙法として実施した。調査票はA4版1枚(両面印刷)で,本調査の趣旨及び倫理的配慮を記した表紙部分のほか,回答者の基本属性に関する設問(9 項目),多次元共感性尺度(鈴木,2008)のものを縮小版とした設問(15 項目),職業におけるストレッサーと勤労意欲に関する測定尺度:筆者が作成したストレッサーについての16 項目と勤労意欲に関する測定尺度(三隅,1976) の計35 項目から構成された。全ての測定尺度はリッカートの5件法で回答するものであった。統計処理は2群の比較に対応のないt 検定を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】調査票表紙には、「調査票は無記名であり,統計的に処理されるため、皆様の回答が明らかにされることはありません」と明記した。データ入力後はシュレッダーで裁断した。【結果】回収数は55 枚であり,設問に対する回答に複数選択されていたか欠落箇所のある3 枚を除いた52 枚(94.5%)について分析した。その内訳は男性36 名,女性16 名,年齢階級の中央値30 歳台で,所有する国家資格は理学療法士31 名,作業療法士16 名,言語聴覚士4 名,その他1 名であった。ストレッサー尺度の平均値51.6 点を基準として,未満の群を低値群(19 名,髙ストレス),以上の群を髙値群(33 名,低ストレス)と2 群に分けた。勤労意欲に関する測定尺度の下位尺度である「モチベータ・モラール」「ハイジーン・モラール」「チームワーク」「会合評価」「コミュニケーション」「メンタルハイジーン」及び「業績規範」の全てにおいて高値群が低値群より有意に高い値を示した(p<0.01)。このことから,職務に高ストレスを感じている低値群では,所属する組織の目標達成に消極的であることが示唆された。また,多次元共感性尺度の下位尺度である「被影響性」「他者指向的反応」「想像性」「視点取得」及び「自己指向的反応」のうち,「被影響性」では低値群10.3±2.0 点,髙値群9.0±2.4 点であり,一方「想像性」では低値群11.2±2.5 点,髙値群8.4±2.4点とこの2つの下位尺度では低値群が高値群より有意に高い値を示した(p<0.05)。その他の下位尺度では,髙値群が低値群より有意に高い値を示した(p<0.01)。「想像性」は他者の感情や行動に自分を投影する傾向を示し,「被影響性」は他者の心理状態に巻き込まれやすい素質を表すが,高ストレスを感じている低値群では高値群よりそのような心理状態に陥っていることが推測される。【考察】本研究の結果,ストレッサー尺度から高ストレスと評価された教員は19 名(36.5%)であったことから,彼らの職場環境はストレスフルな状況にあると考えられる。特に,彼らは他者の心理状態に巻き込まれやすい素質であることから,職場の上司や同僚との関係が緊張している場合,競争意識を高め,かつ協力関係や団結力を著しく欠く場合にはストレッサーとなっていることが推測され得る。【理学療法学研究としての意義】これまで,セラピスト教育を担う教員を対象にストレス感と勤務意欲について調査した研究は少なかった。本研究の結果から高ストレスに陥る教員も多いことが明らかとなり,職場のストレス低減には個々のコーピング能力よりも組織的取り組みの重要性が示唆された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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