理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-09
会議情報

一般口述発表
歩行自立チェックシートの今後の改善点
転倒要因の追究
石田 拓也小山 佑典清水 裕樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】 回復期リハビリテーション病院である当院は、患者の歩行自立を判断するために独自の歩行自立チェックシート(以下チェックシート)を活用している。チェックシートは、歩行耐久性や物を拾う動作、物を持って歩くなど病棟生活において転倒に繋がり得る項目を組み込んでいる。歩行自立に対して共通認識を持てるように、リハビリスタッフのみならず全職種で利用している。我々は先行研究において、チェックシート導入前後の歩行自立患者の転倒率を比較し、導入後の方が有意に低下することを報告した。チェックシート導入後歩行自立後の転倒者は、減少し改善はみられたものの、現在も転倒は発生している。そこで本研究では、チェックシート導入後、歩行自立になった患者で転倒の有無と身体機能、認知機能との比較を行なった。さらに転倒が発生した時間帯、転倒要因を分析し、チェックシートの今後の改善点を明確にすることを目的とし検証した。【方法】 対象は、2011年8月1日~2012年8月31日までに当院に入院し、歩行自立となった患者246名(年齢71.6±14.4歳、男性127名、女性119名)とした。本研究における転倒は、Gibsonの定義「自らの意思によらず、足底以外の部位が床、地面についた場合」とした。歩行自立後の転倒の有無により非転倒群、転倒群の2群に分類した。身体機能の評価は、Timed Up and Go test(以下TUG)を用い、認知機能の評価は、Mini-mental state examination(以下MMSE)を用い、非転倒群、転倒群間で比較を行った。統計分析は、2標本t検定を用い有意水準を危険率5%未満とした。また、転倒群の分析をインシデント・アクシデントレポートにて行った。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に従い、対象に本研究の説明を行い、同意を得た。【結果】 対象の非転倒群は235名(男性119名、女性116名、年齢71.4±14.6歳)、転倒群は11名(男性8名、女性3名、年齢75.9±12.0歳)で、転倒率は4%であった。TUG(非転倒群20.2±11.7秒、転倒群21.3±11.2秒)は、両群間で有意差が認められなかったが、MMSE(非転倒群25.9±4.4点、転倒群21.5±3.7点)では、有意差が認められた(P<0.05)。転倒の時間帯は、夜間8名(73%)、日中3名(27%)であった。転倒要因は、方向転換や床から物をとる動作などの身体機能的要因が4件(36%)、患者の危険認識不足や移動補助具の未使用などの認知的要因が7件(64%)であった。【考察】 非転倒群と転倒群を比較した場合、TUGは有意差が認められなかったが、MMSEは有意差が認められた。中川らはMMSE24点をカットオフ値とし、それ以下の得点で1.5~2倍の転倒リスクが高まると報告している。今回の結果では、転倒群のみ、21.5±3.7点でカットオフ値を下回っていた。歩行自立患者は、身体機能よりも認知機能の方が転倒と危険性との関係がある事を示唆した。実際に転倒群の転倒要因でも認知的要因によるものが多く見られた。転倒の時間帯は、日中と比べ夜間が73%で、夜間に転倒の危険性が高い。認知機能が低下した患者の転倒要因として、自身の状況が把握できないことが挙げられ、監視は不可欠であるが、夜間のスタッフ数は日中に比べ少なく、監視を行う事は難しい。そのため、全スタッフが患者の認知機能、日中と夜間の状態の違い、夜間排尿、入眠状況を把握しておくことが必要であると考える。当院のチェックシートは、日中の動作を中心として歩行自立かどうか判断しており、患者の夜間の状態をチェック項目に含んでいない。そこで夜間のチェックシートを導入することで、全スタッフが患者の夜間の状態を把握でき、また転倒予防に対する共通認識を持つことで、チームとして危険性のある患者を把握できるようになり、転倒は減少できると考える。さらに、夜間の状態に合わせ患者の部屋を見守りの行いやすい場所に変更する事や夜間の移動補助具変更など危険因子の排除し、十分な環境設定を行う事で転倒はさらに減少できると考える。三木らは、夜間尿と服用薬剤数と転倒には深い関係があると報告している。今後は、夜間の動作を取り入れたチェックシートを導入すると共に、認知機能、夜間排尿も考慮に入れたチェックシートに改善していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 非転倒群、転倒群を比較することで、チェックシートの改善点、課題が明確になり、歩行自立患者の転倒予防に有益な情報となった。今後のより精度の高いチェックシートになる事が期待できる。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top