理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-O-05
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一般口述発表
入院期高齢心疾患患者における心肺運動負荷試験指標と最大歩行速度の関連性について
太附 広明野間 靖弘河原 朋子相澤 達干場 泰成杉原 達矢河村 洋太伊藤 大起井関 治和藤崎 浩行岡元 崇
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抄録
【目的】 入院期における心疾患患者への心肺運動負荷試験(CPX)は臨床的に実施されているものの報告は少ない。またCPX指標と身体機能との関連は運動耐容能を用いたものが多くV(dot)E/V(dot)CO2 slopeや⊿V(dot)O2/⊿WRの報告はない。本研究では入院期高齢心疾患患者のCPX結果を提示し、最大歩行速度(MWS)との関連性を検討した。先行研究では心疾患患者のCPX指標は生命予後と関連し、高齢者のMWSは介護度や手段的ADL、予後と関連するとされており、これらについても検討した。【対象と方法】 対象は2011年10月~2012年8月に当院入院後、心臓リハビリテーション(心リハ)を実施しCPX後に独歩にてMWSを測定できた65歳以上の高齢心疾患患者58例(男性42例、女性16例、72.3±6.2歳、急性冠症候群33例、心不全11例、開心術14例)である。尚、急性冠症候群は冠動脈形成術後である。 方法はエアロバイクを用いたCPXにてV(dot)E/V(dot)CO2 slope、⊿V(dot)O2/⊿WR、嫌気性代謝閾値(AT)を求めた。ランプ負荷は原則10ワットとしたが、5ワットで6例測定し、V(dot)E/V(dot)CO2 slopeはRCポイントまでを解析した。MWSは10m(予備路3mずつ)を測定したが、CPXにて心電図上ST変化や重篤な不整脈を生じた症例は実施しなかった。統計学的手法はMWSを目的変数、CPX指標を説明変数として単回帰分析を行ない、有意水準5%未満とした。心疾患患者のV(dot)E/V(dot)CO2 slope≧40.00、⊿V(dot)O2/⊿WR<7.00 ml/W、心不全患者AT<11.00 ml/ kg/minは予後不良と報告されており、相関関係を認めた項目はこれに対応するMWSを求めた。【説明と同意】 CPXは医師から患者へ説明し同意を得ており、MWSは研究の主旨を対象者に説明し同意を得て実施した。本研究は当院倫理委員会の承認を得ている。【結果】 CPX実施は発症または術後13.2±7.4病日(最頻値7.0病日)、MWSはCPX同日もしくは翌日に測定した。CPX指標はV(dot)E/V(dot)CO2 slope:36.91±7.10(男性36.88±6.95、女性37.02±7.73)、同様の順に⊿V(dot)O2/⊿WR:6.66±2.00ml/W(7.19±1.71、5.23±2.10)、AT:8.78±2.19ml/ kg/min(8.84±2.43、8.64±1.40)で、MWSは1.47±0.34m/s(1.53±0.63、1.31±0.20)であった。MWSに対する CPX指標の関連性はV(dot)E/V(dot)CO2 slope(r=-0.490、P<0.001、y=-0.0233x+2.332、R²=0.24)で有意な負の相関、⊿V(dot)O2/⊿WR(r=0.465、P<0.001 、y=0.078x+0.950、R²=0.22)とAT(r=0.341、P<0.01、y=0.053x+1.009、R²=0.12)で有意な正相関を認めた。回帰式に先行研究のV(dot)E/V(dot)CO2 slope:40.00、⊿V(dot)O2/⊿WR:7.00、AT:11.00 を代入したMWSはそれぞれ1.41、1.50、1.59 m/sであった。【考察】 本研究の結果は入院期のものであり、先行研究は維持期である。CPX指標は経時的に改善し、寄与率も低いため単純に断定できないが、退院前のMWSが1.41 m/s以下は注意が必要である。高齢者のMWSに関しては手段的ADLの全ての項目が可能なのは1.83m/s以上で、1.67以下では殆ど不可能であることや5年後追跡調査のカットオフ値は男性の要介護と死亡:1.63m/s、介護重症化:1.55m/s、女性の要介護・介護重度化:1.13m/s、死亡:1.12m/sと報告されている。これらを援用するには高齢心疾患のMWSも経時的に増加するか検討する余地がある。CPX指標とMWSとの相関関係には換気能力や心拍出量、下肢筋力の影響が推察されるが今回の結果からは明確でなく今後の課題である。さらに⊿V(dot)O2/⊿WRは年齢や性別の影響は少ないとされるがその他のCPX指標は性別、年齢、疾患特性の影響を受けるため症例数を増やしてこれらについても検討を進めたい。【理学療法学研究としての意義】 報告の少ない入院期高齢心疾患患者のCPX指標を提示し参考資料となる。MWSとCPX指標との相関関係から先行研究より予測値を示した。高齢者のMWSはADL障害や要介護、生命予後との関連が報告されており、高齢心疾患患者のCPX指標がADL障害や要介護の予測因子となる可能性がある。
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© 2013 日本理学療法士協会
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