理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-O-05
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一般口述発表
自宅での身体活動量の違いが高齢(70歳以上)男性慢性心不全患者に与える影響
―運動耐容能と再入院率に着目して―
佐藤 憲明高永 康弘折口 秀樹毛利 正博木村 悠人椛島 寛子星木 宏之
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抄録
【目的】近年増加傾向である慢性心不全(以下CHF)患者にとって身体活動を高めることは、二次予防や生命予後の改善においても重要である。平成22年の国民健康・栄養調査によると、一日の平均歩数は男性7100歩、女性6100歩であった。男女とも60代まではほぼ平均歩数を維持しているが、70歳以上になると男性4900歩、女性3900歩と著明に減少する傾向がある。そこで本研究では、70歳以上の男性CHF患者の自宅での身体活動量を調査し、身体活動量の違いが運動耐容能の改善や再入院率に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は、平成19年1月~平成23年12月までに当院の回復期心臓リハビリテーション(以下心リハ)に5カ月間参加し、退院から1年の追跡調査が可能であった70歳以上の男性CHF患者17名(平均年齢75±3.2歳)である。70歳以上の男性平均歩数を基準に、心リハ開始時の歩数が5000歩以上をA群、5000歩未満をB群に選別した。身体活動量の測定は加速度センサー付歩数計(Lifecorder PLUS スズケン社製)を用いた。対象者には5カ月間の心リハ開始時と終了時の2回、1週間装着してもらい、心リハに参加した日以外の1日あたりの歩数、運動量(kcal/kg)、運動時間(分)を解析した。また、運動負荷試験は自転車エルゴメーターによる呼気ガス分析(AERO MONITOR AE300Sミナト社製)を用いて実施し、運動耐容能の指標として最高酸素摂取量(PeakV(dot)O2)を測定した。下肢筋力の評価としては、等速性筋力測定器(MYORET RZ-450川崎重工製)により膝伸展筋力を測定し、ピークトルク体重比(Nm/kg)を下肢筋力の指標とした。さらに血液検査で求めたBNP値を心不全増悪の有無の指標とした。いずれも心リハ開始時と終了時に測定した。対象患者の退院後1年間の再入院の有無は、本人及びカルテより情報収集した。統計解析はt検定、ピアソンの積率相関係数を用い、有意水準は5%とした。【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき、心リハ開始時に全ての対象者に文書にて目的を説明し、全員同意が得られた後に実施した。【結果】心リハ開始時の平均歩数はA群(8名):6804±1301歩、B群(9名):2338±876歩であった。その他の2群の開始時データ(A群vs B群)は、平均年齢:75±1.9 vs 76±4.1歳、平均LVEF:36.1±10.8 vs 38.5±11.4%、平均膝伸展筋力:1.42±0.28 vs 1.45±0.33Nm/kg、平均PeakV(dot)O2:14.1±2.4 vs 13.7±3.6ml/min/kg、平均BNP:319±205 vs 208±157pg/mlであり、全て2群間で有意差は認められなかった。終了時の歩数は、A群:7166±2653歩、B群:3762±1864歩とB群のみ有意に増加した。しかし終了時のPeakV(dot)O2はA群が16.2±2.6 ml/min/kgと有意に増加したのに対して、B群は14.3±3.6 ml/min/kgと有意差は認められなかった。A群のPeakV(dot)O2の改善率は、歩数増加率、運動量増加率、運動時間増加率といずれも有意な強い正の相関関係(r=0.78、r=0.78、r=0.74 p<0.05)を認めた。終了時の膝伸展筋力、BNPは2群とも開始時と有意差は認められなかった。退院後1年以内に心不全が増悪して再入院をした人数は、A群は0名(0%)であったのに対して、B群は2名(22%)であった。【考察】心リハ開始時の患者背景はほぼ同じであったにも関わらず、その後の自宅での身体活動量の違いで運動耐容能の改善率に違いをもたらす結果となった。再入院がB群からのみ発生したことも、生命予後の規定因子である運動耐容能の改善が認められなかったことが一因であると思われる。日本における慢性心不全患者を対象に調査したJCARE-CARDによると心不全増悪による再入院は6ヶ月以内で27%、1年後は35%と報告している。今回退院後1年以内に再入院をしたのが17名中2名と考えれば再入院率は12%と低くなり、これは心リハの効果と考えられた。しかしながら低身体活動量のB群のみでは22%となるため、心リハに参加していても自宅での身体活動量が少ないと心不全増悪の危険性は高まると言える。今回の研究で1日平均5000歩以上の歩行が、高齢CHF患者の予後を改善するための重要な目安となることが示唆された。逆に5000歩未満のCHF患者は運動耐容能の改善が困難で再入院の危険性が高まるため、体調管理、体重管理、服薬管理、栄養管理などに十分注意を払い、再発予防に努めていく必要がある。【理学療法学研究としての意義】高齢の男性CHF患者にとって運動耐容能改善や心不全増悪の予防に必要な歩数の目安を示すことができ、今後の指導に活かすことができることに臨床的な意義があると言える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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