理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-31
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ポスター発表
張力特性からみたスタティックストレッチング〜反復ストレッチングは有効か?〜
松下 健松村 仁実木山 喬博
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抄録

【はじめに、目的】ストレッチング(以下St)は医療やスポーツ現場などで頻繁に使用される.その目的は,関節可動域(以下ROM)の改善,関節拘縮の予防・維持・改善,筋緊張の低下,血液循環の改善,疼痛の緩和,障害予防や競技パフォーマンスの向上などである.本研究はROMの改善に着目し,St効果を検討した.ROMの改善は軟部組織の柔軟性向上の結果として得られる.柔軟性は,質的柔軟性と量的柔軟性に分けられる.質的柔軟性は関節の動かし易さを,量的柔軟性は関節可動範囲を示す.つまり,質的柔軟性は通常St時の抵抗感覚で,量的柔軟性は関節角度で評価される.St時の抵抗力は,軟部組織を伸張すると増加する張力である.先行研究で,St肢位で保持(以下Hold)後の経時的な張力低下が報告されており,「張力緩和」と呼ばれる.張力緩和により伸張抵抗力が低下すれば,低外力で歪みが生じ易くなる.つまり,張力緩和により柔軟性は向上すると考える.歪みには可逆的な粘弾性歪みと,不可逆的な塑性歪みがある.本研究ではSt効果を,張力緩和に伴う粘弾性歪みによる柔軟性向上とした.同等のSt効果を得るためには,一般に1 回のSt施行時間が短いほど,St反復回数は多く必要とされる.Stの反復によるHold開始時の張力低下は報告されているが,持続Stと反復StとのSt効果の比較を行った研究は少ない.Stで得られる張力緩和を反復することでHold開始時張力が低下すれば,反復Stは持続StよりもSt効果が大きいとの仮説を立てた.本研究の目的は,持続Stと反復Stの張力緩和特性の確認と効果の比較とした.【方法】対象は健常成人11 名(男性6 名,女性5 名,年齢:19.5 ± 0.7 歳,身長:167.0 ± 7.9cm,体重:59.0 ± 12.1kg)であった.傾斜台,リフター,作製した角度可変Stボードを用い,立位で下腿三頭筋のスタティックStを実施した.St肢位は足関節背屈15° で統一した.持続Stは9 分間のSt,反復Stは3 分間のStを3 回,反復St間の休憩時間は30 秒とした.ともに総St時間を9 分に統一した.全対象者に2 条件のStを実施し,実施順序はランダム化し,1 日1 条件,2 条件の実施間隔は1 週間以上とした.St時の足関節背屈トルクを下腿三頭筋抵抗力(以下張力)と置き換えて,荷重変換器(共和電業社製)で測定した.サンプリング周期は100msで得られた出力電圧はKEYENCE NR600(キーエンス社製)にてA/D変換し,コンピュータへ入力した.事前に求めた荷重変換器の機械特性式で,出力電圧をkgfへと変換して体重で除した後,N・m/kgに変換した. Hold開始時張力を初期張力,ストレッチング終了時張力を最終張力とし,張力緩和率{(最終張力−初期張力)/初期張力× 100(%)}を算出した.統計学的処理は,一元配置分散分析で,持続Stと反復Stのそれぞれの張力の経時比較,初期張力と最終張力の比較をした.Kruskal Wallis順位検定で,持続Stと反復St(全体),反復St1 回目の張力緩和率を比較した.Friedman順位検定で,反復St1回目と2回目,3回目の張力緩和率を比較した.それぞれ有意差がみられたら多重比較を行った.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者には研究の内容を文書と口頭にて説明をし,同意を得た上で実施した.なお,本研究は本学倫理委員会の承認を得た.【結果】持続Stと反復St1 回目にて,St開始からHold開始で張力増加が,Hold開始からSt終了で張力緩和が観察された.張力の経時的比較で,持続Stでは,Hold開始時(3.62 ± 0.55N・m/kg)と比較して1 分以後(1 分:3.32 ± 0.48N・m/kg,9 分:3.18 ± 0.36 N・m/kg)で有意差あり(p<0.01).反復Stでは,1 回目,2 回目,3 回目とも有意差なし.初期張力は,反復St1 回目(3.47 ± 0.69N・m/kg)と比較して,2 回目(3.07 ± 0.58N・m/kg)と3 回目(2.95 ± 0.65N・m/kg)で有意差あり(p<0.01).最終張力は,3 回の反復St間に有意差なし.張力緩和率は,持続St(-10.9 ± 12.8%)と反復St(全体)(-10.5 ± 13.0%)では有意差なし.St時間の比較で,9 分(-10.9 ± 12.8%)と3 分(-4.2 ± 9.7%)でも有意差なし.【考察】経時的な張力緩和の大部分はHold開始直後に発生し,Hold開始から1 分までのStで粘弾性歪みが十分に得られることが分かった.また,反復StでSt回数を重ねると初期張力は低下し,反復回数のはやい段階での低下率が特に大きかった.持続Stと反復Stとも張力緩和が観察され,粘弾性歪みが生じたと考える.しかし,本研究では2 条件間にはSt効果に有意差はみられず,St時間,強度等の決定因子を再検討すべき課題が残った.【理学療法学研究としての意義】経時的な張力緩和と反復Stでの初期張力低下の2 つの張力の特性を考慮してStを実施する重要性が示され,Stを反復することの有効性が示唆された.

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© 2013 日本理学療法士協会
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