理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-31
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ポスター発表
全身振動刺激(Whole-Body Vibration)がパーキンソン病患者の歩行能力に与える即時効果
糸谷 圭介糸谷 素子加藤 順一安藤 啓司
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抄録

【はじめに、目的】近年、全身振動刺激(WBV) によるトレーニング効果として、競技者や高齢者において下肢筋力の運動パフォーマンスや身体バランスの向上や骨密度の改善などが報告され、スポーツ医学のみならずリハビリ医療にも応用されつつある。しかし、それらの報告はある一定期間のWBVトレーニングによる身体への効果を評価したものであり、即時効果をみた報告は本邦では散見されている。そのため本研究ではパーキンソン病患者における運動能力がWBVを用いることでどのように変化するかを明らかにすることである。【方法】当院に入院中のパーキンソン病(PD)患者のうち監視下にて歩行が可能な14 名(男性6 名、女性8 名:67.8 ± 13.1 歳)を被験者とした。WBV負荷には音波振動にて垂直方向に振動するWBV(Sonic Wave Vibration System、SONIC WORLD)を使用し、周波数25Hzにて2 分間の負荷とWBV負荷プロトコールを実施した。WBV負荷中は、プラットホーム上にて両膝関節を約10 −15 度屈曲立位とし、両上肢にて手すりを把持するよう被験者へ口頭指示した。WBV負荷実施前後において10m歩行時間、Timed Up and Go test(TUG)、静的立位バランスの測定を実施した。静的立位バランス評価には重心動揺計(アニマ社製G620)を使用し、取り込み周期を50msに設定し1 分間計測した。統計解析は、WBV負荷前と比較してWBV負荷2 分後およびWBV負荷プロトコール後の10m歩行時間とTUG時間および立位バランス評価の重心動揺による総軌跡長、矩形・外周面積をWilcoxon符号付順位検定を用いて解析し、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本院の倫理委員承認(承認番号03)のもと、対象者に口頭および紙面にて説明し、同意を得た。【結果】WBVによる運動の実施前後で、静的立位バランスの重心総軌跡長は、142.8 ± 76.9 から131.5 ± 65.3cm、118 ± 71.3cmとなり有意な改善を認めた(p<0.05)。また10m歩行時間は13.6 ± 7.8 から11.6 ± 5.3 秒、11.4 ± 5 秒 (p<0.01) となり、TUGも、22.7 ± 33.7 から19.9 ± 29.5 秒、18.3 ± 23.7 秒 (p<0.01) と有意な改善を認めた。【考察】PD患者におけるWBVを用いた運動刺激は、実施直後に静的立位バランスおよび歩行速度や起立動作に影響を与え、それらの能力を向上させることが明らかとなった。PD患者では, 固有感覚を統合することが障害されるために姿勢反射障害が生じるとされており、WBVトレーニングによる微細振動刺激はα運動神経を興奮させ骨格筋を収縮させると考えられる。またγ運動神経も興奮し, 遠心性インパルスにより錘内線維を収縮させ筋紡錘中のIa線維が求心性インパルスを生じさせる。これらの固有感覚入力が増強され感覚統合のプロセスを強調し、即時効果として歩行障害やバランス機能の改善に影響したと推測される。【理学療法学研究としての意義】健常者や高齢者のみでなく、神経難病を有した患者でも健常者と同様の効果が得られた。そのため、臨床現場における健康増進や低負荷の運動装置として活用できると思われる。さらに、使用が簡便なため自主的な運動においても有効活用が可能であると考えられる。

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© 2013 日本理学療法士協会
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