理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-12
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ポスター発表
回復期リハビリテーション病棟におけるトイレ介入チャートの開発と妥当性の検討
甲田 宗嗣後河内 淳小林 浩介砂堀 仁志平山 秀和工藤 弘行白井 亜紀
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抄録
【目的】 回復期リハビリテーション病棟では、排泄行為に何らかの介助を必要とする者が多く存在し、排泄行為の自立度が日常生活動作全般の自立度に強く影響している印象がある。排泄行為の能力要因については、Functional Independent Measure(以下FIM)の項目において、下衣の更衣、排泄コントロール、移乗、移動、認知項目全般に分散しており、FIMの評価だけでは排泄行為のどの部分に介助が必要なのかを把握しにくい問題がある。また、靴の着脱やドアの開閉などFIMだけでは十分評価できない問題もある。そこで我々は、排泄行為を時系列順に従い簡便に評価し、多職種間で情報を共有し、統一した介入を実施することを目的に、トイレ介入チャートを作成した。本研究の目的は、既存の評価指標との関連を調べることでトイレ介入チャートの妥当性を検証し、入院時と退院時のトイレ介入チャートの変化に影響をおよぼす要因を分析することとした。【方法】 対象は回復期リハビリテーション病棟に入院した患者19名(男性9名、女性10名、平均年齢70.6±8.5歳)であった。疾患は脳卒中15名、その他の神経系疾患、整形外科疾患4名であった。方法は、入退院時に同一の評価を行った。評価指標は動作能力指標(以下MAS)、バーグバランススケール(以下BBS)、FIM、トイレ介入チャートであった。トイレ介入チャートは14項目を3段階で評定し、満点で自立になるよう設定されている。ナースコールを押して介助者を呼び、靴や装具を履くまでの呼び出し期(5項目)、ベッド車いす間の移乗から車いすトイレ間の移乗までの移動期(5項目)、下衣の脱衣から排泄後の手洗いまでの排泄期(4項目)から構成される評価である。統計学的分析には、入院時の各評価指標の関連と、トイレ介入チャートの合計点の入退院時変化量と入院時の他の評価指標の合計点との関連をピアソンの積率相関係数の検定、入院時のトイレ介入チャートの各項目と入院時の他の評価指標の合計点との関連をスピアマンの順位相関係数の検定を用いた。統計ソフトはSPSS14.0Jを用い、有意水準を5%に設定した。【倫理的配慮】 本研究は当院の研究倫理委員会により承認され、すべての対象には同意を得た上で研究を実施した。【結果】 入院時において、トイレ介入チャートの合計点と全ての他の評価指標の合計点の間に有意な相関が認められた[r=0.707, 0.761]。入院時のトイレ介入チャートの各項目と入院時の他の評価指標の合計点との関連では、排泄コントロールの状態をオムツ、リハビリパンツ、布パンツの3段階で評定した項目は、いずれの評価指標の合計点とも相関が認められなかったが、その他の項目は全ての評価指標の合計点と有意な相関が認められた。相関が認められたトイレ介入チャートの項目のうち、4項目がMASと最も強い相関を示し、3項目がBBS、1項目がFIMの運動項目小計、2項目がFIMの認知項目小計、3項目がFIMの合計と最も強い相関を示した。トイレ介入チャート合計点の入退院時変化量と入院時の他の評価指標の合計点との関連では、どの評価指標との間にも有意な相関を認めなかった[r=-0.051, -0.443]。【考察】 今回、我々が開発したトイレ介入チャートの合計点と他の評価指標の合計点との間に強い相関が認められたことから、トイレ介入チャートは動作遂行能力や日常生活自立度に関係の強い特性を持つことが示された。トイレ介入チャートは、排泄行為や排泄介助を時系列順に記録できることから、日常業務の中で対象者の状況を整理して記憶しやすく、多職種間での統一した介入に有効であると思われた。また、トイレ介入チャートの項目によって動作能力との相関が強いものや認知との相関が強いものがあることが明らかとなった。そのため、介入にあたっては、対象者の障害の特徴にあわせて介入内容を変えたり代償手段を提示したりすることが必要であると思われた。トイレ介入チャートの合計点の入退院時変化量と入院時の他の評価指標の合計点との関係では、入院時に他の評価指標の合計点が低いほどトイレ介入チャートの合計点が大きく改善する傾向はみられたものの、有意な相関が認められなかった。このことから、入院時に活動レベルが低い者の中に、入院期間中に排泄行為の遂行能力が向上するものとそうでないものが存在することが示唆され、更なる分析、対応が必要であると思われた。【理学療法学研究としての意義】 排泄行為に関して、理学療法士が科学的妥当性の高い包括的な評価指標を確立し、他職種と共同して介入に携わることは意義あることと思われる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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