理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-51
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ポスター発表
富士登山競走前後における膝関節周囲筋の筋力及び筋活動の変化
升 佑二郎芦川 聡宏粕山 達也河戸 誠司村松 憲金 承革前田 宜包石黒 友康
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キーワード: 登山競走, 筋力, 筋活動
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抄録
【はじめに、目的】マラソンは心身ともに疲労困憊に至る過酷なレースであるが、多くの参加者は走りきることで達成感を味わい、大きな喜びを得ることができる人気のあるスポーツである。また、マラソンに関係する研究は多くみられ、生理学的な内容からバイオメカニクス的な内容まで多くの知見が得られている。一方、マラソンのように長時間の持久的走動作が繰り返される走競技の一つに、登山競争がある。この競争は、勾配のある走路を走り続けることから、下肢においては短縮性筋収縮が持続的に行われるという特徴がある。しかしながら、登山競争に関する研究は、高度の変化に適応するための生理学的な反応に関する報告がみられるものの、登山競争前後に関わる筋力及び筋活動の変化について検討された報告はみあたらない。登山競争前後における筋力及び筋活動の変化について検討し、筋疲労に伴う筋の特徴を明らかにすることにより、レース後の選手の疲労蓄積を防ぐためのコンディショニングサポートに関わる資料が得られると考えられた。そこで本研究では、富士登山競争前後における膝関節周囲筋の筋力及び筋活動の変化について検討し、筋疲労に伴う筋力及び筋活動の特性を明らかにすることを目的とした。【方法】本研究の被検者は、定期的なトレーニングを行い、富士登山競争に参加した消防団員の選手7 名とした。各被検者は、富士登山競走前(Pre)に実験施設内において測定を行ない、また、富士登山競走直後(Post)に実験施設に移動し、再度測定を行なった。筋力測定には、総合筋力測定装置(Byodex)を用いて、角速度60、180、300deg/sによる膝関節屈曲−伸展トルクを測定した。また、大腿直筋、半腱様筋及び大腿二頭筋にAg/AgCI電極を添付し、筋力測定時における筋活動を同時に測定した。測定により得られたEMG信号は増幅器(PowerLab;日本光電)を介して増幅したのち、A/D変換器(Powerlab;日本光電)を介し、サンプリング周波数1kHzにてコンピュータに取り込んだ。EMG信号の解析にはLabchartを使用し、伸展動作時の大腿直筋及び屈曲動作時の半腱様筋及び大腿二頭筋のRMS値を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】全被検者には、測定に関する目的及び安全性について説明し、任意による測定参加の同意を得た。さらに、各選手が所属する消防長の同意も得た。本研究は、健康科学大学研究倫理評価委員会の承認を受けて実施した。【結果】膝関節屈曲−伸展トルクは、体重当たりの最大トルクの比率として算出し、伸展動作時における値は、60、180 及び300deg/sともにPre とPost間に有意差は認められなかった。また、屈曲動作においては、60、180deg/sのPreとPost間に有意差は認められなかったものの、300deg/s(Pre;85.1 ± 12.1%、Post;93.7 ± 14.6%)では、Preに対してPostの方が有意に高い値を示した(p<0.05)。筋活動における大腿直筋のRMS値は、60、180deg/sのPreとPost間に有意差は認められなかったものの、300deg/s(Pre;0.006 ± 0.001、Post;0.003 ± 0.001 )では、Preに対してPostの方が有意に低い値を示した(p<0.05)。半腱様筋におけるRMS値においても、60、180deg/s のPreとPost間に有意差は認められなかったものの、300deg/s(Pre;0.006 ± 0.001、Post;0.003 ± 0.001 )では、Preに対してPostの方が有意に低い値を示した(p<0.05)。また、大腿二頭筋におけるRMS値は、60、180 及び300deg/sともにPreとPost間に有意差は認められなかった。【考察】本研究では、富士登山競争前後における膝関節周囲筋の筋力及び筋活動の変化について検討し、300deg/sにおける屈曲筋力は有意に増加するものの、筋活動におけるRMS値は、大腿直筋及び半腱様筋において有意に減少する傾向が示された。これらのことについて、先行研究において、血中アドレナリン濃度の増加により、筋の強制収縮が生じ、筋力が増すことが報告されている。また、ある特定の筋が疲労し、力を発揮することができなくなった場合、他の筋が大きな力を発揮する代償作用が生じ、筋力が増加するという可能性も推察される。従って、筋力値といったアウトプットのパフォーマンスは、疲労に伴い必ずしも減少するとは限らないが、大腿二頭筋よりも大腿直筋及び半腱様筋の筋機能が低下していることから、これらの低下した筋機能の改善を目的としたコンディショニングサポートが重要であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究では、大腿直筋、半腱様筋及び大腿二頭筋の筋活動について検討し、大腿二頭筋に変化はみられなかったものに、大腿直筋及び半腱様筋の筋機能が低下していることがみられた。このように、登山競走に伴う筋の活動様相の変化を把握していくことにより、効果的に疲労蓄積を改善するためのコンディショニングサポートに関わる手法の確立に貢献できると考えられた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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