理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-19
会議情報

ポスター発表
糖尿病患者における自律神経評価としての心拍変動係数の臨床的意義について
鈴木 康裕中川 のり子石川 公久江口 清
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】近年、糖尿病患者における神経障害としての自律神経障害が注目されている。糖尿病を合併した急性心筋梗塞患者では、非合併例と比べて運動耐容能が低下していると報告されているが、要因として糖尿病の合併症である自律神経障害による心拍応答不良が挙げられている。このように自律神経障害が運動耐容能や、またバランス能力などへ与える影響については既に報告されているが安静時における自律神経機能と運動時の様々な指標、またその他臨床所見との関連を検証した報告は少ない。今回、安静時における自律神経機能の指標として心拍変動を利用した心電図R-R間隔の変動係数(CVR-R)を用い、その検証を行った。本研究の目的は、糖尿病患者の自律神経機能評価として行ったCVR-Rと各臨床所見との関連について調査を行うことでその臨床的意義について検討することである。【方法】対象は糖尿病患者36名。安静時自律神経指標である心拍変動係数(以下CVR-R)の正常値を2%以上とし、この基準値の及ぼす影響について年齢、性別、罹患歴、身長、体重、BMI、体組成(体脂肪率、除脂肪率)、生化学検査(HbA1c(NGSP)、LH比(LDL/HDL))、動脈硬化指標(ABI、baPWV)、心臓エコー検査(LVEF、E/E’)、投薬内容(インスリン使用の有無)、心肺運動負荷試験(Peak V(dot)O2、⊿HR、%HRR、V(dot)O2/HR、V(dot)O2/Watt、VE vs V(dot)CO2 slope)の各因子を用いて検討を行った。さらにCVR-R自体と運動時自律神経指標(⊿HR、%HRR)、最高酸素摂取量(Peak V(dot)O2)との関連について検討した。なお⊿HRは、安静時心拍数と最大運動時の心拍数の差により算出し、%HRRは(最高心拍数-安静時心拍数)/(220-年齢-安静時心拍数)×100で算出した。得られた結果について、CVR-R2%以上と以下の2群間での各因子の比較をχ²検定、Mann-WhitneyのU検定を用いて行った。CVR-R2%の関連因子の検討には、まず独立変数の選択をステップワイズ法にて行い、選択された因子についてはロジスティック回帰分析の説明変数として使用して検定を行った。 安静時自律神経指標であるCVR-Rと運動時における自律神経指標(⊿HR、%HRR)、また最大酸素摂取量(Peak V(dot)O2)との関連については、Pearsonの積率相関係数を用いた。分析にはSPSS ver.20.0J for Windowsを使用し、統計学的有意差判定基準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、研究の内容と目的を説明し、同意を得た後に測定を実施した。【結果】両群間において年齢、baPWV、E/E’、⊿HR、peak VO2、VO2/HR、VO2/Wattに有意差を認めた(p<0.01)。CVR-R2%の関連因子を検討した結果、⊿HRのみ抽出された(オッズ比:0.934、95%CI:0.879-0.992)。CVR-Rは⊿HRと相関し(R=0.413、p<0.05)、またPeak V(dot)O2とも相関を認めた(R=0.394、p<0.05)。【考察】CVR-R2%は⊿HRと関連を有意に認めたことから、安静時の自律神経指標であるCVR-Rの基準値を2%とした場合、運動時の自律神経の動向に影響を及ぼす指標となる可能性が示唆された。またCVR-Rは⊿HRとPeak V(dot)O2それぞれと有意な相関を認めた。このことから安静時の自律神経指標であるCVR-Rは、運動時での自律神経指標である⊿HRに影響を及ぼし、自律神経障害は安静時・運動時それぞれの指標ではなく同様である可能性が示唆された。そして安静時の自律神経指標であるCVR-Rでも、個体の最大運動能力を示すPeak V(dot)O2を反映する可能性が示唆された。一方で本研究の結果には年齢が影響した可能性がある。CVR-Rは⊿HR、Peak V(dot)O2と相関を認めたが、%HRRとは相関を認めなかった。CVR-R、⊿HR、Peak V(dot)O2はそれぞれ年齢に影響を受ける指標であるが、%HRRは年齢の補正を行っているためCVR-Rと相関を認めなかった可能性がある。今後、対象の属性を整理するなど年齢の影響を受けない追跡調査が必要になると考えられる。【理学療法学研究としての意義】最近の自律神経評価は高感度で再現性の高い心拍変動スペクトル解析が推奨されているが、CVR-Rはこれまで糖尿病患者の自律神経評価として広く長く使用されてきた歴史がある。そのため既存の機器でCVR-Rしか計測できない施設も多く存在する。現状での設備で計測可能なCVR-Rの臨床応用の方法を模索することもまた理学療法研究として有益なことと思われる。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top