理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-03
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一般口述発表
行動科学の理論・モデルに基づいた運動指導が地域在住高齢者の運動実施に与える影響
細井 俊希新井 智之丸谷 康平藤田 博曉竹中 晃二
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抄録
【はじめに,目的】 理学療法士は、運動療法の対象となる者に対し、自主的な運動指導を行うことがある。しかし、Forkanらの研究では、リハビリテーション病院退院時に自主トレ指導した対象者のうち、36.6%が退院後に全く運動しなかったと答えていた。運動の採択と継続には、行動科学の理論・モデルのひとつであるトランスセオレティカルモデル(以下、TTM)に基づいた介入が有効とされている。本研究の目的は、TTMに基づいた運動指導が、地域在住高齢者の運動実施に与える影響について、従来の運動指導と比較することにより明らかにすることである。 【方法】 対象は、埼玉県M町の老人福祉センターに曜日別に通う2グループの地域在住高齢女性のうち、65歳以上で医師から運動を制限されていない者とした。 研究対象者は介入群10名、統制群14名、合計24名であった。研究期間は2012年8月から10月の3ヵ月間であった。指導する運動は、両群ともロコモーショントレーニングのスクワットと片足立ちとし、週1回以上実施するよう指導した。一方のグループ(介入群)にはTTMを取り入れた運動指導を、もう一方のグループ(統制群)には、従来の運動指導を実施した。評価は、運動指導前、運動指導1ヵ月後、3ヵ月後に、行動変容ステージ、健康状態、運動能力(CS-30、片脚立位時間)、運動能力低下の自覚、転倒セルフエフィカシー、健康関連QOLについて評価した。また、運動指導直後に、効果の期待、楽しさ、覚えやすさ、習慣化、継続する自信について5段階(5.非常にそう思う~1.全くそう思わない)で調査した。運動指導1ヵ月後および3ヵ月後には、それぞれの運動の実施頻度から運動実施率を算出した。研究開始1ヵ月後および3ヵ月後には、効果への期待に替えて効果の実感について5段階にて調査した。 統計学的処理は、PASW Statistics 18を使用した。研究開始時における属性、運動指導後における運動チェックリスト項目、および運動実施率については、カイ二乗検定および対応のないt検定を実施し、群間比較を行った。各評価項目の運動指導時、1ヵ月後、および3ヵ月後のデータについては、二要因分散分析を行い、差が認められたものに関してはTukey法による多重比較を実施した。危険率はいずれも5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき、本研究対象者には、本研究開始前に研究の内容などについて説明文書を用いて説明し、署名をもって同意を得た。本研究は、埼玉医科大学保健医療学部倫理審査委員会の承認を受けて実施した。【結果】 研究開始時における属性では、両群間で有意差は認められなかった。運動能力低下の自覚は、介入群が統制群に比べ有意に高値を示した。介入群は統制群に比べ、スクワットの楽しさの項目で有意に高値を示し、スクワットの覚えやすさ、習慣化、継続する自信、および片足立ちの楽しさで高値を示す傾向が認められた。1ヵ月後の運動実施率は、介入群は統制群に比べスクワットの実施率が有意に高く(61.4 % vs 28.6%、 p<.05)、片脚立位の実施率が高い傾向が認められた(62.9% vs 31.6%)。その他の運動では有意差は認められなかった。3ヵ月後はすべての運動で実施率に有意差が認められなかった。行動変容ステージは、1ヵ月後には介入群、統制群ともに前期ステージから後期ステージにシフトし、3ヵ月後にはほぼ実行ステージ、維持ステージに移行した。介入群と統制群それぞれ開始時、1ヵ月後、3ヵ月後のCS-30、片脚立位、転倒セルフエフィカシー、およびSF-8の各項目について、群および時間の主効果ならびに交互作用について検討したところ、 CS-30で群の主効果および交互作用が認められた。運動チェックリストの項目および効果の実感では有意差は認められなかった。3ヵ月後に研究に参加しなかったのは6名で、統制群5名、介入群1名であり、脱落率は統制群35.7%、介入群10.0%であった。 【考察】 TTMに基づいた運動指導は、1ヵ月後の運動実施率が高く、3ヵ月後の脱落率が低かったことから、運動の採択および継続に寄与したといえる。また、CS-30で群の主効果及び交互作用が認められたことから、運動の実施により筋力が維持・向上したと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 指導した運動の実施率を向上させることは、運動の効果を得るうえで重要である。本研究では、地域在住高齢者に対する運動指導に行動科学の理論・モデルを取り入れることで、運動実施率が向上することが明らかとなった。今後、対象を虚弱高齢者や退院前患者に拡大した研究につなげられるものと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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