理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-15
会議情報

ポスター発表
当院における肺切除術に対する周術期呼吸理学療法の効果の検討
年齢による比較検討
市川 崇高橋 温子野中 理絵石川 雄太
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】 周術期呼吸理学療法(以下,CPT)の目的は,入院日数の短縮化,呼吸機能の早期改善,合併症の予防とされている.肺切除術において,CPT介入の重要性は周知されているが,診断群分類包括支払制度(以下,DPC)の導入や医療クリニカルパスの影響により,周術期に理学療法(以下,PT)が関わるという因子だけでは入院日数の短縮化を図ることは困難であるといえる.一方で,呼吸機能の早期改善や術後合併症の予防においては,PTが介入することで改善や予防が図れることは臨床上経験でき,文献等で報告もされている.近年,肺切除術はリスクのある高齢者でも積極的に行われている.そこで本研究は,前期高齢者群(以下,A群)と後期高齢者群(以下,B群)の2群に分け,年齢により呼吸機能改善率や合併症発生率に差があるのか,CPTの効果を比較検討することとした.【方法】 対象は2007年1月から2012年10月までの間,肺癌と診断され,肺切除術を施行した患者に対し,CPTを実施し,手術前後で呼吸機能の測定ができた症例17例とした.症例をA群7例(男6例,女1例),平均67.6±5.5歳(60歳~74歳),B群10例(男9例,女1例),平均78.8±4.1歳(75歳~85歳)の2群にわけ,両群において術前後で呼吸機能をCHEST社製ChestGraph HI-701を使用し測定した.呼吸機能の改善率には術後呼吸機能予測式を用い,(42-切除予定亜区域数/42-閉塞亜区域数)×術前呼吸機能で計算し,術後予測値に対する割合を算出した.調査項目は,年齢,手術までの日数,術前外来PTの回数,入院日数,術後呼吸機能測定までの日数,肺活量(以下,VC)と一秒量(以下,FEV1)の改善率とした.2群間の比較にMann-WhitneyのU検定を用い,結果は中央値(四分位範囲)で示した.統計処理にはSPSS version 19を使用し,有意水準を5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究の主旨および方法に関する説明を行い,同意を得た.【結果】 年齢はA群71.0(10.0)歳,B群76.5(8.3)歳,手術までの日数はA群20.0(9.0)日,B群20.0(13.3)日,術前外来PTの回数はA群5.0(0)回,B群4.0(4.5)回,入院日数はA群10.0(1.0)日,B群10.0(4.8)日,術後呼吸機能測定までの日数はA群8.0(2.0)日,B群7.5(6.0)日,呼吸機能の改善率はVCではA群116.7(51.6)%,B群120.6(53.1)%,FEV1ではA群110.5(45.1)%,B群118.3(43.2)%であり,年齢の項目は2群間において有意差を認めたが,他の調査項目はいずれも2群間において有意差は認められなかった.合併症を生じた症例は,両群を含め全体では2例(5.9%)であり,A群で1例(14.3%),B群で1例(10.0%)であった.【考察】 本研究では前期高齢者と後期高齢者の年齢別による入院日数,呼吸機能改善率,合併症発生率というCPTの効果の差は認められなかった.入院日数の短縮に関しては,DPCの導入,クリニカルパスの使用,術後の早期離床,手術術式の変化,術中麻酔管理の向上,栄養管理の向上などが影響し,さまざまな職種が介入している為,2群間に差が生じなかったと考えられる.呼吸機能改善率に関しては,2群間において有意差は認められなかったが,術後予測値に対する割合は両群ともに100%以上であり,術後の早期呼吸機能改善という目的は年齢による差はなく果たせているのではないかと考えられる.合併症発生率に関しては,術後合併症は5~30%で生じているとされているが,本研究も両群ともにその範疇であった.合併症発生率は,前期高齢者群と比較し後期高齢者群が高いことが予測されたが,2群間に有意差は生じていなかった.このことから,リスクのある後期高齢者群においてもCPTを実施することで術後合併症を予防することができていると考えられる.術後合併症発生に関わる因子としては年齢だけでなく,術前からの低肺機能や既往歴, ADLの低下なども影響していると考えられる.今後はこれらの因子についても検討していきたい.本研究により,高齢でリスクのある肺切除術患者に対してもCPTを実施することにより他の症例と同等の呼吸機能の早期改善,合併症の予防を図ることが期待できると示唆された.【理学療法学研究としての意義】 本研究により,CPTの実施が高齢というリスクのある肺切除術患者に対しても他の症例と同等の効果があり,CPTの重要性を示すことが出来ると考えられる.
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top