理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-09
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一般口述発表
在宅虚弱高齢者に対するfoam rubberを用いたバランストレーニングの有効性
ランダム化比較試験での検証
平瀬 達哉松坂 誠應井口 茂沖田 実
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抄録
【目的】高齢者の転倒予防にはバランス能力の改善が重要とされ、様々な運動プログラムが報告されている。スポーツ医学領域ではankle discなど不安定面での立位トレーニングがバランス能力改善に有効とされている。一方、厚みのある泡沫状ゴム(foam rubber)上での立位保持は、ゴムによる不安定面のため足底や下肢固有受容器からの感覚入力が姿勢安定性を高めるといわれている。そこで、foam rubberを用いたバランストレーニングは、foam rubberを使用しないトレーニングに比べ、高齢者のバランス能力改善に有効で、効果も早期に発現するという仮説を立てた。本研究の目的は上記仮説をランダム化比較試験で検証することである。【方法】対象は、通所介護利用中の屋内歩行が自立した65歳以上の在宅生活者で、転倒高リスク者(鈴木らの転倒アセスメント≧5点)とした。各事業所内で対象者を、バランストレーニングをfoam rubber(50cm×40cm×厚さ6cm)上で行う群(rubber使用運動群)、同じトレーニングを安定面で行う群(rubber非使用運動群)、通常のデイサービス活動のみを行う対照群の3群にランダムに振り分けた。ランダム化の方法は封筒法を用いた。運動プログラムの実施は事業所での運動1回/週とホームエクササイズ4回/週とし、4ヶ月間継続した。運動内容はウォームアップ10分、バランス運動30分(片脚立ち・踵つま先立ち・その場足踏み・横歩きなど10種類)、クールダウン10分である。ホームエクササイズは1回/日10分程度の運動(片脚立ち・踵つま先立ち・その場足踏み)とし、rubber使用運動群は家庭でもfoam rubberを用いた。評価項目として転倒リスク数、転倒恐怖(FES)を介入前後に評価し、体力評価(開眼片脚起立時間、椅子起立時間、Timed Up and Go test(TUG)、タンデム肢位時間)を介入前と介入後1ヶ月毎(1M,2M,3M,4M)に測定した。分析は、3群間での介入前、介入後1ヶ月毎の評価項目の比較を行い、有意差を認めた場合、多重比較検定を行った。【倫理的配慮】対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明し同意を得た。本研究は長崎大学医歯薬学総合研究科倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】対象者の条件を満たし同意が得られた症例はrubber使用運動群32名、rubber非使用運動群31名、対照群30名の93名で平均年齢は82歳であった。介入前の3群間比較では、対象者の属性、評価項目の全てにおいて有意差を認めなかった(p>0.204)。介入中の中止例はrubber使用運動群3名、rubber非使用運動群2名、対照群2名であり、脱落率に有意差を認めなかった(p=0.887)。出席率はそれぞれ95.5%、93.8%、91.2%であり(p=0.203)、ホームエクササイズ実施率はrubber使用運動群で平均3.5回/週、rubber非使用運動群で3.4回/週であった(p=0.749)。介入後の体力変化において、対照群に比べrubber使用運動群ではTUG、タンデム肢位時間、開眼片脚起立時間が1M以降で有意に改善していた。また、rubber非使用運動群ではタンデム肢位時間と開眼片脚起立時間が対照群に比べ4Mで有意に改善していた。これらのうち、rubber非使用運動群に比べrubber使用運動群が改善していたのは、2M~3M時の開眼片脚起立時間とタンデム肢位時間であった。椅子起立時間は、rubber使用運動群および非使用運動群ともに2M以降で有意に改善し、両群間に有意差はなかった。転倒リスク数とFESは介入終了時にrubber使用運動群で有意に改善していた。【考察】本研究では、バランストレーニングによる介入でrubber使用運動群および非使用運動群ともに体力の有意な改善を認めたが、rubber使用運動群と非使用運動群の間に改善の違いを認めた。すなわち、バランス能力指標である開眼片脚起立時間とタンデム肢位時間は、2M~3M間、rubber使用運動群が有意に良好であり、4M時には2群間に有意差が見られなくなった。つまり、rubber使用運動群では、非使用運動群に比べ2ヶ月早くバランス能力が改善したことになる。foam rubberを用いることで足底や下肢固有受容器からの感覚入力が増加し姿勢安定性を高めたことが早期のバランス能力改善をもたらしたと考える。一方、下肢筋力指標である椅子起立時間はrubber使用運動群と非使用運動群ともに2Mで改善していた。従って、バランストレーニングは高齢者のバランス機能だけでなく下肢筋力の改善に寄与すると考える。【理学療法学研究としての意義】本研究は、在宅虚弱高齢者においてfoam rubberを用いたトレーニングのバランス能力に対する早期からの効果を立証した意義ある研究と考える。また、今回のトレーニングは脱落率や出席率も良好であったため、地域で実践する安全かつ介入期間の短縮につながる効率的なトレーニングとして寄与すると思われる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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