理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-09
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一般口述発表
前頭前野における認知機能の違いが日常生活における活動性および自己効力感に与える影響
‐デイサービスに通う要支援・要介護者からの検討‐
小枩 武陛岩城 隆久大西 智也
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抄録
【はじめに、目的】高齢者の転倒経験が日常生活における活動範囲に影響し、その因子として自己効力感が影響することが知られている。我々の研究において転倒は行動範囲の狭小化と視覚刺激によるGo/no-go testやProbe reaction testの足関節背屈反応時間と関係していることを報告した。また、この筋電図反応時間測定(premotor time)の遅延から前頭前野の機能が関与していることを示唆した。Go/no-go testは反応抑制機能、Probe reaction testは注意分配機能を示すものであり、要支援・要介護者において両課題の反応時間には個人内の優先性があることがわかった。この優先性の違いから生じる日常生活について把握することで、要支援・要介護者の認知機能特性を理解し、転倒予防に寄与することができると考える。そこで本研究は視覚刺激によるGo/no-go testとProbe reaction testの足関節背屈反応時間測定から個人内の優先性に応じた群分けを行い、認知機能の違いが日常生活における活動性や自己効力感にどのような影響を与えるのか検討した。【方法】対象者はデイサービスセンターに通う要支援・要介護者24名、男性18名、女性6名(年齢:77.4±6.9歳)である。取り込み基準は歩行可能でかつ認知症が認められない者とした。Go/no-go testとProbe reaction testによる反応時間測定を行い、その結果から個人内優先性に応じた群分けを行った。反応時間の測定はLED刺激装置MaP1940LSD(ニホンサンテク株式会社)と無線筋電計DAB-Bluetooth Measuring System(zebris medical GmbH)を同期させ、パーソナルコンピュータ(Endeavor NJ2050)を用いて記録した。発光ダイオードを感覚刺激とし、素早く足関節背屈運動を行う時間を測定した。反応時間(reaction time:RT)は刺激信号から筋活動電位の開始までの潜時(premotor time:PMT)と筋活動電位の開始から実際の運動開始までの潜時(motor time:MT)とした。導出筋は前脛骨筋とした。日常生活における活動性などについて、痛みの有無、老研式活動指標、一般性自己効力感(GSES)を調査した。統計学的分析としては独立した2群の差の検定を調査項目ごとに行った。危険率は5%とし、統計ソフトはSPSSver.18用いた。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、本研究の目的、測定内容などを文章および口頭によって説明し、書面での研究参加の同意を得た。尚、本研究は中部学院大学倫委員会の承認(E12-0003)を得て実施した。【結果】GSESはGo/no-go test群:49.42±8.8、Probe reaction test群:41.42±7.4で有意な差を示した(P<0.024)。痛みの有無、老研式活動指標での有意差は認められなかった。【考察】本研究における2群間の比較においてGSESのみ有意な差を示した。GSESは一般的な日常生活における自己効力感の程度を示す指標である。岩城らはFunctional reach testやTimed Up and Go testの見積もり誤差とGSESに関係性があり、GSESの低いは自己能力を過小評価し、高いと過大評価することを示していると報告している。本研究からはProbe reaction test群のGSESは低く、日常生活や見積もり誤差において過小評価するタイプであると推察できる。他方Go/no-go test群のGSESはProbe reaction test群よりも高く、積極的に課題に取り組むタイプであると言える。若年者を対象とした本研究と同じGo/no-go testとProbe reaction testについて、個人内におけるProbe reaction test の反応時間のほうがGo/no-go testより速い反応を示す。本研究は、反応時間課題の認知的特性から自己効力感の違いが影響することがわかり、Go/no-go test群は「できると思ったができなかった」というような自己過大認知による転倒を生じさせる可能性があると示唆される。また、Probe reaction testよりもGo/no-go testが高齢者の認知機能を反映し、その結果が自己効力感や生活活動範囲の推察にも役立つものと思われる。今後、日常生活においては環境下における判断と反応において抑制機能を鑑みた介入が必要であると思われる。【理学療法学研究としての意義】高齢者の前頭前野の機能低下が転倒に影響を与えることが知られているが、本研究から反応抑制機能の低下か、注意分配機能の低下か判別して評価する必要性があり、特に抑制機能の低下を適切にとらえることで、運動療法と認知機能における介入方法を効率的かつ選択的に行い、日常生活活動に適応できると思われる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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