理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: F-P-02
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ポスター発表
振動刺激が膝関節伸展運動時の筋活動量および筋出力に及ぼす影響
中林 紘二中川 佳郁水野 健太郎松本 典久藤本 一美甲斐 悟
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抄録

【はじめに、目的】様々な下肢関節のアライメント異常により、膝蓋大腿関節の障害が引き起こされる。その原因の一つとして外側広筋の過剰な筋活動が知られている。運動療法に関しては、外側広筋の筋活動を抑制しながら、内側広筋の筋活動を促進することが重要であると考えられている。先行研究では、筋電図を用いたバイオフィードバックやテーピングを利用して、内側広筋を選択的に収縮させる方法が報告されている。一方で、骨格筋に対して持続的な振動刺激を負荷すると、その筋の筋緊張が抑制されることや、筋活動量および筋出力が低下することが報告されている。そのため、振動刺激を併用した膝関節伸展運動は効果的な運動療法になると考えられるが、そのような報告は、我々の知る限りでは見当たらない。そこで本研究の目的は、外側広筋に対して選択的に振動刺激を負荷した際の膝関節伸展運動時の筋活動量および膝関節伸展筋力の変化について明らかにすることである。【方法】対象は、下肢に整形外科的疾患および神経学的疾患の既往のない健常男性10名(平均年齢26.8±9.2歳、平均体重62.9±6.6kg)とした。等速性筋力測定装置(Humac Norm、CSMi社製)を用いて膝関節伸展筋力を測定した。等速性運動の角速度は毎秒60度、運動範囲は膝関節屈曲90度から膝関節伸展0度までとした。膝関節伸展筋力の測定は5回行った。各試行における最大値を体重比百分率(%)に換算し、その平均値について比較を行った。また、5回のうちの最大値を膝関節最大伸展筋力として比較を行った。表面筋電図測定装置(EMGマスター、小沢医科器械社製)を用いて等速性運動時の筋の活動電位を導出した。被検筋は右側の外側広筋、内側広筋、大腿直筋とした。十分な皮膚処理を行った後、電極を筋線維と平行になるように貼付した。筋活動量は、各試行における膝関節伸展運動時の積分値(以下、IEMG)を算出し、その値を最大随意収縮時の積分値で除して正規化を行い%IEMGとした。膝関節伸展運動5回の平均値および膝関節最大伸展筋力発揮時の1試行について比較を行った。また、外側広筋に対する内側広筋の%IEMGの比率も算出し比較を行った。振動刺激装置(Handy vibe、大東電気工業製)を用いて、外側広筋に周波数76.6Hz、振幅2mmの振動刺激を30分間行った。振動刺激前後の値について統計学的検討を行った。膝関節伸展筋力および%IEMGの比較では、Bartlett検定にて等分散を確認した後に二元配置分散分析を行い、統計学的に有意な差を認めた場合にはpost hoc testとしてTukey-Kramer法を行った。膝関節最大伸展筋力およびその際の%IEMGの比較にはWilcoxonの符号付順位検定を行った。なお、すべての有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、全ての対象者には事前に本研究内容やリスク、参加の自由などの倫理的配慮について口頭および文書にて説明した。その上で研究への協力を求め、同意書に署名および捺印を得た。【結果】膝関節伸展運動時の外側広筋と大腿直筋の%IEMGは、振動刺激後で低値であった(p<0.05)が、内側広筋では有意な差は認めなかった。外側広筋に対する内側広筋の%IEMG比は、振動刺激後に増加した(p<0.01)。膝関節最大伸展筋力発揮時の外側広筋の%IEMGは、振動刺激後で低値であった(p<0.05)が、大腿直筋および内側広筋では有意な差は認めなかった。また、膝関節伸展筋力および膝関節最大伸展筋力は、振動刺激前後で有意な差は認めなかった。【考察】今回、選択的に振動刺激を負荷した外側広筋において、膝関節伸展運動時および膝関節最大伸展筋力発揮時の%IEMGが低下した。振動刺激を負荷しなかった内側広筋においては%IEMGの変化は認めなかった。また、外側広筋に対する内側広筋の%IEMG比は増加した。IEMG解析は筋活動の量的評価とされていることから、外側広筋に対して振動刺激を負荷することで、運動時の外側広筋の筋活動が抑制され、内側広筋の筋活動が促進されたことが明らかとなった。また、振動刺激後の膝関節伸展運動時の%IEMGが低下したことから、筋力増強運動のように反復する運動においても、運動時の筋活動量の低下を維持することが可能であることが示唆された。そのため、振動刺激を併用した膝関節伸展運動は、膝蓋大腿関節障害に対する効果的な運動療法になると考えられる。今回、膝関節伸展筋力および膝関節最大伸展筋力については変化を認めず先行研究と異なる結果となった。これには振動刺激装置が異なることや振動刺激を負荷する部位の違いが影響していると考えられるため、今後さらに検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】振動刺激を負荷することで、運動時の筋活動量が変化することが確認できた。今後研究を進めることで、振動刺激を併用した筋力増強運動は、膝蓋大腿関節障害に対する効果的な運動療法となり得る。

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© 2013 日本理学療法士協会
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