理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: F-P-02
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ポスター発表
高電圧パルス波と二相性パルス波が大腿四頭筋の筋収縮に与える影響について
小森 清伸和田 菜都生庄本 康治
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抄録
【はじめに,目的】近年,運動療法実施困難な重度心不全症例に対する電気刺激(NMES) による筋力増強が実施,報告されている.波形は二相性パルス波(BPC)が多く,BPCは筋収縮を引き起こすのに優れているが,心不全症例では四肢に重度な浮腫を呈する症例が多い.このような症例に対してBPCを実施すると,疼痛によって十分な筋収縮を得られない場合を経験する.一方,高電圧パルス電流(HVPC)は皮膚インピーダンスを低下させ,不快感が少ない波形であると言われ,創傷治癒などを目的に実施される場合が多い.HVPCはBPCと比較して疼痛が少ない可能性があるが,健常人で調べた研究はない.そこで,BPCとHVPCを使用して,出来る限り強い電流強度での最大筋収縮力と疼痛に差異があるか,筋疲労に与える影響に差異があるかを明らかにすることを本研究目的とした.【方法】下肢に既往歴のある者,生体内電気刺激装置装着者,NMESに耐えることができない者を除外した運動習慣のない健常大学生男女5名ずつ,合計10名(平均年齢21.9±0.74歳)を対象とした.BPC機器としてIntelect Advanced Combo(Chatanooga),HVPC機器としてASPIA(日本メディックス),筋力測定機器としてBiodex system3(Biodex)を使用した.双方の刺激とも,周波数80pps,パルス持続時間300μsec,Duty cycle 10sec on/30sec offとした.電極貼布は,大腿神経,内側・外側広筋,大腿直筋のモーターポイントとした.また,大腿神経・外側広筋のモーターポイントをCh1,大腿直筋・内側広筋のモーターポイントをCh2とし,HVPCでは大腿神経・大腿直筋をプラス極,内側広筋・外側広筋をマイナス極とした.すべての筋収縮力測定は膝関節屈曲60度での等尺性筋力とした.最初に対象者10名の両大腿にBPCとHVPCをランダムに割り付けた.研究開始時には剃毛し,酒精綿で皮膚の汚れを十分に落とし,皮膚インピーダンスを低下させ,大腿神経とモーターポイントを同定した.5日目までを順応期間とし, NMESを10分間実施,対象者が耐えられる最大電流強度を調節しながら決定した.同一日に両側大腿四頭筋の等尺性随意最大筋力(MVIC)を測定した.6から11日目は遅発性筋痛(DOMS)を取り除くための休息期間とした.12日目に上記設定で,最大電流強度で刺激し,各々の最大筋収縮力を3回ずつ測定した.測定終了時には,刺激時の疼痛をVisual Analogue Scale(VAS)で測定し,内省報告で把握した.さらに2時間の休息後に,筋疲労測定を目的に,最大筋収縮力の50%出力を発揮する電流強度で,16回の刺激を実施し,最終時の筋収縮力と初回時筋収縮力の比を筋疲労として算出した.BPC,HVPCの最大筋収縮力,疼痛,筋疲労に差異があるかを対応のあるt検定,また,BPC,HVPC 1パルス当たりの電荷量を算出し,対応のあるt検定で解析した.【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者の保護には十分留意して実施した.全対象者には本研究の趣旨と目的を説明し,自署による同意が得られた後に実施した.畿央大学大学倫理委員会の許可を得た上で実施した.【結果】両側のMVICには統計学的有意差はなかった(P=0.9).さらに,最大筋収縮力(P=0.73),疲労(P=0.77),疼痛(P=0.87)ともにBPCとHVPC間で有意差はなかった.電流強度はBPCで39~80mA,HVPCで165~400mAであり,1パルス当たりの電荷量を2群間で比較すると,有意にHVPCが高かった(P=0.0002).内省報告では,HVPCで,内・外側広筋電極下(マイナス電極)での痛みが強いと全対象者が訴えていて,さらに,双方ともに筋収縮時に痛いという訴えが多かった.【考察】疼痛が少ないといわれているHVPCとBPCを比較すると,筋収縮力,筋疲労,疼痛に有意差はなかった.また,内省報告ではHVPC時の対象全員が,マイナス電極下での疼痛を訴えている.これは,HVPCの単相によってマイナス電極下にアルカリ反応が起こり,弱酸性を保っている正常な皮膚が刺激されたためと考える.一方,BPCは二相性であり,極端なイオン化が起こらず,皮膚への刺激が少なかったと考察した.また,1パルス当たりの電荷量を比較するとHVPCで有意に電荷量が高かった.従って,HVPCで強い電流強度で刺激すると,BPCと比較して皮膚損傷を起こしやすくなると考えた.電荷量を多く提供しても筋収縮に差異がない理由は不明であるが,いずれにしても,筋力増強を目的にNMESを実施するときには,BPCの方が安全であると考えた.しかし,心不全症例のように重度の浮腫を呈する症例で同様の結果が得られるかは不明であり,検討してみる必要性がある.【理学療法学研究としての意義】疼痛が少ないと言われているHVPCとBPCを比較したが,筋収縮力,筋疲労,疼痛に差異はなかった.皮膚損傷のリスクを考慮すると筋力増強目的にはBPCのリスクが少ないことが示唆された.しかし,浮腫を呈する症例で同様の結果を呈するかは不明であり,今後の研究が必要である.
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© 2013 日本理学療法士協会
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