理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: F-P-02
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ポスター発表
骨格筋へのキセノン光照射が筋伸張性に及ぼす影響
齋藤 茂樹吉田 英樹前田 貴哉岡本 成諭子佐藤 菜奈子佐藤 結衣
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抄録
【はじめに、目的】骨格筋への直線偏光近赤外線照射が筋伸張性を向上させるとの報告があり、その背景として近赤外線が有する温熱作用と非温熱作用(光作用)の両者の関与が指摘されている。キセノン(Xe)光は近赤外線波長帯域の光線に富み,直線偏光近赤外線と同様の効果が期待出来ると予想されるが,骨格筋へのXe光照射が筋伸張性に及ぼす影響について検討した先行研究は皆無である。本研究の目的は,骨格筋へのXe光照射が筋伸張性に及ぼす影響について検討することとした。【方法】若年健常者13例(男性10例,女性3例,測定脚26例,年齢21.6±1.0)を対象とし,以下の2つの実験を実施した。<実験1>対象者は5分の安静腹臥位保持(馴化)終了後,同一肢位にて両側の下腿三頭筋筋腹へXe光照射を10分間受ける。<実験2>対象者は馴化終了後,Xe光照射を伴わない安静腹臥位保持(コントロール:CON)を継続する。測定及び分析項目について,本研究では筋伸張性の指標として安静腹臥位での足関節背屈角度(背屈角)および下腿三頭筋の筋硬度に加えて,下腿三頭筋の筋血流量に注目した。背屈角については,Xe光照射及びCON前後に足関節背屈を他動運動で3回実施し,1回の他動運動ごとに矢状面上で撮影されたデジタル画像から画像処理ソフト(ImageJ 1.43u,NIH)を用いて背屈角を測定した。その上で,Xe光照射及びCON前後での背屈角の平均値を対応のあるt検定により検討した。なお,他動運動時の外力については,予めハンドヘルドダイナモメーター(アイソフォースGT-310,OG技研)を用いて他動での背屈運動が最終域に達したときの値を記録し,Xe光照射及びCON前後の背屈角の測定でも該当する値を運動終了の指標とした。筋硬度については,筋硬度計(NEUTONE TDM-NA1,TRY-ALL)を用いて下腿近位1/3の筋腹を圧迫点としてXe光照射及びCON前後に各5回測定し,最大値と最少値を除いた平均値を算出した。その上で,Xe光照射及びCON前後の値をWilcoxonの符号付順位和検定により検討した。下腿三頭筋の筋血流量については,筋血流量の指標として酸化ヘモグロビン量(oxy-Hb)を採用し,近赤外線分光分析装置(OEG-16,Spectratech)を用いて各実験実施中に連続で測定した。その上で,各実験とも馴化中のoxy-Hbの平均値を基準値とし,Xe光照射及びCON実施中のoxy-Hbの2分毎の計5区間(0~2分,2~4分,4~6分,6~8分,8~10分)の平均値の基準値からの経時的変化をDunnettの検定を用いて検討した。全ての統計学的検定の有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者に対して本研究の目的や本研究への参加同意及び同意撤回の自由,プライバシー保護の徹底等について予め十分に説明し,書面にて同意を得た。【結果】背屈角については,CONに伴う明らかな変化を認めなかったが,Xe光照射に伴う有意な増加を認めた。筋硬度については,Xe光照射及びCONの両者に伴う有意な低下を認めた。筋血流量については,CON実施中での明らかな変化を認めなかったが,Xe光照射実施中では前述の5区間全てにおいて有意な増加を認めた。【考察】筋血流量の結果は,Xe光が下腿三頭筋まで十分に到達した結果,Xe光の温熱作用や光作用による筋内血管拡張や血液粘性低下に伴う筋血流動態の促進を反映していると考えられ,Xe光の筋伸張性に及ぼす影響を論ずる際の基礎的所見と考えられる。背屈角の結果は,Xe光の温熱作用により下腿三頭筋の粘弾性が低下した結果,筋伸張性が向上したことを反映していると考える。これに加えて,Xe光の光作用によるα及びγ運動ニューロンの活動抑制に伴う下腿三頭筋の筋緊張低下の関与も推察される。一方,筋硬度については,Xe光照射だけでなくCONによっても低下していた。これについては,先行研究において腹臥位によりリラックス感が高まるとの指摘があり,本研究でも対象者が各実験中に腹臥位をとることでリラックスした結果,CONであっても筋緊張が低下し,筋硬度も低下したのではないかと推察する。しかし,Xe光照射の場合の方が,前述の温熱作用や光作用により筋の粘弾性や筋緊張低下の程度がより大きかった可能性があり,このことがXe光照射とCONとの間での背屈角の差につながったものと推察する。【理学療法学研究としての意義】本研究結果は,骨格筋へのXe光照射が筋伸張性の向上に加えて筋血流動態を促進し得る可能性を示している。このことは,ストレッチングの前処置や筋原性疼痛などへのXe光照射適用の可能性を示唆するものであり,今後の発展性や臨床への波及効果などの観点から意義深いと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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