理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-08
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一般口述発表
加齢と反応上肢が到達運動課題中のフィードバック関連電位に及ぼす影響
平井 達也
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抄録
【はじめに、目的】外在的エラーフィードバック(FB)の検出を反映するFB関連電位(FRN)は,エラーの発生に伴い陰性方向に発達する事象関連脳電位(ERP)の成分である.近年,高齢者を対象に認知学習とFRNとの関連が報告されているが(Eppinger, 2008),運動学習課題は使用されていない.また,空間情報と運動感覚情報の統合を要求する新規な運動課題中には右後頭頂領域が活動すること(Ghilardi,2000)が報告されており,もし,このような活動が課題に応じて特異的に生じるならば,左右の使用肢に関わらず,エラー処理に続く右半球の活動が観察される可能性がある.以上のことから,本研究の目的は,運動学習課題を使用し加齢と反応上肢がフィードバック関連電位に及ぼす影響を検討することである.【方法】対象は右利きの健常な若年者12 名(平均年齢21.8 ± 2.3 歳)および高齢者12 名(70.2 ± 4.7 歳, MMSE 25 点以上)であった.実験用の到達運動装置には3 つの開始ボタンと49 個の到達ボタンが設置され,指定された1 つ開始ボタンから到達ボタンの中央の標的を正確に押すよう求められた.FB板により到達ボタンは見えないように遮られた.また,FB板には到達ボタンの位置に対応したLEDが設置され,到達ボタン押し1 秒後に1 秒間LEDが点灯しFBが与えられた.脳波はFz,Cz,C3,C4 から導出し,標的押し成功と失敗のERPを加算平均処理した.失敗ERPから成功ERPを減じてFRNを同定した.統計処理は混合要因分散分析を用いた(p < 0.05).【倫理的配慮、説明と同意】対象者全員に本研究の主旨と倫理的配慮について説明し署名にて同意を得た.【結果】標的押しの平均成功率(±標準偏差)は若年者右手使用時59(± 14)%,左手使用時51(± 14)%,高齢者右手使用時55(± 16)%,左手使用時44(± 20)%であった.年齢(若年,高齢)×使用肢(右手,左手)の分散分析の結果,年齢と使用肢の主効果および交互作用はいずれも有意ではなかった.到達運動に使用した左右の手に関わらず,若年者のFRNはFB後200 −300 msに1 つの陰性頂点が見られた.高齢者のFRNではFB後160 ms付近と280 ms付近に陰性頂点があり,二峰性の波形を示した.平井(2012)に従い160 −200 ms,210 −250 ms,260 −300 msの3 区間に分け,それぞれ初期FRN,中期FRN,後期FRNとし実験参加者毎に区間平均電位を算出した.若年者は中期FRNの平均電位を,高齢者については初期および後期FRNを分析対象とした.若年者の中期FRNの平均電位を用いた使用肢(右手,左手)×電極部位(Fz,Cz,C3,C4)の分散分析の結果,使用肢,電極部位ともに有意な主効果はなく,交互作用のみ有意であった(p < 0.05).しかし,いずれの単純主効果も有意でなかった.高齢者の初期FRNでは,使用肢と電極部位の主効果および交互作用はいずれも有意ではなかった.後期FRNでは,電極部位のみに有意な主効果があり(p < 0.01),この主効果に続く多重比較の結果,C4 における陰性電位がC3(p < 0.01) およびCz(p < 0.05)より有意に大きかった.使用肢の主効果,交互作用は有意ではなかった.【考察】高齢者は処理速度が遅いため(Salthouse, 2000),若年者で得られた一峰性FRNの成分が分離し二峰性として観察されたと推測された.高齢者の初期FRNは前頭中心部に比較的高い電位を示し,エラーの検出を反映していたと推測された.後期FRNでは,課題遂行時の使用肢に関わらず右半球C4 領域においてのみ有意に陰性電位が発達した.このことは,後期FRNは使用肢の運動皮質の賦活に由来するものではないことを示し,エラー検出に続く右半球の活動を反映する可能性を示している.Ghilardi (2000)の知見に従うと,右中心部(C4)で観察された後期FRNは,エラーFBに応じて右半球で実行される到達運動学習時の自己受容的な運動感覚と心的なボタン位置空間情報の統合処理を反映した可能性がある.【理学療法学研究としての意義】本研究で示された結果は,加齢がエラーFB処理に影響を与えることおよび到達運動課題中のエラー検出に続く空間運動統合の処理が右半球で生じることを示唆し,高齢者や脳損傷後のリハビリテーションに有益な情報を提供すると考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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