抄録
眼窩下壁吹き抜け骨折の外科的治療には,経上顎洞法,経眼窩法,鼻内法,あるいはこれらの併用が主に報告されている。当科では2009年から経上顎洞法と経眼窩法を併せたcombined approachによる整復術を採用している。経上顎洞法は従来通り,犬歯窩切開から上顎洞前壁を開窓し,内視鏡下に眼窩内容物および下壁を押し上げる形で整復する。経眼窩法は下眼瞼を睫毛下で切開し,眼窩中隔上を剥離,眼窩下壁骨膜に到達し眼窩内容物を引き上げる形で整復する。従来から,経眼窩法は眼窩下壁前方の骨折には有効であるが,後方の骨折には効果は限定的と言われている。combined approachはこの弱点を克服し,審美的にも優れた整復法と考えられる。本論文では最近経験した2例を中心に,当科で施行しているcombined approachについて報告する。