育種学研究
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原著論文
イネ系統「北海PL9」の穂ばらみ期耐冷性に関するQTLの検出
黒木 慎斎藤 浩二松葉 修一横上 晴郁安藤 露佐藤 裕安東 郁男清水 博之
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2011 年 13 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

イネ系統「北海PL9」(穂ばらみ期耐冷性が極強)と「北海287号」(やや強)の組換え自殖系統群を用いて,穂ばらみ期耐冷性に関する量的形質遺伝子座(quantitative trait locus: QTL)解析を行った.穂ばらみ期耐冷性は冷水深水処理後の稔実率の逆正弦変換値(稔実指数)で評価した.その結果,既報の穂ばらみ期耐冷性QTL, qCTB8と同じ第8染色体短腕領域にqCTB8.1を検出したのに加えて,新たに第1染色体に2種類のQTL, qCTB1.1およびqCTB1.2を検出した.いずれのQTLにおいても「北海PL9」の対立遺伝子が稔実指数を増加させ,組換え自殖系統群の全変異に対する寄与率はそれぞれ14.2( qCTB8.1),18.8(qCTB1.1)および11.8%(qCTB1.2)であった.さらに,穂ばらみ期の耐冷性評価に大きく影響を与える形質である出穂期および稈長についてもQTL解析を行い,出穂期に関しては第2および第3染色体に,稈長については第1,第2,第3(3ヶ所),第8,第9(2ヶ所)および第11染色体にQTLsを検出した.出穂期および稈長に関するQTLの染色体上での位置は,穂ばらみ期耐冷性QTLとは一致しなかった.検出された穂ばらみ期耐冷性QTLsの集積効果を明らかにするために,3種類のQTLsの遺伝子型別に稔実指数を比較したところ,「北海PL9」型対立遺伝子に稔実指数を相加的に向上させる効果が認められた.

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© 2011 日本育種学会
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