理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-19
会議情報

ポスター発表
人工股関節全置換術後患者の骨盤傾斜角と運動機能との関係
上村 明子赤崎 卓哉原 光一郎岩川 良彦橋口 円俵積田 光宏福迫 剛砂原 伸彦酒瀬川 恵美宮崎 雅司榊間 春利
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】股関節外転トルクは骨盤に広い起始部、大腿骨に停止部を有し、骨盤傾斜によりトルク発揮に影響を及ぼすことが考えられる。一般に、人工股関節全置換(THA)術患者の骨盤傾斜角(Pelvic Inclination Angle: PIA)は術後後傾位に変位すると報告されている。しかしながら、THA術後のPIAと股関節外転筋力などを含めた運動機能との関係について検討した報告はほとんどない。本研究の目的は、1)THA術後15週までのPIAや運動機能の変化を調べること、2)術後のPIAが股関節外転筋力や歩行能力に及ぼす影響を検討すること、3)術前PIAが術後の股関節外転筋力や歩行能力の予測因子となるかどうか調べること、とした。【方法】対象は一側性の変形性股関節症により初回THAを施行した女性患者36名(67.9±10.0歳)とした。評価項目を疼痛、股関節外転筋力、歩行能力、骨盤傾斜角とした。疼痛の評価はVisual Analogue Scale (VAS)を使用した。術側・非術側の外転筋力を徒手筋力計(アニマ社製μ-TasF1)を用いて等尺性筋力を測定した。筋力値は、トルク体重比(Nm/kg)にて算出し、外転筋力比(術側/非術側)を比較検討した。歩行能力はTimed up and go (TUG)テスト、10m歩行速度を評価した。PIAは土井口ら(1992)の方法により、整形外科医の処方により撮影された臥位単純股関節正面X線画像で、骨盤腔の最大横径(T)と両仙腸関節の下縁を結ぶ線に恥骨結合から垂線を下ろしたその縦径(L)の比率(L/T)を計測し回帰式(PIA(°)=-69×L/T+61.6)に代入することで求めた。PIA20°未満を前傾群、20°以上30°未満を中間群、30°以上を後傾群として3群に分類した。評価は術前、術後1週、7週、15週に行った。各時期での比較は一元配置分散分析を用いた。さらに、術前のPIA分類による術後の回復経過は二元配置分散分析を用いて比較し、有意差の見られた項目において一元配置分散分析を用い多重比較検定を行った。また、外転筋力比とPIAの関係をピアソンの相関係数を用いて検討した。いずれの検定も統計学的有意基準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は当院の倫理委員会の承認を受け、各対象者には研究参加に対する同意を得て実施した。【結果】VASは、術後7、15週で有意に低値を示し、15週には、疼痛を訴える患者はいなかった。股関節外転筋力は術後7、15週で術前と比較して有意に改善した。しかし、反対側と比較すると有意に減少していた。歩行速度は術後1週に術前と比較して有意に減少したが、7週以降有意に改善した。TUGテストは術後7、15週時に術前と比較して有意に改善を示した。術後PIAの経時的変化に関して、術前と比較し、術後1週で一旦前傾位となったが、その後後傾位に変化した。疼痛の訴えが強い術前、術後1週ではPIA分類による違いは認められなかった。術後7、15週におけるPIA分類では、前傾群あるいは中間群と比較して骨盤後傾群が有意に外転筋力比・TUGテストが低値であった。術前のPIA分類においても同様に骨盤後傾群の外転筋力比・TUGテストが有意に低値を示した。また、術後15週において外転筋力比とPIAに有意な相関が認められた(r=-0.384,p<0.05)。【考察】山田ら(2004)は、健常若年女性において股関節外転トルクが骨盤前傾・後傾位では中間位と比べ有意に減少すると報告している。今回、THA術後患者において、骨盤後傾群が有意に外転筋力の低値を示し、前傾群の外転筋力比が高値を示した。これは、手術介入や年齢などの要因が関係し、健常若年者の結果と異なったのかもしれない。股関節外転筋力は歩行中の骨盤の安定化に寄与し、THA術後の筋力低下は跛行の原因となる。今回、骨盤後傾群のTUGテストの回復が遅かったことは、立脚相における外転筋群の発揮が不十分となったことや、骨盤の安定性を得られなかったことが考えられる。術前のPIA分類と術後7、15週でのPIA分類における股関節外転筋力比やTUGテストにおいて、骨盤後傾群が前傾群や中間群と比較して有意に低値を示したことは術前に骨盤が後傾している患者の外転筋力や歩行能力の回復が遅延することを示している。今回の結果は術前PIAが術後早期の外転筋力や歩行能力の予測因子となることを示唆している。【理学療法学研究としての意義】我々の研究はTHA術後早期のPIAと疼痛、股関節外転筋力、歩行能力の関係を明らかにした。THA術後の理学療法を進める上で有用であると思われる。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top