理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-O-03
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一般口述発表
高齢者疑似体験キッド装着における歩行時の身体的・心理的負担度
古賀 信太郎松田 保
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抄録
【はじめに、目的】 高齢者疑似体験キッド(以下:キッド)は健常人が簡便に高齢者体験を行うことができることから,あらゆる教育分野に用いられている.また,このキッドを実際に用いた研究も数多くみられる.しかし,身体的負担度として10m歩行やPhysiological Cost Index(以下:PCI),心理的負担度として注意需要の指標であるプローブ反応(以下:P-RT)を用いた研究はみられない.したがって,この研究の目的は健常成人男性がキッド装着において歩行時に及ぼす身体的負担や心理的負担について考察することである.【方法】 健常成人男性15名(平均年齢:21.9±0.8歳,平均身長:172.6±6.8cm,平均体重:66.3±6.8kg)を対象とする.キッドは京都科学社製の「おいたろう」を使用した.10m歩行課題では,快適歩行による歩行時間,歩数を測定し快適歩行速度[m/min],歩幅[m],歩調[steps/min]を算出した.PCIでの課題では,1周20mの路面を8の字で3分間の快適歩行を行わせた.測定項目は運動時心拍数と安静時心拍数の差[beats/min](以下△HR),平均歩行速度[m/min],PCI[beats/min](=△HR/平均歩行速度)とした.なお,心拍数測定にはハートレートモニター(POLAR製S810i)を使用した.また,安静座位をとらせ5分後の値を安静時心拍数とし,歩行開始3分後の値を運動時心拍数とした.P-RTは10m区間で快適歩行を行わせ,各区間に1度,ヘッドフォンから“ヨーイ”の予告合図がなり,その2~3秒後に“ピッ”という電子音を感知したらできるだけ早く“パァ”と発声させ,これを10セット行った.反応時間の機器構成では携帯式音刺激装置(SONY製WALKMAN)と録音装置のICレコーダー(SONY製ICD-UX70)を使用し,集音したデータはサウンド処理ソフトDigionSound6を用いてデータ分析を行った.各課題での統計処理では2群間での測定値を比較するために対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は国際医療福祉大学倫理委員会の承認を受け,対象者への研究内容説明と同意を得た.【結果】 10m歩行における歩行速度,歩幅,歩調はそれぞれ,未装着時で83.59±6.54m/min,0.67±0.04m,123.95±8.13steps/min,装着時で78.22±10.14m/min,0.65±0.05m,120.01±10.70steps/minとなりすべての項目で有意差(p<0.05)を認め,装着時に歩行能力の低下が認められた.PCIにおける△HR,平均歩行速度,PCI値はそれぞれ未装着で20.78±7.76 bts/min,0.33±0.14bts/m,63.49±10.71 m/min,装着時で23.56±7.52 bts/min,0.41±0.12 bts/m,57.83±11.89 m/minとなり,平均歩行速度とPCI値は有意差(p<0.05)を認めたが,△HRには有意差は認められなかった.したがって,装着時のPCIは歩行速度の減少により増加したことが確認された.また,P-RTでは未装着時253±74msec,装着時265±73msecと有意差は認められず,注意需要の変化はみられなかった .【考察】 健常成人男性がキッド装着によって,歩行速度の低下や歩行能率の指標とされるPCIの増加が示された.このことから,キッド装着によって歩行中に身体に影響を及ぼすことがわかった.しかし,注意需要の指標とされるP-RTにおいては有意差を示さなかったことから、キッドは心理的負担にはならなかった.キッドは重りやサポーターなどを用いることにより,高齢者に現れる身体機能の低下を模擬実現できることがわかっている(栗原ら1998).現実に,加齢に伴い高齢者の歩行では歩幅・歩調・歩行速度がそれぞれ低下するとされている(古名ら1994).今回の研究からもキッド着用において,膝サポーターが歩幅を制限し,歩行速度を低下させることが明らかとなった.そのため,前述した高齢者の歩行と同様の結果を示し,歩行においてキッドが高齢者の身体機能に近づくことができるという従来の結果が示された.しかし,キッド装着においてP-RTには変化を示さなかった.これは,被験者が若年者であったため,体験キッド装着での歩行課題に対してそれほど困難ではなく,容易に注意を向けることができたためだと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 高齢者体験キッドを使用した健常成人男子の歩行は,身体的負担と心理的負担のうち,身体的負担のみ歩行中に影響を及ぼしていることがわかった.
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© 2013 日本理学療法士協会
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