理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-18
会議情報

ポスター発表
在宅脳卒中者における身体活動量の現状とその特徴の分析
福尾 実人田中 聡臂 宏泰
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに,目的】 平成19年度の国民生活基礎調査結果によると,日常生活において何らかの介護を必要とする原因の第1位が脳卒中であり,脳卒中は要介護につながる可能性が高いとされている。身体活動で制限を受けると行動範囲の縮小化,すなわち生活空間の狭小化が生じる。この生活空間の代表的評価尺度としては,Bakerらが提唱したLife-Space Assessment(LSA)があげられる。LSAは,活動量の頻度や自立度だけでなく活動範囲も定量化できることから身体活動量の評価として有益と考えられている。日本理学療法士協会の調査によると,LSA得点の70点以上は乗り物,公共交通機関を利用して一人で外出できる,50点以下は自宅内,隣接所への活動は可能,35点以下は自宅周辺,自宅内での活動は可能とされている。本研究の目的は,横断研究により在宅脳卒中者(脳卒中者)の身体活動量をLSA得点により3群に分け,在宅での身体活動量の現状とそれに関係する因子の特徴を明らかにすることである。【方法】 対象は,脳卒中者40名(男性27名,女性13名,年齢69.4±10.7歳)とした。疾患の内訳は脳梗塞26名,脳出血14名,麻痺側は右片麻痺24名,左片麻痺16名である。選択基準は,発症後6ヵ月以上経過した者,装具や歩行様式に関わらず屋内歩行が可能な者とし,検査実施が困難な著しい高次脳機能障害や認知症を伴う者は除外した。評価項目は,身体活動量の評価としてLSAを使用した。各評価項目は,年齢,LSA自立度であるIndependent Life-Space(LS-I),Life-Space using Equipment(LS-E),Maximal Life-Space(LS-M),転倒に対する自己効力感尺度として芳賀によって改変された日本語版Fall Efficacy Scale(FES),身体機能評価はBrunnstrom Recovery Stage(BRS),Timed Up and Go Test(TUG),Functional Movement Scale下位項目の床上動作(FMS),連続歩行距離,日常生活活動の評価としてFunctional Independence Measure (FIM)を調査した。解析方法は,LSA得点を51点以上(15名),50点以下(13名),35点以下(12名)の3群に区分した。次に,3群間の因子を比較するために,Kruskal-Wallis検定後に有意であった項目に対し,post-hoc検定としてSteel-Dwass法を用いた。統計学的有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は,県立広島大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号M11-0026)。対象者には,十分な説明を行った後,書面にて研究参加の同意を得て実施した。【結果】 対象者のLSA中央値(四分位範囲)は,44(33.8-54)点であった。Kruskal-Wallis検定で有意差が認められた項目は,LS-I,LS-M,FES,TUG,FMS,連続歩行距離,FIM下位項目である移動が抽出された。Steel-Dwass法を行った結果,LSA得点の35点以下群と50点以下群ではLS-Iと移動,35点以下群と51点以上群ではLS-M,FES,TUG,FMS,連続歩行距離,移動に有意差が認められた。一方,年齢とBRSでは有意差を認めなかった。【考察】 われわれは,先行研究において在宅脳卒中者の身体活動量に影響を及ぼす因子として,FES,連続歩行距離が関連すると報告した。本研究からLSA得点の35点以下群と50点以下群では,自宅内から隣接所までは移動が自立していることが必要と考えられた。また,51点以上群では,生活範囲が隣接所以上の町内・町外となり,自宅内や自宅周辺での生活範囲と比べて移動自立のみならず,転倒に関する自己効力感,歩行での持久性・安定性,床上動作が関係することが考えられた。維持期脳卒中者では,屋外歩行を多く実施することがADL低下を防止する要因と報告されている。本研究の新たな知見として,町内・町外といった外出には,移動能力の自立および向上のみならず,転倒に関する自己効力感の向上,歩行の持久性・安定性の向上,積極的な床上動作への関わりが必要であることが明らかとなった。【理学療法研究としての意義】 本研究は,在宅脳卒中者の身体活動量を3群に分けて,その特徴を明らかにすることにより,生活範囲の拡大に必要な因子を抽出した。今後,LSA得点により脳卒中者の生活範囲拡大への段階的な理学療法プログラムを作成する一助となればと考える。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top