理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-S-02
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セレクション口述発表
地域在住高齢者に対する太極拳ゆったり体操の継続が動脈硬化関連指標に及ぼす影響
3ヶ月間の継続効果
森 耕平野村 卓生明崎 禎輝片岡 紳一郎中俣 恵美浅田 史成森 禎章甲斐 悟
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抄録
【目的】「太極拳ゆったり体操」(以下,体操)は,太極拳の要素を取り入れ,虚弱高齢者にも適応可能な体操として福島県喜多方市で開発され,これまでに身体機能・能力の向上(AGG,2011),新規要介護認定発生の抑制(日老医会誌,2011)などの介護予防効果が明らかにされたものである.しかしながら,その効果を生活習慣病と密接に関連する動脈硬化関連指標や身体組成の変化から示した報告はない.本研究の目的は,体操の継続が動脈硬化関連指標,身体組成に及ぼす影響を検証し,生活習慣病予防への効果を検討することである.【方法】対象は大学近隣に在住する60歳以上の健常高齢者45名(女性36名,平均年齢69.2±4.9歳)である.介入は3ヶ月間,週1回の頻度で計12回の「太極拳ゆったり体操」教室を実施した.1回の教室は60分間を標準とした.また,自宅でも体操を行うことを指導した.評価は介入前および3ヶ月後に行なった.動脈硬化関連指標の評価は血圧脈波検査装置VeSeraVS-1500(フクダ電子社製)を用い,心臓足首血管指数(Cardio Ankle Vascular Index:CAVI)を測定した.CAVIは8未満を正常,8以上9未満を境界域,9以上を動脈硬化の疑いとする指数である.身体組成評価は体組成計DC-320(タニタ社製)を用い,脂肪量,筋肉量,Body Mass Index(BMI)等を測定した.また腹囲の測定も行なった.自宅での体操実施回数はアンケートにて調査した.また,主評価指標であるCAVIについては,介入前のCAVI値により体操による介入効果に差異が生じるかを検証した.CAVI値8未満をA群16名(平均7.46±0.46),8以上9未満をB群15名(平均8.46±0.32),9以上をC群14名(平均9.55±0.38)の3群に分類し,介入前後の比較を行った.介入前後の比較には,t検定あるいはWilcoxonの符号付順位検定を用いた.3群におけるCAVI値について,介入前後の変化量の差の検定には一元配置分散分析を行い,多重比較にはTukey法を用いた.有意水準は危険率5%未満で判定した.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は学内研究倫理委員会の承認を得て実施し,対象者には事前説明会にてインフォームドコンセントの下,書面により参加の同意を得た. 【結果】介入期間中の体操教室への参加回数(全12回)は10.2±1.3回,自宅での体操実施回数は2.4±1.5回/週であり,体操教室と自宅での体操実施回数の合計は3.3±1.5回/週であった.身体組成において,介入前に比べ3ヶ月の介入後に体重・脂肪量・BMI・腹囲が有意に減少し,筋肉量は有意に増加した(p<0.05).CAVIは介入前に比べ3ヶ月の介入後に減少傾向を認めたが有意な変化ではなかった(8.44±0.94→8.27±0.87,p=0.064).一方,介入前CAVI値で分類した3群の解析では,A群・B群は介入前後で有意な変化は認めなかったが,C群では有意な減少を認めた(9.55±0.38→9.10±0.45,p<0.05).また各群のCAVI変化量は,A群0.10±0.61,B群-0.19±0.59,C群-0.44±0.44であり,A群に比べC群で有意に変化量が大きかった(p<0.05).【考察】身体組成においては,3ヶ月の介入後に筋肉量を増加させ,体重・脂肪量・BMI・腹囲を減少させるという効果が認められた.体操は「姿勢の保持」「連続した動作」「ゆっくりとした動作」という,有酸素運動の特徴と下肢に対するレジスタンス運動の特徴を有しており,これらの特徴が筋肉量の増加,脂肪量の減少などの効果につながったものと推察される.また,CAVIにおいては,全対象者での解析では,介入前に比べ3ヶ月の介入後の変化は有意なものではなかった.しかしながら,対象者を介入前CAVI値で分類した3群の解析では,介入前CAVI値が高値を示す群ほど体操実施による改善効果が大きく,特にCAVI値 9以上を示す群においてはその効果が顕著であった.CAVIを評価指標とした本体操の介入効果は,介入前の動脈伸展性の程度によって差異があり,3ヵ月の体操実施は,すでに動脈伸展性の低下が疑われる者に対してより効果的な生活習慣病予防プログラムになりうることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】介護予防の効果だけでなく,生活習慣病予防の効果が明らかとなれば,二次予防分野のみならず一次予防分野におけるエビデンスの蓄積につながる.それにより,各自治体で実施される両予防事業に有効な介入手段を提供することができ,広く国民の健康増進に寄与することが可能となる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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