抄録
【はじめに、目的】現在,本邦では動物病院において犬や猫を対象に理学療法を実施者は獣医師や動物看護師などの動物医療従事者が多く,理学療法士(以下,PT)は少ない.現状では,その動物医療従事者が個々に理学療法を学び得た知識をもとに実践しているがその効果を検討した報告は見当たらない.そのため,動物に対する理学療法(以下,動物理学療法)はPTが実践を積み重ね,報告していくことによって,新しい領域として可能性があると考えられる.先行研究(石川ら,2012)でも,「動物に対する理学療法を実践し積み重ねていき動物の知識を身に就けることで,PTの新たな専門領域として,少なからず可能性があるのではないかと考えられる.」と述べられている.しかし,動物理学療法を実践するまでの過程が不明瞭であり,PT が実践したくてもどのようにすればいいか,不明瞭である.そこで本研究では,PTが動物理学療法の臨床現場に参入する将来性の一助とするために,動物理学療法を実施しているPTおよび獣医師,動物看護師に対し,どのように動物理学療法を知り,動物理学療法を実践するに至ったのかを調査することを目的とした.【方法】対象は動物理学療法を実施したことがある理学療法士(5 名),獣医師(10 名),その他の動物病院勤務者(8 名),合わせて23 名とした.対象者に動物理学療法へ参加する方法に関するアンケート調査を実施した.調査方法は質問紙法による自己記入式で郵送による配付と回収を行い,動物理学療法を行うまでの背景,動物理学療法の実施状況や実施に至るまでの契機などが主な質問であった.【倫理的配慮、説明と同意】対象者に対して研究の目的,方法,参加による利益と不利益,自らの意志で参加し,またいつでも参加を中止できること,個人情報の取り扱いと得られたデータの処理方法,結果公表方法等を記した書面による説明を十分に行い,研究参加に同意していただいた場合は署名にて同意書への同意を得た.また,すべてのデータの公表に当たっては対象者が特定されない形で行った.【結果】全体の回答では,動物理学療法を知ったのは,学会40.5%,研究10.8%,論文8.1%,海外での研修5%,その他37.8%であった.動物理学療法を学んだのは,日本での研修35.5%,独学17.7%,海外での研修15.5%,教育機関13.3%,その他17.7%であった.PTのみだけでの回答では,動物理学療法を知ったのは,学会が20%,研究が10%,論文が10%,海外での研修が10%,その他50%であった.動物理学療法を学んだのは,日本での研修33.3%,独学25%,海外での研修25%,教育機関8%,その他8%であった.実施契機は,動物病院(施設)の要請44%,先に実施している他職種の勧め22%,その他33%であった.【考察】動物理学療法を知る方法として,全体の回答では学会40%,研究10.8%,論文8.1%で約6 割を占めていることから,興味があり,自ら調べれば知ることができるということが示唆された.PTのみの回答では,学会20%,研究10%,論文10%で4 割となり,全体の回答と比較し学会で知ったことが半数であった.また,何で学習したかの質問では教育機関で学習した割合が全体では13.3%であったのに対し,PTのみの回答では8%と下まわった.そのため,理学療法学術大会やPT養成校の教育場面において,動物理学療法を認知でき,学べる機会が増加することが必要であると示唆された.動物理学療法を学ぶためには研修や勉強会といったものに参加する者が大半であったが,海外の研修に行く者は,テネシー大学獣医学部公式認定資格(Certified Canine Rehabilitation Practitioner :CCRP)を取得することが目的であった.研修や勉強会に参加するのみならず,独学で学ぶ者も多く,動物理学療法を学ぶ手段は,比較的あるのではないかと考えられた.実践しているPTが動物理学療法を実践するようになったきっかけは動物病院からの要請や先行し実践している他職種の獣医師からの勧めが多くを占めていた.そのため,動物病院や動物医療職との連携の構築することでPTが動物理学療法実践を開始することができるのではないかと考えられた.これらのことによりPTが動物理学療法を認知し,実践するようになっていき,実績を残すことで,動物理学療法が今後のPTの新領域となるのではないだろうか.【理学療法学研究としての意義】動物理学療法を実践したことがあるPT,獣医師,動物病院勤務者に対して,動物理学療法実践への参加方法について回答を得ることができた.PTが動物理学療法を実践していくためには,動物病院や動物医療職との連携の構築が必要であると示唆された.本研究は動物理学療法というPTの新しい領域の可能性を考える上で有意義であると考えられた.