理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-17
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一般口述発表
第一背側骨間筋における筋性疼痛が自律神経活動に与える影響
加藤 美樹西田 裕介
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抄録
【はじめに、目的】筋性疼痛は身体の異常を認知する重要な生体反応であり、理学療法士は個々の筋性疼痛を客観的に評価し、痛みに応じて理学療法を変更する必要がある.しかし現在、筋性疼痛の評価は主観的なものが多く、個々の痛みの捉え方に依存しており、痛みに対する生体反応を捉えきれていないのが現状である.自律神経活動は生体反応を瞬敏に反映する指標であり、痛みとの関係が報告されていることから、筋性疼痛は自律神経活動を用いて評価できると考えられる.また、本研究では被験筋として手部の第一背側骨間筋を用いる.筋性疼痛に関する先行研究で用いられる被験筋は大腿四頭筋や下腿三頭筋などが多い.筋量の多い筋群を用いることは、心拍数、血圧、呼吸数の上昇といった運動による全身的な適応を引き起こすため、筋性疼痛由来の生体反応か否かは判別困難となると考える.更に、筋生検により組織学的に捉えた手法では、筋生検そのもので組織に炎症を惹起する可能性がある.そこで、本研究では全身的な影響を極小化することを目的に、共働筋の関与の小さい、第一背側骨間筋に筋性疼痛を誘発し、筋性疼痛と自律神経活動との関係性について検討を行った.【方法】健常成人男性13 名(年齢:21 ± 2.26 歳)を対象に測定した.座位による安静10 分(課題前安静)の後、筋性疼痛誘発課題を行い、その後安静10 分(課題後安静)を行った.筋性疼痛誘発課題は、被利き手の示指外転運動、安静90 秒を1 セットとし、3 セット行った.運動形態は非利き手の上腕部を収縮期血圧の30%で阻血し、示指外転は最大随意収縮力の35% で求心性の等張性運動を施行困難まで行った.測定中はメトロノームを用いて一定のリズム(60 回/分)で運動を続けた.施行困難の基準は、被験者が第一背側骨間筋にVAS10 を感じた際、または最大随意収縮の35%が行えなくなった際とした.課題前安静から課題後安静終了までの間、心拍数計(RX−800 Polar社)にて心拍を計測した.心拍のR−R間隔データに周波数領域解析を行い(Memcalc/Tarawa)、課題前安静、課題時、課題後安静の各時間の副交感神経活動の指標としてHFnu(HF/HF+LF)、交感神経活動の指標としてHR、LF/HF値を算出した.また、筋性疼痛による自律神経活動の変化を明確にするため、呼吸数を15 回/分に統制し、吸気:呼気は1:1 とした.各時間で指標の変化の比較に対応のあるt検定を行い、Speamanの順位相関係数にて関連を検討した.有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者には研究の趣旨を説明し、書面により同意を得た.本研究の倫理的事項及び研究内容については、本学の倫理審査委員会に報告し、承諾を得てから研究を実施した.【結果】各運動で施行困難時、全被験者でVAS10 を確認した.同負荷で痛みを誘発した際、施行困難までの時間が痛み誘発ごとに短くなり(104.15 ± 49.47 秒、64.54 ± 46.51 秒、50.77 ± 30.47 秒)有意差が認められた.HRは課題前安静と課題後安静より課題時で有意に増大した.HFnuは課題時よりも課題後安静で有意に増大した.LF/HFは課題時より課題後安静で有意に低下した.【考察】痛みを持つ筋の筋出力低下は、興奮収縮連関の異常と収縮タンパク質の低下で説明されることから、第一背側骨間筋に筋性疼痛を誘発できたと考えられる.また、筋性疼痛の感覚は侵害感覚神経のポリモーダル筋侵害受容器の活性化が中枢へ伝えられ痛みとして感知すると同時に、孤束核へ伝えられ副交感神経活動が抑制され交感神経活動が興奮する.施行困難まで行わせた課題により、乳酸やH が神経終末の周囲に高まり、侵害感覚神経を興奮させた結果、課題時で副交感神経活動が抑制され、心拍数が増加したと考えられる.また、課題後安静では筋性疼痛後の反応として、副交感神経活動が回復し、心拍数の低下が生じたと考えられる.以上より、第一背側骨間筋における筋性疼痛は自律神経活動に影響を与え、筋性疼痛による生体反応を示す可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】筋性疼痛は理学療法を行う上で阻害となる因子の一つであり、理学療法士が介入すべき対象である.自律神経活動を用いることで筋性疼痛における生体反応を客観的に評価する可能性を示した.客観的に筋性疼痛を評価することで、痛みに応じた運動介入やプログラムの変更が可能となると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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