理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-17
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一般口述発表
脊髄損傷者における温熱負荷時のIL-6 応答
橋﨑 孝賢木下 利喜夫森木 貴司寺村 健三梅本 安則幸田 剣中村 健田島 文博
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キーワード: Myokine, 交感神経, 頚髄損傷
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抄録
【はじめに、目的】Myokineは、運動により骨格筋から分泌されるCytokineと定義されており、IL-6 はその代表といえる。これまで、IL-6は炎症性サイトカインとして知られていたが、骨格筋から産生・分泌されるIL-6 は、炎症性サイトカインであるTNF-αの産生を抑制し、局所的・全身的な抗炎症作用を有していることが判明している。 この骨格筋由来のIL-6 産生量は、筋肉量や運動時間に比例することが知られている。運動以外の骨格筋由来IL-6 の産生因子として、温熱、カテコラミン、低グリコーゲンなどが挙げられる。その中でも、温熱はマウス実験において温熱負荷が独立したIL-6 産生因子である結果が示された。更に、ヒトにおいても20 分間、42℃の温泉に入浴することでIL-6 の上昇を認めた。また、頚髄損傷者は、交感神経の障害により健常者とは異なる温熱刺激に対する生理的応答を持つことが示唆されている。よって、CSCIにおいて温熱負荷によって誘発されるIL-6 の応答が健常者と異なる可能性があると考えた。今回の研究の目的は、交感神経の障害により温熱負荷時のIL-6 産生に違いがあるかを調べることを目的とした。そのため、本研究は健常成人(Able body、AB)と頚髄損傷者(Cervical spinal cord injury、CSCI)を被験者とした。【方法】被検者はAB9 名、CSCI6 名(障害頚髄節C5 〜C7、ASIA分類A)とした。実験室に到着した後、深部体温である食道温測定の為に食道温センサーを経鼻的に挿入した。次に皮膚温センサーを貼付し心電図電極を装着した後、水循環スーツを着用した。その後、背臥位で水循環スーツに35℃の温水を循環させ、30 分の安静をとった。すべての項目が定常となったことを確認し、コントロールデーターを測定した。その後、深部体温が1℃上昇するまで頚髄損傷者の麻痺域のみである臍以下に50℃、感覚正常域を含む臍以上に35℃の温水を循環させた。深部体温が1℃上昇した時点で、温熱を終了した。測定項目は食道温・皮膚温・HeartRate(HR)とし、採血は温熱前・後に行い、項目は血中IL-6濃度、TNF-α濃度、hsCRP、アドレナリン、白血球、HCTとした。両群間の比較にはANOVAを行い,post hocテストとしてSheffe’s testを用い、各群の温熱負荷前後の比較は、paired t-testを使用した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は和歌山県立医科大学倫理委員会の承認を得た上で、被験者に実験の目的、方法および危険性を説明し、同意を得て実験を行った。【結果】両群間で年齢・身長に有意差はなく、体重はAB がCSCIより有意に高値であった。温熱時間はCSCIがABに比べ有意に短かった。温熱後、深部体温は両群とも1℃以上の上昇を認め、平均皮膚温・HRは両群とも有意に上昇した。温熱前の血中IL-6 濃度はAB(1.6 ± 0.9pg/ml)、CSCI(2.0 ± 1.2 pg/ml)であり、両群間に有意差は認めなかった。温熱負荷後はABが2.6 ± 1.1 pg/mlへと有意に上昇した(p<0.05)が、CSCIは2.3 ± 1.2 pg/mlに留まり、有意な上昇を認めなかった。WBCは両群間に差を認めず、温熱後は温熱前に比べ両群とも有意に上昇した。一方、血中TNF-α、MONO、hsCRP濃度は両群間および各群の温熱前・後で有意な差は認めなかった。HCT・アドレナリン濃度は安静・温熱後ともABに比べCSCIで低値であり、温熱によりABでのみ有意に上昇した。【考察】本研究は、両下肢温熱負荷による食道温1℃の上昇がABにおいて血中IL-6 の有意な上昇をもたらし、CSCIでは変化を認めないことを示した。ABの温熱後、IL-6 濃度が上昇した要因に関して、本実験ではABでTNF-α、CRP、MONOに変化を認めなかった事から温熱負荷によるIL-6 上昇が筋障害等で惹起された単球由来である可能性は低いと考えられる。温熱自体が骨格筋、内皮細胞、脂肪細胞等、何らかの臓器からIL-6 を分泌させた結果と推察される。同じ食道温上昇の条件でも、アドレナリン上昇が阻害されているCSCIのIL-6 上昇が認められないことから、交感神経が温熱由来IL-6 発現に関与していることが考えられる。他に、温熱時間がABに比べCSCIで短時間であり、体重が低値で筋肉量が少ないことがCSCIにおけるIL-6 上昇が認められなかった原因の可能性がある。【理学療法学研究としての意義】本研究により、温熱負荷がIL-6 上昇を惹起されるが、頚髄損傷によりその上昇が阻害されることが判明した。
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© 2013 日本理学療法士協会
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