抄録
【はじめに、目的】 住宅改修の支援は、安全で継続的な在宅生活を実現するために重要である。そして、住宅改修の結果を適切に蓄積し、活用するシステムを構築することは教育面、研究面から考え有用である。今回、住宅改修のデータを蓄積することを目的にデータベースの作成を試みた。なお、作成にあたり優先すべき課題を明確にするため、セラピストにアンケートを行い、現状の課題を調査した。【方法】 1.当施設入所に勤務経験を持つセラピスト11名(PT9名、OT2名、経験年数5年以上6名、5年未満5名)を対象として、住宅改修についてのアンケートを実施した。内容は、(1)住宅改修の支援を行う上で適正な流れやシステムが確立されている(総合評価)、(2)教育体制が整っている、(3)訪問した現場で必要な箇所の計測や情報収集が漏れなく行える、(4)改修案は多職種にて検討できている、(5)住宅改修データの管理・閲覧が効率的に行える、(6)住宅改修後に併設病院等へフィードバックが適切に行える、の6項目について、はい・やや不十分・かなり不十分・いいえの4段階評価で質問した。また、アンケート結果をもとにCS(Customer Satisfaction)分析を行い優先すべき課題を抽出した。優先すべき課題は、改善の余地が多く(満足率が低い)、かつ総合評価との相関が強い(決定係数が高い)項目とした。2.CS分析の結果を参考にして、住宅改修についてのデータベースを作成した。なお、作成にはマイクロソフト社製アクセスを使用した。【倫理的配慮】 本研究は当施設倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 アンケートの回収率は100%であった。アンケート結果は、はい・やや不十分・かなり不十分・いいえの順で(1)1名・7名・3名・0名、(2)3名・6名・2名・0名、(3)2名・5名・4名・0名、(4)2名・6名・3名・0名、(5)0名・6名・1名・4名、(6)0名・3名・2名・6名であった。また、CS分析の結果より、住宅改修データの管理・閲覧が効率的に行える、住宅改修後に併設病院等へフィードバックが適切に行える、の2項目が優先すべき課題として抽出された。作成した住宅改修データベースは、入力、カンファレンス、ライブラリの3項目で構成されている。入力は、疾患名や移動手段などの基本情報、在宅の各場所(玄関、トイレ、浴室等)ごとの寸法、改修の有無と内容、画像データ、コメントを同一画面で入力できるようにした。カンファレンスは、訪問指導後に住宅改修案を検討する際に使用し、在宅の各場所ごとに検討した改修内容を記録できるようにした。ライブラリは、蓄積された住宅改修データを閲覧する際に使用される。条件で絞り込む検索機能を搭載しており、入力した在宅の各場所、寸法、移動手段、疾患分類、利用者名などを自由に組み合わせて検索でき、目的に応じたデータの閲覧が可能である。【考察】 CS分析の結果より、住宅改修データの管理・閲覧を効率化することが、優先すべき課題として挙げられた。データベースがない状況では、住宅改修のデータが適切に保存されていない。また、在宅の画像や検討した内容が別々のファイルに保存されており、活用し難い状況である。これについては、住宅改修データベースの入力を使用することで、改修前後の寸法や内容、画像データ等を確実に保存することができる。また、ライブラリの使用により、入力した複数のデータを同一画面で閲覧できるため改修前後の状況を把握しやすくなると思われる。さらに、住宅改修データをファイルで管理しているため、データが多くなると目的データを閲覧しようとする場合、時間を要することがある。これについてもライブラリの条件で絞り込む検索機能を使用することで容易に目的のデータを閲覧することができる。また、住宅改修後に併設病院等へフィードバックを適切に行うことも優先すべき課題として挙げられた。これに対しては、院内の共有フォルダからアクセスすることで、住宅改修データベースを利用でき、ライブラリから目的データの閲覧が可能であるため、フィードバックの際に役立つと考える。このように、住宅改修データベースの活用により、現状の課題の多くを改善できると考える。今後は継続して使用し、住宅改修の支援における質向上を目指し、利用者の在宅復帰に貢献していきたい。【理学療法学研究としての意義】 本研究により作成した住宅改修データベースは、住宅改修の支援を適切に行うために有用である。さらに、教育面、研究面においても有効に活用できると考える。