理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-51
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ポスター発表
タオルギャザリングエクササイズによる足趾最大把持力の検討
青沼 友香堤 有加音城下 貴司
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抄録
【はじめに、目的】村田(2004)は足趾把持力と片脚立位の関連性を調査し足趾把持力の向上により片脚時間が安定したことを報告している。加賀谷ら(2007)はウインドラス機能の低下には、タオルギャザリングエクササイズ(以下、TGE)やビー玉掴みが有効であると述べている。竹井ら(2011)は足把持力トレーニングとしてTGEを行いTGE開始3 週間後に足把持力増強を認めたと報告している。城下(2008)は有痛性外脛骨を対象にTGEを行い疼痛の改善率が少なかった、前田(2011)はTGEと内側縦アーチ(以下、MLA)との関連性を調査しTGEとMLAは形態的に関連性が低いことを報告している。しかしながら、以上にあげた先行研究は足趾個々の把持力を調査したものではない。そこで、本研究では各々の足趾把持力に着目しタオルギャザリングエクササイズを用いて各々の足趾把持パターンを調査した。我々は、母趾の把持力が最大となると仮説立てた。【方法】対象は健常成人24 名の右足のみ24 足とし、年齢は21.16 ± 0.63 歳で過去6 ヶ月以内に下肢疾患により医療機関にかかっていない者とした。機材はバイオログDL−2000(4Assist社製)、Flexiforceボタンセンサシリーズ(幅14mm、長さ205mm、厚さ0.208mm)、校正用はかり(デジタルクッキングスケール KD-313 最小表示1g、最大表示3000g)、貼付用テープ、計測用パッド(ポロンソフト3mm 直径9.5mm)、昇降ベッド(KC-237-PARAMONT BED)とした。実験手順は股関節・膝関節・足関節を約90 度の端坐位とした、足趾の母趾から環趾まで趾頭部分にボタンセンサを貼付した、城下による先行研究に従って足趾完全伸展から完全屈曲までを1 周期としてTGEを行った、TGEの際には声掛けにより被験者間で周期を統一させた。解析はサンプリング周波数100Hzで計測し、1 被験者約1 分間の計測を行った。記録したデータのうち3 周期を選出し足趾把持後の0.1 秒の積分値を足趾把持力とした。データ解析は、m-BioLog ,m-Scopeを使用した。統計処理にはR(R i386 2.15.1)、RG(RCodeGenerator)を使用し、分散分析による多重比較検定にて各足趾の比較を行った。【倫理的配慮、説明と同意】被験者に対し研究の内容・趣旨・方法等を記載した説明書に同意書と同意撤回書を添付したものを配付し、同意書提出のあった対象者のみに協力をしていただいた。また、個人が特定されないよう番号で管理し、番号と名前を照合するため、対応表を作成しセキュリティー付きUSBで被験者情報を管理した。【結果】各足趾把持力は、母趾137.5 ± 133.1g、2 趾139.4 ± 96.0g、3 趾248.0 ± 199.0g、4 趾146.5 ± 87.3gであった、標準偏差が著大となりいずれも統計的有意差は得られなかった、多重比較検定では母趾‐2 趾0.2121、母趾‐3 趾0.9113、母趾‐4趾0.1755(p<0.05)であった。男女ともに3 趾の把持力が最大となる傾向が得られた。【考察】本研究ではTGEによる足趾把持力パターンの検証を行ったが統計処理による有意差が認められなかった。母趾は他趾と比較して面積が大きい(約3 倍)ため有意差が検出しづらいと考え母趾面積を補正したうえで比較したが足趾面積を補正しても有意差が認められなかった。我々は母趾の把持力が最大であると仮説立てていたが異なる結果が得られた。以上から各足趾把持力に差がないと考えられる。また標準偏差が著大となったが要因として、1 つ目に研究デザインとして使用したボタンセンサが剪断力に対して弱かったためテープ貼付方法やパッドによる圧への配慮など様々な工夫を凝らしたが剪断力を取り除くことができなかった点があげられる、2 つ目に足部形状としてギリシャ型・エジプト型の被験者が混在していたことにより各々の足趾把持パターンに差が生じてしまったことがあげられる。足趾把持パターンでは3 趾から行う被験者が多くおり、足趾把持力平均値は3 趾が最大となった。3 趾の足趾把持力が最大となった要因として3 趾の可動性が大きいことにより足趾把持力は3 趾が最大となったのではないかと我々は考える。【理学療法学研究としての意義】本研究から、TGEの各足趾把持力に差はないが足趾把持パターンには差が示唆された。臨床上のTGEの解釈に注意すべきであると我々は考えた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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