理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-28
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ポスター発表
足内側縦アーチを計測する際の信頼性についての検討
堤 有加音青沼 友香城下 貴司
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抄録

【はじめに、目的】足内側縦アーチの計測方法は横倉ら(1928)が報告している横倉法が広く知られている.横倉法はX線を用いた骨格構造上の評価である.大久保ら(1989)は横倉法と相関が得られた評価としてアーチ高率を提唱している.アーチ高率は足長に占める舟状骨結節の高さの割合を算出する方法である.その他にも計測方法は数多く報告されている.その1 つにBrody(1982)が報告したNavicular Drop(以下ND)がある.NDの特徴は計測前に座位姿勢での脛骨粗面と距骨頚と母趾の触診を行うことであり,座位から立位の舟状骨結節高の差を算出して評価を行う方法である.BrodyはND計測時の座位足部荷重量を言及していない.そこで城下(2011)は座位足部荷重量を体重の15,20,25%と設定し信頼性の検討を行った.しかし被検者の人数が4 人と少ない状態であった.今回は城下(2011)と同じ条件で被検者を増やし計測の信頼性の検討を行った.本研究の目的は座位足部荷重量の設定の信頼性を明らかにするためである.【方法】対象は成人男子6 名,同女子4 名,計10 名20 足(年齢20.3 ± 0.67 歳,身長167.2 ± 8.25cm,体重61.5 ± 11.0kg,足長24.5 ± 1.55cm)とした.機材はデジタルノギス(株式会社エーアンドデイ社製AD−5765 −150)1 個,デジタル体重計2 個,水準器1 個,高さ調節可能な治療用ベッド(KC−237 −PARAMOUNT BED)1 台,すべり止めシート1 枚を使用した.手順は最初に足部の臨床経験10 年以上の理学療法士1 人が舟状骨結節の印を付けた.被検者は治療用ベッド上にて端座位姿勢を保持した.脛骨粗面と距骨頚と母趾の触診はBrodyに従って行った.座位足部荷重量の条件は体重の15,20,25%としてデジタル体重計で確認を行った.舟状骨結節の高さはデジタルノギスを使用して計測した.計測は2 人の検者が各々の条件で3 回行い座位と立位での舟状骨結節の高さの差を算出した.3 回計測した結果は平均を算出した.統計解析はSPSS 20J for Windowsを使用し級内相関係数(ICC)の検者内信頼性及び,検者間信頼性を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】被検者に研究の目的,計測の方法,データを研究目的以外では使用しないこと,同意後いつでも研究への参加を取り消すことができることの説明を十分に行った.データは被検者の名前が特定できないようID番号化した.被検者の氏名とIDは対照表を作成しセキュリティ付USBで管理することを伝えた.計測は被検者から参加の同意を書面にて得てから行った.【結果】検者1 の検者内信頼性(1,1)は座位足部荷重量20%で0.75,15%で0.69,25%で0.62 の順に信頼性が得られた.検者2 では座位足部荷重量20%で0.86,25%で0.78,15%で0.58 の順に信頼性が得られた.検者間信頼性(2,1)は座位足部荷重量20%で0.85,25%で0.80,15%で0.63 の順に信頼性が得られた.【考察】本研究はND計測時の座位足部荷重量の条件を城下(2011)と同じ条件である体重の15,20,25%と設定し信頼性の検討を行った.NDを含めた下肢計測はPicciano(1993)により経験者が行わないと信頼性は低いと報告されている.本研究で検者は指導者のもとでNDの練習を1 ヶ月間行ってから計測を行った.計測の結果,検者内信頼性と検者間信頼性は座位足部荷重量20%時にshroutらの判断基準でalmost perfectとなり信頼性が得られた.Sell(1994)は荷重位での測定において検者内信頼性は0.83,検者間信頼性は0.73 となったと報告している.Mueller(1993)は検者内信頼性において右足では0.78,左足では0.83 となったと報告している.本研究の検者内信頼性の検者2 と検者間信頼性の座位足部荷重量20%は座位足部荷重量を設定していないSellの検者内信頼性やMuellerの検者内信頼性よりも信頼性を得ることができた.一方で本研究の15,25%の座位足部荷重量の信頼性はshroutらの判断基準でmoderateとなった.NDは座位足部荷重量の影響を受け信頼性が変化することが示唆された.【理学療法学研究としての意義】本研究はND計測時の座位足部荷重量の設定を明らかにすることが目的である.座位足部荷重量の設定は体重の20%が推奨されることが示唆された.今後計測する際に座位足部荷重量に着目し設定を行うことで信頼性の得られる計測が可能となるのではないかと推察する.

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© 2013 日本理学療法士協会
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