理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-14
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一般口述発表
Wiiと計測システムソフトウェアを用いた重心動揺計の製作
校正方法と精度の検討
黒川 幸平加藤 はるな鎌田 友喜佐田 静香吉川 理紗河西 理恵武田 朴
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キーワード: 重心動揺計, Wii, 校正方法
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抄録

【はじめに、目的】 重心動揺計としてNintendoバランスWiiボード(以下Wii)を活用する例は理学療法の臨床現場においても報告されている。今回、我々は筋電図や画像などWiiを使った総合的な計測システムの構築を視野に入れ、汎用計測システム構成ソフトウェアLabVIEWを用いた重心動揺計測システムを製作した。新たに測定装置を製作した場合、その装置の校正を行うことは機器の実用化に欠かせない。そこでBobbertらの方法に倣い、Wiiを重心動揺計として使用した際に複数のセンサーからの出力を重心座標に変換するための校正法と精度について明らかにした。さらに、健常人の静的動作における重心動揺を計測し実用性について検討した。【方法】 1.Wiiに搭載された4つの歪みゲージ式フォースセンサーからの電圧信号をサンプリングレート100HzでAD変換し、LabVIEW 2010(National Instruments社製)に取り込んだ。各センサーからの出力電圧のゼロ点調整を行った後、校正目的に万能試験機(Autograph AG 20K SHIMADZU製作所社製)を用いて各センサーに対し鉛直方向に10kg、20kg、30kgの荷重を段階的に5秒ずつ加え、その間の平均電圧と荷重の関係を計測した。計測は各センサーにつき3回行い、荷重と電圧値の関係を確認した。左右の重心移動の計測には、2つの左側センサーの出力電圧の和から2つの右側センサーの出力電圧の和の差をとり、全てのセンサーの出力電圧の和で除した値を用いた。前後の重心移動の計測も同様の計算式から求めた。重心の座標位置を検討するため、Wiiの中心から前後左右5cm間隔で計45箇所に印を付けた。10kgの重りをWiiの中心から前後5cmに置いたときの電圧(以下v1)と、左右10cmと15cmのところに置いたときの電圧(以下v2)を測定し、中心からの距離をX軸、電圧をY軸として両者の関係式を求めた。次に、重りを中心から前5cm・左15cm(以下a)、前5cm・右15cm(以下b)、後5cm・左15cm(以下c)、後5cm・右15cm(以下d)の斜方に置き、得られた電圧値を先に求めた式に代入し、計算値と実際に重りを置いた位置の差を算出した。静的動作における重心の総軌跡長を以下の方法で求めた。まず、実際にヒトが動作をしたときの位置データを0.01秒毎に得て12個のデータの移動平均をとり、雑音を除去し、0.01秒毎の位置とした。0.01秒毎の位置の差を移動距離とし、これを積分して総軌跡長を求めた。2.製作した重心動揺計の実用性を評価するため、実際にヒトの動作時の総軌跡長を測定した。対象は健常な成人10名(男性6名、女性4名 平均年齢20.3歳、平均身長:167.1±4.2cm、平均体重:55±4.9kg)であった。静的動作課題として開眼立位、閉眼立位を各10秒間測定し、1分間の休憩をはさみ3回行った。課題毎の測定値のばらつきを評価するため、被験者の総軌跡長の平均値と標準偏差を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の趣旨と内容について事前に被験者に対し口頭にて充分に説明し、文書にて同意を得た。なお、本研究はヘルシンキ条約に則って行われた。【結果】 1.Wiiに搭載された4つのセンサーからの出力電圧と各荷重とは直線的な関係が得られた(r=1)。また、電圧v1、v2とWiiの中心からの距離にも直線的な関係が得られ強い相関が示された(r=1)。Wiiの中心より重りを前方(a),(b)に斜方移動したときの距離と計算値との誤差は1.2mm(2.4%)、後方(c),(d)に移動したときは3.8mm(7.6%)、左方(a),(c)に移動したときは0.5mm(0.3%)、右方(b),(d)に移動してときは4.1mm(2.7%)となり、概ね良好な結果が得られた。2.開眼立位での総軌跡長の平均は221mmであり、標準偏差は±41.1mmであった。閉眼立位では243mmとなり、標準偏差は±36.9mmであった。【考察】 本研究の結果より、今回製作した重心動揺計測システムの誤差範囲は小さく、一定の精度があることが示された。また校正方法を明確にしたことにより、第三者が同様の方法を用いて製作したシステムの校正を行うことができると考える。また、ヒトでの計測も妥当な数値が得られたことから、測定器自体の誤差はかなり小さいことが推察でき、今回製作した重心動揺計測システムをヒトに応用することは可能であると考える。今後は筋電図などを組み合わせて製作したシステムをさらに発展させ総合的な計測システムの構築を行うとともに、視・聴覚によるフィードバックのプログラム機能を持たせることを検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】 Wiiは安価で簡便に計測でき、LabVIEWを用いたことによって、計測器としてだけではなく、視・聴覚によるフィードバックを行うことができる。また、今回製作したシステムは、筋電図・画像・加速度などとも容易に同期させることが可能なため、総合的な知見が得られ、理学療法の評価・治療ツールとして様々に応用できると考える。

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© 2013 日本理学療法士協会
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