理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-56
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ポスター発表
肩関節の3 次元的な運動として現れる共同運動の計測例
谷山 昂若竹 雄治新原 正之林 健志松本 憲二吉田 直樹
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キーワード: 脳卒中, 肩関節, 共同運動
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抄録
【はじめに、目的】病的共同運動(以下、共同運動)は、筋間の協調異常により、関節間の特異な運動パタンとして現れる。共同運動には典型的なパタンがあり、それに基づく評価法も確立している。しかし、典型例以外のパタンも観察され、まだ研究の余地は多い。上肢の多関節間の運動の協調性やその異常の定量的な研究では、各関節の運動計測が基本となる。この際、肩関節に代表される多自由度関節の肢位や運動の扱いが問題となる。各自由度の運動を個別に見るだけでは運動の全体像の正確な把握ができない。我々は球面座標解析を使用した肩の3 次元的な運動解析の研究を進めてきた。その方法を共同運動の研究に応用することを目指し、まずは肩関節のみの3 次元的計測から共同運動の評価やパタン分類につながる結果が得られるかどうかを確かめることを目的に、運動タスクを考案し、患者の実測データを解析した。【方法】対象は、運動麻痺の程度が異なる脳卒中片麻痺者男性4 名。回復度順に、BRS-3 のA氏(73 歳,右中大脳動脈領域の梗塞)、BRS-4 のB氏(38 歳,右被殻出血)、BRS-5 のC氏(61 歳,左被殻出血)、BRS-5 のD氏(64 歳,左放線冠梗塞+五十肩)。共同運動の影響が肩関節の運動として表れるように以下の2 課題を実施した。共に端座位で、上腕長軸方向下垂位で肩関節の肢位を保持するように努力しながら他の関節の運動を行う(運動に伴い下垂位の保持ができなくても運動を続けるよう指示した)。肘屈伸課題(以下、肘課題)では、5 秒以上かけ肘を伸展位から最大まで屈曲し、伸展位まで戻す。前腕の回内外課題(以下、前腕課題)では、肘屈曲90 度で、前腕回内位から回外して回内位に戻し、これを3 回繰り返す。肘課題は運動速度の参考のため、1Hzのテンポのクリック音を聞かせた。前腕課題は、運動速度を規定せずゆっくり行うよう指示した。非麻痺側、麻痺側の順で、左右別々に実施した。運動計測には磁気式3 次元位置角度計測装置Patriot(Polhemus社)を用いた。上腕部と胸骨部にセンサを装着し、上腕と胸骨の傾き(3 次元の角度)の変化を60Hzで計測し、体幹に対する上腕長軸方向を算出した。肩の運動は上腕長軸方向の変化として、球面座標上に軌跡として表現される。左側の運動軌跡は左右反転して右側の結果と同一グラフ上に示し、両側の運動軌跡を比較した。計測、解析、可視化には、MATLAB(MathWorks社)で本研究用に開発したソフトウェアを用いた。【倫理的配慮、説明と同意】研究にあたっては、関西リハビリテーション病院倫理審査委員会の承認を得て行った。対象者には事前に書面で説明を行い同意を得た。【結果】図を用いず結果を示すのは難しく、文章化のため次の角度を定義する。(単位は度)、「仰角」は上腕長軸方向が垂直線となす角度で、基本肢位が0、「方位角」は水平面に投影した上腕方向で、右方が0、正面方向が90。例えば、肩90 度屈曲肢位は「仰角90,方位角90」と表現される。非麻痺側は、全対象者において両課題で15 度程度の動きであった。麻痺側は、比較的重度のA氏とB氏で肩の動きが大きかった。A氏は、肘課題で開始位置(真下付近)から前方方向(仰角50,方位角80)へ移動し開始位置へ戻る軌跡、前腕課題で(仰角15 から45,方位角60 から90)の間で前後左右へブレながら動いた軌跡であった。B氏は、肘課題で開始位置(仰角20,方位角5)から外側方向(仰角50,方位角-15)へ移動し内側方向(仰角20,方位角-45)に戻る軌跡、前腕課題で開始肢位(仰角45,方位角15)から後方方向(仰角40,方位角-20) へ移動し開始位置へ戻る(前腕の3 回の回内外に応じた)軌跡であった。被験者の回復度順に、麻痺側の肩の動きが小さくなった。【考察】共同運動の影響があると、肘や前腕の動きに連動して肩も動いてしまい一定肢位に保持できないことになる。A氏とB氏の麻痺側が、肩を保持できず大きく動いているのは共同運動の影響と考えられる。典型的な共同運動パタンでは、肘屈曲または前腕回外に伴い肩の外転、肘伸展または前腕回内に伴い肩の内転が表れることになる。B氏の肘課題の結果はこの典型的なパタンに相当するが、A氏の両課題とB氏の前腕課題の結果は典型例以外と考えられる。回復段階が進むと共同運動の影響による肩の運動が小さくなり、一定肢位に保持できることになる。得られたデータは、被験者間の回復段階の違いを反映したものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】この研究で、肩関節に表れる共同運動を3 次元的に計測することができた。このことは多関節間の運動計測で問題になる多自由度関節(肩関節)の計測方法の確立に向けて有意義である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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