理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-56
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ポスター発表
ウェアラブル姿勢計測・解析システムを用いた歩行評価とバランス能力の関係性について
福榮 竜也貴嶋 芳文早瀬 昇吾緒方 匡湯地 忠彦東 祐二藤元 登四郎関根 正樹田村 俊世
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抄録
【目的】脳卒中片麻痺患者における運動療法の効果判定として様々な評価項目が存在している。理学療法士による歩行評価は観察などによる主観的評価が多く、客観的・定量的評価に乏しく再現性の低いものとなっている。近年では加速度計など使用して、定量的に歩行を評価した研究報告も増えている。一方、歩行能力については、年齢、筋力、関節可動域、運動制御、固有感覚など様々な影響因子があり、姿勢反射や制御などのバランス能力の関与も大きいとされている。近年バランス能力と歩行機能に関する研究は多いが、加速度計など用いた歩行評価とバランス能力の評価については具体的な関連性は示唆されていない。そこで今回は、ウェアラブル姿勢計測・解析システムを用いバランス能力と歩行能力の関連性について計測を行ったので報告する。【方法】対象は歩行監視群(男性4 名、女性2 名、平均年齢64.8 歳± 12.2 歳、下肢Br.stageIII:1 名、IV:3 名、V:2 名)、歩行自立群(男性6 名、平均年齢66 歳± 10 歳、下肢Br.stageIV:1 名、V:2 名、VI:3 名)である。加速度計は、体幹ユニット一つで構成されている。ユニットに含まれるセンサは容量型3 軸加速度センサ(MMA7260Q、Freescale)を使用しており、センサはベルクロで固定している。外形寸法は、40 × 55 × 20mm、システムの総重量は230gと軽量で、センサから得られたデータはBluetoothを用いてサンプリング周波数100HzでPCに転送される。課題は加速度計を腰背部(第2 腰椎近傍)装着し,16m平常歩行を二回計測し歩行スピードを計測した。前後3mを加速期・減速期とし、10mを定常歩行として採用し解析対象区間とした。10m定常歩行から、腰部加速度運動成分・姿勢成分をcut off周波数0.2hzで抽出し、運動成分(前後・左右・垂直方向)のRoot Mean Square(以下、RMS)[g]と、姿勢成分から前後・左右方向の姿勢角度振幅[deg]を算出した。またバランス評価としてFunctional Balance Scale(以下FBS)を計測した。統計学的分析は歩行監視群と歩行自立群の腰部加速度運動成分RMS、腰部姿勢成分、歩行速度、FBSを比較においてMann-Whitney検定を行い、FBSと姿勢成分の相関係数をスピアマンの順位相関係数にて検定した。【説明と同意】本計測の際には当該施設の倫理委員会の承認と対象者自身からインフォームドコンセントを得た後実施した。【結果】腰部加速度運動成分において、前後RMSは歩行監視群で0.10 ± 0.05g、歩行自立群で0.15 ± 0.07g(P<0.05)と有意に増加していた。左右RMSは歩行監視群で0.01 ± 0.04g、歩行自立群で0.13 ± 0.04g(P<0.05)と有意に増加していた。腰部前後姿勢成分振幅値は歩行監視群で5.5 ± 2.1deg,歩行自立群で1.7 ± 0.9deg(P<0.001)と極めて有意に減少していた。腰部左右姿勢成分振幅値は歩行監視群で2.1 ± 1.3deg、歩行自立群で1.0 ± 1.2deg(P<0.05)と有意に減少していた。歩行速度は歩行監視群で0.39 ± 0.1m/s、歩行自立群で0.86 ± 0.46 m/s (P<0.05)と自立群が有意に歩行速度の向上を認めた。また、FBSにおいては監視群で41.19 ± 10.19 点、自立群で52.33 ± 5.33 点(P<0.01)と有意に自立群の点数が高く、特に一回転、台への足のせ、タンデム立位、片脚立位にて自立群が監視群より点数が高かった。また、FBSと腰部加速度の相関係数は、自立群で左右姿勢成分がr= ‐0.826 (P=0.05)、監視群で前後姿勢成分がr= ‐0.815(P=0.05)と負の相関を認めた。【考察】自立群が監視群より左右前後の振幅値が減少し、左右前後の運動成分が大きいという結果であった。この結果により、監視群はバランス能力が低いため歩行中の左右前後の姿勢変位が大きく、小さい運動となる。自立群はバランス能力が高いことにより自由度が大きく、左右前後の小さい姿勢変化の中で大きな運動が可能であると考えられた。この結果により歩行速度においても自立群が監視群に比べて有意に速くなったと考える。今回のFBSの結果では監視群と比較し自立群の点数高く、特に一回転、台の足のせ、タンデム立位、片脚立位などより高いバランス能力を要する項目に差が多く見られた。また、左右姿勢成分とFBSの相関係数において負の相関を認めたことにより、バランス能力が高ければ小さい左右姿勢変化の中で歩行が可能であり、支持基底面内における身体重心を崩さずに、より安定性が高い歩行が可能であることが示唆される。【理学療法学研究としての意義】本システムは腰部に加速度計を装着する事で,腰部加速度運動成分RMSと姿勢変化振幅を算出できる。今回の研究により、歩行評価とバランス評価を比較することで定量的に歩行能力とバランス能力の関連が示唆された。本システムを臨床で活用し一般的な理学療法評価を合わせることにより定量的な歩行評価が可能であると思われる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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