理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-13
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一般口述発表
骨盤および胸郭の変位が胸郭運動に及ぼす影響について
横木 貴史木藤 伸宏今田 健
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抄録
【はじめに、目的】閉塞性呼吸器疾患や拘束性呼吸器疾患を有する者の症状は呼吸器そのものの病理学的変化から起こる症状と,姿勢変化による胸郭運動の運動変化が関与して起こす症状が混在する。よって,姿勢の改善が呼吸障害を有する者の症状の改善につながることが近年報告された。しかしながら,どのような姿勢変化がどのような胸郭運動の変化に結びつくのかは明らかではない。姿勢変化と胸郭運動の変化を明らかにすることは,姿勢の変化から胸郭運動の変化を推測でき,具体的にどのように姿勢を改善すべきかについての治療介入に示唆を与えることにつながる。よって,本研究では,健常者に対して人為的に体幹質量中心の側方変位と骨盤の前後傾を起こし姿勢変化を生じさせることによって,胸郭運動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】被検者は,健常男性10 名(平均年齢22 ± 1 歳)とした。取り込み基準は,喘息等の呼吸器疾患を有さない者,胸郭に関連する疾患を有さない者,胸腰部に手術の既往がない者,非喫煙者とした。計測条件は,足部が地面に着かない高さに坐面を設定したベッドに,ベッドの端に膝窩をつけた端坐位を行った(Neutral姿勢)。そして,人為的に体幹質量中心の側方変位を起こした坐位姿勢(左Shift姿勢),骨盤の前後傾を行った坐位姿勢(骨盤前傾姿勢・骨盤後傾姿勢)の3 条件とした。被検者は各坐位姿勢で1 分間の通常呼吸(呼吸速度は被験者の任意)を行った。胸郭運動の計測は,体表に17 個のマーカーを貼付し,カメラ8 台よりなる三次元動作解析システム(Vicon Motion Systems 社)を用いて,マーカーのデータをサンプリング周波数は60Hzにて取得した。胸郭運動の指標として,左右第4 肋骨レベルに貼付したマーカーの距離(上部胸郭の左右径,TOP-RL),左右第10 肋骨レベルに貼付したマーカーの距離(下部胸郭の左右径,BOTTOM-RL),胸骨・第1 胸椎レベルに貼付したマーカーの距離(上部胸郭の前後径,TOP-FB),臍部・第3 腰椎レベルに貼付したマーカーの距離(下部胸郭の前後径,BOTTOM-FB)を算出した。また,得られた時系列波形はサインカーブを呈しており,呼気と吸気を合わせた1 回の通常呼吸を1 周期とした5 周期分のデータについて高速フーリエ変換(FFT)を行い,平均周波数を算出した。Neutral姿勢・左Shift姿勢・骨盤前傾姿勢・骨盤後傾姿勢条件におけるTOP-RL, BOTTOM-RL,TOP-FB,BOTTOM FBの最大値,最小値,変化量,そして平均周波数を比較するために,一元配置分散分析を行った。数値は平均±標準偏差で表し,p<0.05 をもって有意とした。なお,統計解析はDr.SPSSⅡfor windows(エス・ピー・エスエス社,日本)を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】研究の実施に先立ち,広島国際大学の倫理委員会にて承認と,すべての被験者に同意を得たうえで計測を行った。【結果】結果は,Neutral坐位姿勢時の胸郭運動を基準として,骨盤後傾において下部胸郭左右径(BOTTOM-RL)の最大値・最小値は増加し,上部胸郭左右径(TOP-RL)の最大値・最小値は減少する者が多かった。上部胸郭と下部胸郭の左右径と前後径の最大値,最小値,その差分の変化量,平均周波数は各条件間で有意差は認められなかった。【考察】本研究は,Neutral坐位姿勢時の胸郭運動と比較して,骨盤後傾において上部胸郭左右拡張が起きにくくなり,下部胸郭左右拡張が起きやすくなることが示唆された。その理由として,肋椎関節は胸椎屈曲時に肋骨の前方回旋が生じるが,骨盤後傾姿勢では肋椎関節は前方回旋位で固定されるため肋骨の後方回旋運動は制限され,吸気時に生じる肋骨の挙上運動が困難となる。そのため,骨盤後傾位による肋骨の挙上運動が制限されることで上部胸郭運動が減少する被験者が多かったと推測された。さらに,骨盤後傾姿勢では,胸椎の後彎が強まった状態であり,吸気時に横隔膜が機能せず十分吸気を行うことができない。そのため腹部を膨張させることで吸気量を確保する呼吸様式に変化することが考えられる。その結果下部胸郭運動が増加したと推測されるが,定量的裏付けには至らなかった。【理学療法学研究としての意義】本研究の意義は,骨盤後傾姿勢によって上部胸郭運動が低下し,呼吸様式が非効率的なものになり,呼吸機能に悪影響を与えていることが示唆された。よって,骨盤後傾姿勢に対するアプローチを実施することが,閉塞性呼吸器疾患や拘束性呼吸器疾患を有する者の症状を改善することに有用である可能性が示唆された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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