理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-06
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ポスター発表
内側開大式高位脛骨骨切り術患者における術前後のADL変化、および各時期のADLに関連する因子の検討
変形性関節症転帰スコア(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score:KOOS)を使用して
近藤 淳沼田 純希永塚 信代糟谷 紗織井上 宜充竹内 良平
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抄録

【はじめに、目的】変形性膝関節症患者に対し脛骨近位内側を骨切りし、人工骨を挿入することで内反変形した膝関節を外反位に修正し、膝関節内側への荷重を分散化させ疼痛を軽減する内側開大式高位脛骨骨切り術(以下OWHTO)がある。当院でのOWHTOは内固定材にTomofix(synthes社)及び骨開大部にβ-TCP(オスフェリオン60、オリンパステルモバイオマテリアル社)を使用し、早期荷重が可能(術後1週で部分荷重、術後2週で全荷重)となっている。関節温存しつつ以前に比べ早期に機能回復が得られるため、近年変形性膝関節症に対する術式として注目されている。しかしOWHTOに関する理学療法領域の報告は少ない。理学療法施行上、日常生活動作(ADL)は最も重要視するものの一つであるため、OWHTO術前後のADL変化、および術前後のADLに関連を与える因子を調査するため研究を行った。【方法】対象は2011年7月から2012年7月に当院にて変形性膝関節症にOWHTOを施行した17例17膝(男性5名、女性12名)とした。属性は年齢63.9±7.7歳、身長158.3±8.4cm、体重64.2±10.0kg Body Math Index(以下BMI)25.5±2.7であった(各平均±SD)。ADL評価に変形性膝関節症転帰スコア(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score:KOOS)の中の日常生活項目 (17項目、68点満点、以下K-A)を使用した。術前、術後1ヶ月(以下1M)、術後3ヶ月(以下3M)にK-Aを紙面でアンケート調査し、各時期における差を検定した。術前、1M、3Mにおける年齢、BMI、術側膝関節自動・他動屈曲伸展ROM、術側膝伸展筋力、術側SLR筋力、術側膝疼痛VAS(最大10cm) と、各時期におけるK-Aとの相関を検定した。ROM測定はゴニオメーターを使用し日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会の方法に準じ測定した。筋力はHand-held dynamometer(アニマ社製 µTas F-1)を使用し膝伸展は端座位、SLRは背臥位にて各2回測定し、その平均値を体重で除し筋力体重比を算出した。疼痛VASは10cmの線が記載された紙面を使用した。統計は差の検定にHolm法を、相関の検定にスピアマン順位相関係数検定を使用した(p<0.05)。【倫理的配慮、説明と同意】全ての対象に研究の目的と内容を説明し、同意を得たうえで計測を行った。本研究はヘルシンキ宣言に沿っており、横須賀市立市民病院の倫理審査委員会の承認(承認番号:第24-28号)を受け実施した。【結果】各平均±SDは以下の通り。K-Aは術前)45.6±9.8点、1M)38.1±9.1点、3M)50.8±6.1点であった。相関を検定した術側パラメーターとして膝自動伸展ROMは術前)-2.4±4.2°、1M)-1.5±2.9°、3M)-2.4±3.6°。膝他動伸展ROMは術前)-1.5±2.9°、1M)-0.3±1.2°、3M)-0.9±2.6°。膝自動屈曲ROMは術前)133.8±5.7°、1M)123.2±9.0°、3M)128.8±6.7°。膝他動屈曲ROMは術前)141.2±6.0°、1M)133.2±7.5°、3M)135.9±7.5°。膝伸展筋力体重比は術前)3.6±1.3 N/kg、1M)1.8±0.9 N/kg、3M)2.7±1.0N/kg。SLR筋力体重比は術前)1.7±0.5 N/kg、1M)0.9±0.5 N/kg、3M)1.3±0.5N/kg。膝疼痛VASは術前)4.2±2.6cm、1M)2.1±1.0cm、3M)1.9±1.8cmであった。有意差が認められたのは術前のK-Aと1MのK-A(p<0.01)、1MのK-Aと3MのK-A(p<0.01)、術前のK-Aと3MのK-A(p<0.05)であった。相関が認められたのは1MではK-AとVAS(rs=-0.65)、3MではK-AとVAS(rs=-0.69)であった。【考察】OWHTOは早期荷重によるリハビリテーションが可能になっている。そのため1Mで術前よりADL低下が認められるが、3Mには術前を上回るADLを獲得できることが示唆された。各時期のADLに関連したのは術後の膝疼痛のみであった。疼痛以外のパラメーターが各ADLに限局的に影響を与えた可能性はあるが、疼痛はADL動作全般に影響を与える可能性が高いため、強く関連したと考えた。また術前の疼痛に相関が認められず、術後のみ認められたことから、術後ADLに影響を与える疼痛は、温存された膝自体の術前から存在した疼痛ではなく、手術により侵襲された組織もしくは修正された下肢アライメントに起因した疼痛である可能性が高いと考えた。【理学療法学研究としての意義】本術式によるOWHTO患者は術後3ヶ月には術前ADLを上回るようゴール設定し、そのために疼痛管理が重要であることが示唆された。疼痛管理は手術により侵襲された組織、もしくは修正された下肢アライメントを考慮したアプローチが重要であることが示唆された。

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© 2013 日本理学療法士協会
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