理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-S-03
会議情報

セレクション口述発表
培養筋管細胞による廃用性筋萎縮モデルの作製 収縮活動をコントロールして
黒木 優子吉岡 潔志笹井 宣昌早川 公英村上 太郎河上 敬介
著者情報
キーワード: 筋萎縮, 廃用, 培養細胞
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】廃用性筋萎縮は筋力低下を伴い、ADLやQOLの低下につながるため、その抑制や回復促進は理学療法において大きな課題である。そのため、後肢懸垂モデルや除神経モデルなどの動物モデルを用いた多くの研究が行われ、筋蛋白質の合成や分解の活性の関与が明らかにされつつある。しかし、その活性の詳細な機序や廃用性筋萎縮に対する介入効果の詳細な検討は少ない。これらを検討するためにはその分子メカニズムを明らかにする必要がある。そこで我々は、分子・遺伝子レベルの研究において動物モデルよりも有用である、培養細胞を用いた廃用性筋萎縮モデルの作製を試みた。形態的な評価に加えて、動物の廃用性筋萎縮ですでに報告されている分子生物学的現象がおきているか否か確認した。【方法】孵卵開始11 〜13 日目のニワトリ胚の胸筋から取り出した筋芽細胞を、コラーゲンコートしたディッシュ上に播種し、筋芽細胞が分化・融合して筋管細胞が形成されるのを確認した。筋管細胞の収縮活動をコントロールするために、筋管細胞への電気刺激を用いた。電気刺激装置(SEN-3401; 日本光電)を用いて、培養液内に入れた炭素電極に周期的な電流を通電することで、筋管細胞に電気刺激を与えた。まず、培養3 〜7 日目に筋管細胞へ電気刺激を与えたときの収縮活動を確認し、電気刺激開始時期を検討した。そして、培養5 日目から2 日間電気刺激を与えた後、電気刺激を止めて2 日間培養する電気刺激中断群、4 日間電気刺激を与える電気刺激群、電気刺激を与えない非電気刺激群を作製した。各群の細胞にアクチンとトロポニンTの二重染色を施した後、筋管細胞の横径を測定した。統計には一元配置分散分析を用い、有意差を認めた場合には、多重比較検定に Tukey の方法を用いた。有意水準は5%未満とした。さらに、電気刺激を2 日間与えた後、電気刺激を止めた直後と、止めて1 時間培養した筋管細胞の筋蛋白質サンプルをそれぞれ採取した。その後、電気泳動法及びウエスタン・ブロット法を用いて、LC3-IIの発現量を算出した。LC3-IIは、オートファジー系蛋白質分解機構において、分解される蛋白質を取り囲むオートファゴソームの量と正の相関を持つと言われており、オートファジー系の活性評価に広く用いられているタンパク質である。LC3-IIの発現量はポジティブコントロールを1 とした時の相対値を比較した。統計には対応のあるt検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本実験は「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」および「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」を遵守し、当大学動物実験委員会の承認を得て行った。【結果】電気刺激による収縮活動は、筋管細胞が形成し始める3、4 日目に比べ、筋管細胞が成熟し始める5 日目に多く確認された。5 日目以降は、ほぼ同様の収縮活動がみられた。電気刺激中断群の筋管細胞横径(10.73 ± 0.87 μm: mean±SE)は、電気刺激群の2 日目(14.22 ± 0.97 μm)及び4 日目(16.88 ± 2.40 μm)に比べ有意に小さかった。なお、電気刺激群の2 日目と4 日目及び電気刺激中断群と同時期の非電気刺激群の横径(10.13 ± 0.61 μm)には、有意な差がみられなかった。電気刺激を止めて1 時間培養した細胞のLC3-IIの発現量は、電気刺激を止めた直後の細胞よりも有意に多かった。【考察】培養細胞を用いた筋萎縮モデルは、投薬によるモデルが一般的である。しかし、これは薬物により一部の廃用性筋萎縮関連蛋白質の発現を亢進させるだけであり、廃用性筋萎縮のすべての現象をとらえているとは言い難い。そこで我々は、生体内の筋で廃用性筋萎縮がおこる状態を模擬するために、電気刺激を用いて培養筋管細胞の収縮活動をコントロールしたモデルを作製した。電気刺激による収縮活動がある状態で培養後、電気刺激を止め収縮活動が減少した状態で培養すると、筋管細胞横径が減少することを確認した。つまり、投薬によらない筋萎縮モデルの作製に成功した。また、動物モデルによる廃用性筋萎縮で活性化すると報告されているオートファジー系の蛋白質分解機構が、本モデルで関与しているかどうか調べた。その結果、本モデルにおいても、収縮活動の減少により、この機構が活性化していることを確認できた。今後、本モデルでおこる筋萎縮に、この機構が必須であるかどうかの検証を行い、本モデルが廃用性筋萎縮モデルとなり得るかどうか確認する。【理学療法学研究としての意義】本モデルが廃用性筋萎縮モデルとして確立すれば、廃用性筋萎縮のメカニズムやその回復のメカニズムのさらなる解明に発展する。また、その効果的な抑制方法、回復促進方法、例えば栄養と運動の併用や物理療法などの詳細な検討に萌芽する。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top