理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-08
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一般口述発表
左右運動肢選択時の大脳皮質活動特性
菅原 和広大西 秀明山代 幸哉宮口 翔太小島 翔椿 淳裕桐本 光田巻 弘之村上 博淳亀山 茂樹
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抄録
【はじめに、目的】運動関連領野の一つである運動前野と頭頂連合野は外部刺激を契機とした運動時に活動することが数多く報告され,特に視覚情報を運動に変換する役割を担っているとされている.我々が行った視覚反応課題を用いた実験においても,視覚刺激後の準備期間において運動側と対側頭頂連合野の活動が観察された.ヒトの大脳半球には機能側性があり,脳卒中片麻痺など一側の脳損傷により生じる症状は損傷側によって異なることが多く報告されている.そのため損傷側から生じ得る症状を考慮し,運動療法を行うことは重要であると考えられる.そこで本研究では運動遂行過程におけるヒトの大脳皮質の機能側性を調査する目的で,時間分解能と空間分解能に優れる脳磁界計測装置を利用し,左右運動肢選択を行う視覚誘導性運動課題を用いて実験を行った.【方法】被験者は右利き健常成人男性8 名(25.9 ± 7.4 歳)であった.脳磁界計測にはNeuromag社製306 チャネル全頭型脳磁界計測装置を使用し,左右示指伸展運動時の運動関連脳磁界を計測した.運動課題は予告刺激(S1)と運動開始刺激(S2)を組み合わせた「S1-S2 課題」を用いた.それぞれの刺激は視覚刺激とし,被験者の前方に設置したスクリーンに提示した.S1 刺激において赤丸が提示された時には右示指,緑丸が提示された時には左示指を指示するものとし,その後に提示される光刺激(S2)に反応し,可能な限り速く指示された側の示指を伸展するものとした.示指伸展時の筋活動は表面電極を用い左右示指伸筋から導出した.S1 刺激からS2 刺激までの刺激間隔は500 msとし,予告刺激の刺激間隔は8 秒以上とした.また,刺激提示時間はS1 刺激S2 刺激ともに100msに設定した.運動関連脳磁界の解析はS1 刺激を加算平均のトリガーとし,記録区間はS1 刺激前1000 msからS1 刺激後1500 ms,解析区間はS1刺激提示から関節運動開始までとした.加算回数は45回以上とし,baselineを-1000 msから-800 ms,フィルターを0.2 Hzから60 Hzのバンドパスとした.電流発生源の推定には等価電流双極子(Equivalent Current Dipole; ECD)を用い,運動関連脳磁界においてECDを算出した際の適合性を示すgoodness of fitが80 %以上のものを選択した.また正中神経刺激による体性感覚誘発磁界(SEF)を計測し,その短潜時成分(N20m)で算出されたECDの位置を運動関連脳磁界で得られたECDの基準とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は我々が所属する機関の倫理員会の承認を得ており,被験者には実験内容を十分に説明し,書面により同意を得た.【結果】右示指伸展時において全被験者でS1 刺激後368.1 ± 107.6 ms(mean ± SD) に著明な波形が観察され,そのピークで算出したECDは運動側と対側(左)運動前野に位置した.一方,左示指伸展時には8 名中4 名においてS1 刺激後367.3 ± 63.0 msに著明な波形を認め,そのピークで算出したECDは同側(左)頭頂連合野に位置した.また他の4 名においてはS1 刺激後419.6 ± 63.4 msに著明な波形を認め,そのピークで算出したECDは運動と同側(左)運動前野に位置した.また一次運動野の活動を反映している運動磁界は左右示指伸展時とも,8 名のうち2 名のみに観察された.【考察】視覚刺激を契機とした左右示指を伸展する課題において,左右運動肢に関わらず左頭頂連合野および左運動前野が活動することが明らかになった.大脳皮質には機能的側性があることが報告され,特に左頭頂連合野の損傷は運動の模倣が困難となること(Kimura D. 1993),左運動前野の損傷では動作の選択が困難となることが報告されている(Johansen-Berg et al. 2002).またPETを用いた研究においても,左半球が運動の選択に特化しているということが報告されている(Schluter N D et al. 2001).本研究結果もこれらの先行研究を支持するものであり,左右運動肢を選択する際には視覚情報を運動に変換する役割を担う運動前野,頭頂連合野が左側優位に活動したことが考えられる.運動磁界は一次運動野の活動を反映していると報告されている(Onishi H et al. 2006)が,今回の実験では関節運動が小さかったこと,またS1 刺激をトリガーとしたため運動開始のタイミングが不定となり,運動磁界が不明瞭となったと考えられる.【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺など一側の脳損傷により生じる症状は損傷側により変化する.そのため,半球側性を理解することは障害像の把握や病態の理解,適切な運動療法の選択に重要であると考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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