抄録
【はじめに,目的】デイサービスおよびデイケアを合わせると介護サービス,介護予防サービスともに居宅サービスの中で最も利用が多いサービスである.そして,これらを実施する施設は,実に全国で22,000箇所を超えている.しかしながら,これらのサービスを利用している高齢者の身体機能や生活状況がどのように推移しているかを明らかにした報告は非常に少ない.また,2006年の介護保険法改定により新予防給付が新設され,介護予防を目的としたデイサービスを実施する施設が多く開設されている.そこで,本研究の目的は,介護予防特化型デイサービス利用者の長期間における移動能力や日常生活能力の推移を明らかにするとともに,転倒と転倒恐怖感の影響を検討することである.【方法】2011 年6月現在で東京都内,埼玉県内の2つの介護予防特化型デイサービスセンターへ登録された高齢者のうち本研究に対し同意の得られた124名(男性37名,女性87名,平均年齢79.4歳,49~96歳,標準偏差8.0歳)を対象とした.調査項目は,自覚的健康度,ADL‐20,総合移動能力,屋内および屋外移動能力,外出頻度とし,調査開始から2年間,6か月毎に調査した.そして,経時的推移をFriedman検定を用いて検討した.また,1施設の利用者81名に関しては,転倒経験の有無により二層に層別化した分析も実施した.統計処理は,統計ソフトSPSS17.0Jを用い,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者にはすべて,利用開始時に調査および本人が特定されないようデータ分析を行う旨を口頭と書面を用いて説明し本研究への同意を得た.また,本研究は目白大学倫理審査会より承認を得た上で実施した.【結果】対象のうち,デイサービス利用開始から2年間継続して調査可能であった57名(男性16名、女性41名)を分析対象とした.要介護度は,要支援1が33名,要支援2が24名,平均年齢は78.4歳(49~95歳,標準偏差9.0歳)であった.Friedman検定により有意な経時的変化が認められた項目は,ADL‐20うちの10m室内歩行,入浴,薬の管理,買物,外出ならびに屋外移動自立度の6項目であった.これらのうち,ADL‐20の買物と外出に関しては,利用開始時よりも向上がみられた.その他に関しては,経年とともに徐々に低下が認められた.この有意な経時的変化の認められた6項目に関して,最近1年間の転倒経験の有無により層別化し,検討した.転倒経験群では,ADL-20の入浴で低下を示し,買物に関しては向上していた.一方,転倒経験のない群では,10m室内歩行と屋外移動自立度が低下していたが,買物,外出は向上していた.上記以外の項目には,両群ともに有意な変化は認められなかった.【考察】本研究では,2年間のコホート調査を実施し,検討した.本研究の対象は,介護認定が要支援1および2のみを対象とする介護予防に特化したデイサービス施設の利用者である.今回,基本的日常生活動作および手段的日常生活動作25項目の2年間の推移を検討した.このうち,低下がみられたものは4項目で,2項目に関しては向上していた.施設の目的は,運動機能や日常生活動作能力を維持し,要介護状態になることを防ぐことであり,その意味から考えると,本研究の結果は,施設の目的を概ね達成していると考えられる.その中で,低下が認められた項目は,調査項目の中でもやはり難易度が高いものが多かった.また,転倒経験で層別化した検討では,外出に関して,転倒経験群が低下していたのに対し,転倒経験のない群では,逆に向上していたことが特徴的であった.これは,運動機能以外にも,転倒経験が心理的に外出に対して負の影響を与えたものと推察された.フォローアップ期間として2年間では十分とは考えられず,今後も,さらに経過を追跡調査していく予定である.【理学療法学研究としての意義】本研究により,介護予防特化型デイサービス利用者の2年間の移動能力や日常生活能力の推移および転倒経験が与える影響が明らかになった.この結果を踏まえ,転倒経験の有無を考慮し,低下しやすい日常生活機能を中心としたアプローチの必要性が考えられた.