抄録
【はじめに、目的】 非接触での前十字靭帯(以下ACL)損傷は、ジャンプからの着地や急激な減速、方向転換などで受傷し、女性に多いと言われている。ACL損傷の危険因子として、内的因子、外的因子に分類されており、BackettらはACL損傷群と非ACL損傷群のNaviculare drop test(以下NDT)の値を比較したところ、ACL損傷群が有意に高値であることを報告している。NDTとは座位での床から舟状骨結節の高さと立位でのその高さの変化量をみるテストである。一方、ACL損傷の受傷機転としては、ジャンプからの着地が最も多く、着地動作の解析を行った研究が多く報告されている。しかし、実際のスポーツ場面では着地動作は方向転換などと組み合わさって起こることが多い。小山らは複合動作における着地を予測の有無の観点から、着地後の方向転換を行う動作において、その方向が予測されていない場合に着地時のknee-in動作が誘発されることを示唆している。しかし、非予測的条件での膝関節外反角度とNDTの関連性について研究されている報告はない。そこで本研究では両脚着地後の非予測的に方向転換動作を行う場合の着地時膝関節外反角度とNDTとの関係性を確認することである。【方法】 対象は下肢に整形外科的既往がない健常女性14名(平均年齢25.0±2.4歳、平均身長158.6±4.2cm、平均体重55.3±7.5kg)とした。1)NDTの計測は座位にて足部を床の上におき、舟状骨結節をペンでマークし、カードを準備した。カードを内側の後足部に床から垂直にあて、そして舟状骨結節レベルでカードにマークした。被験者に立つように命じ、足関節のポジションを変えず左右均等に荷重をかけ、再度カードにマークし、その変化値を計測値とした。NDTの値から高値群(6.6±1mm)と低値群(3.6±1mm)の2群に分類した。2)膝関節外反角の計測課題は、30cmの台上から両脚着地した後、非利き脚方向にサイドステップを行った。サイドステップ動作におけるステップ方向は着地地点から斜め30°前方にひいた線上と規定し、「ステップは着地後出来るだけ早く、遠くに出すように」と指示した。課題遂行時は上肢を腹部の前で組むよう指示し、測定条件は、着地時にサイドステップ動作を指示(非予測条件)した。非予測条件はサイドステップ動作に加え、着地のみを行う動作と着地後非利き脚でクロスステップする動作の計3種類の動作を無作為に行うようにし、動作は着地時にLEDランプを点灯させることにより指示し、サイドステップを3試行ずつ計測した。なお、計測前に3回練習を行った。動作画像の記録には、4m離れた正面に設置した1台のデジタルビデオカメラを用い撮影した。下肢アライメントの評価のために、上前腸骨棘および、膝蓋骨中心、内外果中央の皮膚上にマーカーを貼付し、着地後最も上体が沈み込んだ瞬間の静止画像を取り込み、それぞれの画像において画像解析ソフト(IMAGE J)を用いて膝関節外反角を計測した。膝関節外反角は、上前腸骨棘と膝蓋骨中心を結ぶ線と内外果中央と膝蓋骨中心を結ぶ線のなす角度を180度から引いた角度とし、3回施行の平均値を計測値とした。統計処理はStatce12を用いて行い、有意水準は5%未満とした。NDTの高値群、低値群の膝関節外反角度について独立2群のT検定を用いて比較・検討を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は医療法人社団高木病院倫理審査委員会の承認を得た。また対象者には本研究の趣旨を説明し、書面にて同意を得た。【結果】 非予測的条件におけるステップ動作時の利き脚の膝関節外反角度は、NDT低値群は19.3±5.4でNDT高値群は10.9±6.9mmとなり、有意差を認めた(P=0.02)。【考察】 NDT低値群の方が、NDT高値群と比べ、非予測的条件における着地動作の膝関節外反角度は大きくなる結果となり、先行研究を支持する結果となった。金子らは片脚着地の条件でNDTと膝関節外反角度が負の相関があることを示唆しており、低値群で膝関節外反角が大きくなった原因として、荷重位での足部回内の減少は脛骨を外旋方向に導くとされ、この脛骨外旋は膝関節屈曲とともに内旋・内転へ誘導した結果と考察している。本研究結果から、スポーツ競技中に近い非予測的条件下においても、NTD低値群と膝関節外反角増大の関係性を認め、ACL損傷のリスクファクターの1つとなりえる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 本研究で、スポーツ動作などの非予測的条件において、NDT低値の対象者の方が膝関節の外反角度が大きくなり、NDT高値な対象者と比較してACL損傷の内的危険因子が高いことが示唆された。これは、ACL損傷の発生機序を解明する一助となると考えられる。